「この子こう見えて、●●」
●●に入るのは、見た目に反すること、と決まっている。
つい先日、母が私のことを第三者に伝える際、こう言った。
「この子こう見えて、動物好きなのよ」
母には、私がどう見えているのだろうか。
***
幼い頃から動物が大好きで、たくさんの動物を飼ってきた。
ここで重要なのは、ペットショップで「飼いたい」と言っては行けない。
反対されるからだ。
先に動物を手に入れてしまえばいい。手に入れてしまった後、「飼いたい」と言うのだ。
この手を使って、私はたくさんの動物を飼ってきた。
近所で子うさぎやハムスターがたくさん生まれたと聞いた時、
学校で子うさぎがたくさん生まれたと聞いた時、
もらってしまって、持ち帰れば
親も「仕方ないなぁ」と、こうなるのだ。
もちろん、きちんとお世話はしたし、どの動物もたいそう可愛がった。
***
しかし、どうしても飼うことができなかったケースがある。
それが、家の近くにいた、野良の黒ねこだ。
その当時、6歳だった私は、
かなりの時間をかけて黒ねこに近寄り、触ることに成功し、抱っこすることに成功し・・・
少しずつ黒ねことの距離を縮めていった。
***
ある日曜日、ついに、
その日に「黒ねこを飼う」と頼み込むことに決めた。
しかし、その日の黒ねこは、
いつもと違う様子の私に、何か気づいたのだろう。
そろそろと近づき、そっと抱っこした瞬間、
私の首を思いっきり引っ掻いたのだ。
「まずい」と思った。
首からは、血が出ている。
黒ねこを抱っこした状態の私は、焦った。
>ねこは離さない
「血を見られたら反対される」
幼いながらに動物を飼うことを提案する際、血はNGと理解していた。
そこで、なんとか傷口を見られないようにして、頼み込むことにした。
***
しかし、幼い私が思いついた方法は、
片手で黒ねこを抱えて、
片手で首をおさえて血が見えないようにする、
という、あまりにも浅はかなものだった。
***
少しくらいは反対されると思ったが、全く違った。
黒ねこを飼う話にもならなかった。
親は、勢いよくあらわれた娘が、
片手で黒ねこを抱え、
片手で首をおさえ、
おさえたところの指の隙間から、
血が流れている、
という、事件でしかない状態に、ねこを置いて傷口の手当てをするよう言った。
「なるほど、それもそうか」
と、さすがの私も納得し、黒ねこを置いた
・・・それが私が黒ねこを触った最後の瞬間だった。
そこから、黒ねこは、私を見ると、すぐに逃げ去り、一切触らせてくれなくなった。
怖い思いをさせてしまったことを反省し、その後、ねこを飼うことは諦めた。
傷口はすぐにふさがった。
その後に飼ったのは、ザリガニだった。