その昔、我が家では、エイプリルフールに並々ならぬ力を入れていた。
毎年毎年、親は子どもに嘘をつきまくっていたし、
私たちも、全力で嘘をついていた。
それは、私が大人になってからも続いていたし、
私はいつまで経っても親の嘘に騙され続けていた。
>だまされるんかい
***
実家には犬がいた。犬を飼っていた。
ゴールデンレトリバーの「まるきち」。
>もちろん私命名
あまりにも人懐っこいので、番犬としてはちっとも役に立たない犬だった。
ただ、ゴールデンだったので、体は大きかった。
***
ある年の4月1日。
父親は私に言った。
「まるきちが穴を掘り進めていたのだけど、
ついにブラジルまで到達した。」
いやいやいやいや!!!!!!
いくらなんでも!!
いくらなんでもそれは無理があるって!!!!
何でも信じる私でも騙されなかった。
しかし、これで終わりではなかった。
この後に母が言ったのだ。
「まるきちが穴を掘って、ブラジルまで行ったというのはエイプリルフールの嘘なんだけど、
まるきちが庭に大きな穴を掘っていたというのは本当で、
庭の柿の木が倒れたのよ。」
すぐ信じた。
犬が穴を掘ってブラジルに行ったという嘘を見抜いたことにより、
私は、すっかりとガードが甘くなってしまっていた。
***
今考えるとあり得ない。
なぜなら、庭にあった柿の木、というのは、とんでもなく大きな柿の木だったからだ。
何十年かけて育ったのかわからないほど、大きな木だった。
そんなものを、一介の犬が穴を掘ったくらいで倒せるわけがない。
ちょっと考えればすぐに分かる。
でも、信じてしまったのだ。
さらに悪いことに、親も親で、なんと、ネタバラシを忘れていた。
騙されたまま数か月が経過した。
数か月後に実家に帰ったとき、ないと思っていたはずの大きな柿の木が生えていたので、
お化け柿の木が現れたと思い、私は大変怖い思いをした。
***
と、話はここで終わらない。この話には後日談がある。
この柿の木、それからしばらくして、本当になくなったのだ。
柿の木が姿を消した経緯はこうだ。
庭に生えていた木のうち、1本が病気になった。
そこで、親は、その木の伐採を業者に頼んだ。
病気になった木の伐採を頼まれた業者、
なんと、間違えて健康な大きな柿の木を切り倒してしまったのだ。
そんなことあるかね!!
そんな大掛かりな間違え方、あるかね!!!!
話を聞いた時は、大笑いしたし、こんな大胆な間違いするなんて、と元気が出たものだった。
そして、両親に対しては、あの時、私に柿の木が倒れたっていう嘘をついたから、
それが現実になったんだね〜と笑いながら言った。
ちなみに、とんでもなく大胆なミスをした業者は、
大きな大きな柿の木を間違えて切ったお詫びとして、
代わりの木を庭に植えてくれたらしい。
この責任の取り方についても面白すぎる。
***
念のため、この日記を書く前に、母親に確認した。
細っっっ!!!!
めちゃくちゃ細っっっ!!!!
こんな面白業者とは、ぜひ今後もお付き合いしてもらいたいものだ。