とにかく起案に追われている。びっくりするくらい終わってない。
その日は、外部に出る予定がなかったので、
職場の人みんなが見える自分の予定に、
「自分めっちゃ起案してますので!他の予定いれられないです!」を意味する日本語、
「きあんのひ」と入力した。
>頭悪いな
そして、外部の話し声を遮断するために、
YouTubeで「雨の音」を探し、これをAirPodsで聴きながら黙々と起案した。
***
「雨の音」とは、
こういうのである。
雨の音を聴くと、脳波がばちばちになって集中できる、というわけではなくて、
周囲の話し声とかそういうのを聴こえなくするために聴いていた。
***
雨のざーざーする音の中、時々雷が鳴り響く。
逆にやかましい気もするなぁと思いながら、夜まで無事集中できた。
***
夜になり、夕方帰宅したはずの職場の美少女Fさんが、再度職場に戻ってきてくれた。
Fさんは、私のお手伝いにきてくれたのだ。
私がFさんに依頼していた内容は、
「私の島に、アリーナを作って欲しい」だった。
先日書いた、
私の島に「ライトアップたぬき」を作って欲しい、という依頼は、無事終わっていた。
今、私の島には、たくさんのたぬきが積み上がって輝いている。
私は、Fさんの職人技に感動し、調子に乗った。
次なるFさんへの頼み事は、
「三段のスタジオ席に人形を並べて、中心のアリーナをぐるっと人形が囲んで観てる、というものを作って欲しい」
という無茶苦茶なものだった。
>完全に調子に乗ってる
Fさんは、表情を変えることなく、
「とりあえずやってみます」とだけ言い、仕事が終わったあと、また職場に来てくれた。
***
私とFさんは、一緒に給湯室に行った。
私は、脳を使わなくてもできる作業みたいな仕事をして、
Fさんは、脳を使いまくって、私の島に大規模な工作物をつくりあげていた。
Fさんの集中力はものすごいものだった。
時々何か言いだす私のことをうまくあしらいながら、
黙々と集中して、Switchの画面から目を離すことがない。
私は、雨の音で外部の音を遮断しなければ集中できないのに、
Fさん・・・いな・・・職人って・・・ものすごいなぁ・・
と感動しながら、1時間半が経過した。
***
結論から言うと、この日職人Fさんは、満足いく作品ができなかったようで、アリーナ作りは中止になった。
私から見ると、本当にすごい作品なのに、Fさんは納得いかなかったようだ。
職人ってやっぱりすごいなぁぁ
と思いながら給湯室でFさんと別れ、私は執務室に戻ることにした。
執務室に近づいたところ、ただならぬ様子を感じとり、耳を疑った。
執務室から、爆音で雨の音が鳴り響いているのだ。
え!????
焦って自分の机まで走り、机上に置かれた私のiPhoneを手にとり、
私のiPhoneから流れていた爆音の「雨の音(時々雷)」を停止した。
AirPodsの接続が外れ、本当になぜかわからないが、
私が給湯室に行っている間の1時間半、
執務室中に、爆音の雨の音(時々雷)が鳴り響いていたのである。
もちろん、誰もいないのであれば問題ない。
しかし、私の席のすぐ近くで、職場の方がzoom会議をしていたのだ。
やってしまった・・・。
雨の音(時々雷)が鳴り響く環境で行われる会議・・・。
まじで申し訳ない・・・
と思ったものの、会議中に声をかけるわけにもいかないし、私は、そのまま帰宅した。
***
翌日、
「昨日は本当にすみませんでした。
雨の音(時々かみなり)は、私のiPhoneから鳴っていたのです。会議中なのに。。」
と、うるさくしてしまってたことを謝罪したら、
「え!???なんか音鳴ってたんですか!??全然気づかなかったですよ!」
と言われた。
衝撃。
あれだけ大きな音で雨の音と雷の音が鳴り響いていたのに、
その人の耳には、全く聞こえておらず、会議に集中し切っていたのだ。
こ・・・これって・・・
雨の音のおかげで集中力が上がりすぎてたってことだよね・・?
>違います
私は今後も集中したいときは雨の音を聴くようにしよう、と改めて思った。