§1.6 ガロア対応
ガロア拡大体Lの体の構造と、そのガロア群Gの群の構造には密接なつながりがある。(※27)ではガロア群が3次対称群の場合について、最小分解体とガロア群の構造を例示している。
体と群のつながりについて記述するため、中間体、群の作用、固定群、固定体という用語を導入する。
まず、Q⊂M⊂LをみたすMをLの中間体という。
またガロア拡大体Lの原始元をθとするとき、Lの元はθ形式によって表記される。各元のθ形式中のθに、ガロア群Gの置換をほどこしていくことを「Gを作用する」と表現することにする。また、このGのある元の作用によってθ形式の値が変化しない場合を「不変に作用する」と表現することにする。
ガロア群Gの元のうち、中間体Mの任意の元に不変に作用する置換の集合をMの固定群という。またガロア群Gの部分群Hの全置換によって不変である数の集合をHの固定体という。
(※28)では、これらの用語とアーベルの既約定理(定理1)の関係について述べている。また、固定群が群の公理をみたしていることと、固定体が四則演算で閉じていることについては(※29)で確認している。
固定体と固定群については以下の定理が成り立つ。
(定理19 ガロア対応)
ガロア拡大体Lのガロア群をGとする。Lの中間体をM、Gの部分群をHとする。
このとき①「Mの固定群がHであること」と②「Hの固定体がMであること」は同値である。
この定理19はLの中間体とGの部分群に1対1の対応がつくことを保証している。
定理19は必ずしも自明な定理ではない(※30)。証明には以下の定理20、21の証明が必要になる。
(定理20)
ガロア拡大体Lとその中間体Mの拡大次数をそれぞれl、mとする。このとき、Mの固
定群の位数はl÷mになる。
(定理21)
ガロア拡大体Lの拡大次数をlとし、そのガロア群をGとする。Gの部分群Hの位数をhとするとき、Hの固定体となる中間体Mの拡大次数はl÷hである。
定理20と定理21を前提とすると、定理19の証明は以下のようになる。
まず①から②を導く。
Mの固定群Hの固定体をM’としてM=M’を示そう。
まず、定理20よりHの位数はl÷mである。次に定理21より、M’の拡大次数はl÷(l÷m)=mである。したがってMとM’の拡大次数は等しい。
またMの元はHの作用で不変であるのに対し、M’にはHの作用で不変なすべての元が含まれている。したがってM⊆M’。
あわせてM=M’が得られた。
次に②から①を導く。
Hの固定体Mの固定群をH’としてH=H’を示そう。
Mの拡大次数は定理21よりl÷hである。定理20よりH’の位数はl÷(l÷h)=hである。したがってHとH’は位数が等しい。
またHはMのすべての元に不変に作用するのに対し、H’にはMのすべての元に不変に作用する全置換が含まれている。したがってH⊆H’。
あわせてH=H’が得られた。 ■
(※31)では定理19の証明について、ガロア群が3次対称群の場合を実例とした解説をしている。
また定理20と定理21の証明では、任意の中間体Mについて原始元が存在することを前提としている。この点については(※32)で示した。