蕎麦打ちの話を書いていて思い出したことがあります。
以前、私のセミナーを受講していた方が、コース中に、皆にケーキを焼いて来てくれたことがあります。
ヘルシーなおからでできたケーキを2つ持って来てくださったので、早速皆で切り分けて頂くことになりました。
2つのケーキは共におからのケーキで、同じ材料で焼いたものでしたが、食べた人達の間から、妙な感想が漏れ始めました。
「こっちのケーキとあっちのケーキじゃ、なんか味が違う!」
もちろん、ひとつずつ別々にオーブンで焼いていますから、焼き加減などが若干違うというのは当然あることなのですが、どうもそういう違いではない。味の奥行きが、深みが、まったく違うのです。
そのうちに、ある事に気が付きました。
片方のケーキは、妙なのですが、ケーキの上に手をかざすと、ケーキから出る気(?)というか、エネルギーが手の平に対して反発する感じになるのです。丁度磁石の反発のような感触です。
もう片方のケーキは、手をかざしても何の感じもない。
なぜふたつのケーキにこんな違いが出るのだろう。と皆で話していたところ、制作者の方が、「あ、思い出したわ」と言い始めました。
「一つ目のケーキは、材料を混ぜ合わせるときにセミナーのメンバー一人一人の顔と名前を思い出して、幸せになりますようにと祈りながら混ぜたの。そして二つ目を焼いた時に、時間がもうあまりない事に気づいたので、あわてて手順通り混ぜ合わせただけで焼いたの」
つまり、二つのケーキの違いは、込められた思いということだったのですね。
以前、帝国ホテルの総料理長でいらした村上信夫さんが、TVで、
「世界で一番おいしいのは、お母さんの料理です。それは、食べる人への思いが込められているから。我々はそのような思いを込めて料理を作るべきなのです。」とおっしゃっていましたが、まさにそれを体感させて頂いた瞬間でした。
これは、料理だけでなく、あらゆることに通じる事だと思いますが、実際にハッキリ体感する機会を得られたことは、珍しいことでもあり、幸運なことでもあったと思います。