【概略】

以前の記事トランペットで「バテ」て音が出なくなる、物理的な仕組みでは、「歯と歯の隙間からの息漏れ」の事例を紹介した。

この「歯と歯の隙間からの息漏れ」以外の場所で生じる、「バテた時の息漏れ事例」を紹介する。

 

 

【結論】

過度なプレスにより、「上唇が下唇から離陸」することで、音が出なくなる。

 

息は「意図した一箇所」から出ているのだが、「意図した一箇所」からの息が当たる部分の「上下の唇」が離れることにより、音が出なくなる。

 

解決するには、「上下の唇」が離れないようにするしかない。

 

【詳細説明】

楽に音を出すには、「意図した一箇所」からだけ息が出る必要がある。

 

以前の記事トランペットで「バテ」て音が出なくなる、物理的な仕組みの息漏れ問題を解消し、

別記事エアビームを作り出す、上前歯の具体的な形状の事例 大音量のハイトーンを手に入れる物理的な方法等の音の高さをコントロールする仕組みができれば、「意図した一箇所」からのみ、「必要に応じた形状の息」が出せるようになる。

 

これらの「音が出る条件」が揃っても、長時間の演奏などでプレスが増えていくと、いわゆる「バテ」て音が出なくなることがある。

この「音が出なくなる物理的な仕組み」を、「その2」として紹介する。

 

ーーー

ここまでの主な記事では、2次元での形状を整える方法について説明をしてきた。

この世は3次元であり、現実的には3次元での形状を整える必要がある。

 

最終的には、時間軸を入れた4次元で考える必要がある。

ーーー

 

「マウスピース」と「歯並び」の関係を観察すると、道が拓けてくる。

 

・マウスピースを唇に当てた時、唇はどのような形状になるのか?

・高い音、低い音、小さい音、大きな音で、唇の形状はどのように変化するのか?

・プレスが増えると、唇はどの様に形状が変化するのか?

 

これを、観察して、観察して、観察して、一体何が起きているのかを見極めていく。

 

トランペットの音が出るのは、ただの物理現象である。

目的の振動数で唇を振動させることが出来れば、目的の高さの音が出る。

それ以上でも、それ以下でもない。

 

健常者であれば、リコーダーの音が出せない人は居ない。リコーダーには音が出る仕組みが組み込まれているから、息を入れれば何らかの音が出る。

口笛を吹けない人々は、外からは見えない口の中で、音の出る条件が揃っていない。

上級者と言われる人々は、外からは見えない口の中に、音の出る仕組を持っている。外からは見えないので、本人にもどんなものなのかは全く分からないだろう。

 

ーーー

マウスピースの役割は多岐にわたるが、役割の一つに「唇の形状を保つ」目的がある。

「唇の形状を保ちたい」のだが、その押さえは近すぎず遠すぎずの関係が必要。

近すぎれば振動が止まるし、遠すぎれば押さえが効かない。

 

トランペットのマウスピースの内径は、15mmから17mm程度が一般的。

息の出る「意図した一箇所」は唇のどの部分かと言うと、多くは「マウスピースの中央付近」であろう。

つまり、息が出る「マウスピースの中央付近の唇」は、マウスピースのリムに接する唇の中で、一番遠い場所となる。

唇の中央部分は、マウスピースのリムからは7mmから8mm離れている。

 

 

イメージ図

 

マウスピースのリムを唇に押し当てた図。

 

上唇のみを表記すると、こんな感じ。

 

ーーーー

マウスピースと歯に挟まれた「唇の形状」は、「プレス」の大きさによって大きく変化する。

「プレス」が「必要な唇の形状」にプラスになるなら、良い結果が出る。

しかし長時間のプレスで音が出なくなるケースでは、プレスが「必要な唇の形状」にマイナスに作用した時である。

 

具体的には、プレスを増やしていくと

1.唇中央が引っ込んでいく

2.唇中央が出っ張っていく

つまり「引っ込むのか、出っ張るのか」の「2種類の動き」に分類できる。

 

さらに細かく分類すると、次の4種類に分類できる。

ア.上唇が引っ込んでいく

イ.上唇が出っ張っていく

ウ.下唇が引っ込んでいく。

エ.下唇が出っ張っていく。

 

 

 

ア.上唇が引っ込んでいく

 

イ.上唇が出っ張っていく

 

ウ.下唇が引っ込んでいく。

 

エ.下唇が出っ張っていく。

 

ーーーー

では、どの組合せが良いのだろうか?

 

前提

大音量のハイトーンを手に入れる物理的な方法で説明したように、上前歯がこの形状になっていることが前提。

 

ーーー

経験的には、良好な結果が得られたのは、BとCの組合せだった。

最悪なのは、アとエの組合せだった。エのように下唇が出っ張っていくことで、作り込んだ前歯の「山型形状」を塞いでしまう。

アとウの組合せは、口を閉じていけば何とかなる方向ので、まだマシ。ただし、上唇が離陸しやすいことに変わりはない。

 

この「マウスピースの中央付近の唇」の、上下の唇が離れてしまう、つまり「上唇が下唇から離陸」すると唇が閉じた状態にならなくなるため、唇は振動を継続できなくなり、音が出なくなる。

 

ーーー

 

イ+ウ 最良の組合せ

 

ア+エ 最悪の組合せ

 

ア+ウ イマイチ。アは悪い傾向だが、ウは良い傾向。

 

イ+エ イマイチ。イは良い傾向だが、エは悪い傾向。

 

 

 

 

 

 

ーーー

では、マウスピースを唇に押し付けると、唇はどの様に変形するのか?

これは、マウスピースと歯並びの関係で、変形する形状が様々異なる。

歯並びによっては、唇の中央付近が出っ張ったり引っ込んだりする。

 

 

 

 

この図は、「マウスピースのリム」を「唇」に当てた時の絵である。

「上唇のみ」が書かれている。

 

A マウスピースのカップの上方

B,C マウスピースのカップの横方向

 

「マウスピースのリム」と「歯」に挟まれた「唇」の形状がどの様に変化するのか?

 

唇の厚みは、A,B,Cが同一と仮定。

柔らかいものを押し潰すと、伸びて広がる。

 

例えば次の図のように、A,B,Cが同じ厚みになるように均等に押し潰すとどうなるか?

 

 

A,B,Cが均等に押された唇は、次の図のように、中央が出っ張る形になる。

 

では、日本人的な出っ歯で、楽器がやや下向きになるようにセッティングすると、どうなるか?

Aを押し潰す力は、B,Cよりもずっと小さくなる。

結果、次の図のように中央が引っ込んだ形になる。

 

上唇の中央が引っ込む形になると、下唇から上唇が離陸することになり、唇の振動が止まる。

つまり、音が出なくなる。

 

音が出るようにするために、多くが粘膜奏法を取り入れる。

唇が所定の位置に来るように、マウスピースのリムで音の出る位置に持ってこようとする。

 

もしくはドライ奏法にして、唇を引っ張ってくる必要がある。

 

ーーーーー

ここでは、「日本人的出っ歯」の事例で「この現象」つまり「唇の出し入れ」がコントロール可能であることを説明した。

この原理を応用した事例を紹介する。

 

A,B,C部分の唇をどんなバランスで押し潰すかで、唇の出っ張り具合、引っ混み具合をコントロールできるということだ。

 

演奏する音の高さに合わせて、楽器の角度を上下に調整しているプレイヤーを数多く見かける。

具体的には、ジャズ系のハイトーンプレイヤーの多くは、低い音では楽器が上を向き、高い音では比較的下を向く。

これは何をしているのか?

 

・低い音域は周波数が低いので、上唇を上前歯より多く出すことで柔らかくして、低い音が出やすいようにしている。

・高い音域は周波数が高いので、上唇を上前歯からより引っ込めることで固くして、高い音が出やすいようにしている。

 

特にドライ奏法を採用しているプレイヤー、つまりマウスピースを唇に固定しているプレイヤーには、必須のアクションであろう。

もちろんウエット奏法でも、原理的に効果は大きいだろう。

 

ーーー

大音量のハイトーンを手に入れる物理的な方法とも、完全に整合性が取れる。

・低い音ほど上唇は前歯から出っ張ってほしいし、

・高い音ほど上唇は前歯から引っ込んで欲しい。

 

 

ーーー

トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析の物理式とも、完全に整合性が取れる。

 

ーーーーー

【解決策】

当たり前の答だが、「A,B,C部分に掛かる力を調整」する。

 

まずは、現状把握が必要。

・上唇はアなのか、イなのか?

・下唇はウなのか、エなのか?

 

私の場合は、イ+ウの組合せで良好な結果が得られている。

ちなみに私は、元々はア+エの最悪の組合せであった。

 

歯並びや唇の形状によって、ア、イ、ウ、エの形状は様々。

イメージ図のように、キレイな円弧を描いていないのが普通だろう。

実際にはA,B,Cの3箇所だけではなく、リムのAとBの間、BとCの間で、唇の潰され方はアナログ的に変化する。

 

トランペットで「バテ」て音が出なくなる、物理的な仕組みで、レジンを紹介した。

このレジンを使用して、上前歯の厚みを増やす実験が可能。

接着剤を使わなければ、硬化したレジンは結構簡単に「パキン」と剥がれ落ちる。

 

日本人的出っ歯を、歯の前面にレジンを盛ることによって西洋人のように立った歯を試すことが可能。

なるべく平らに盛らないと、マウスピースを当てた時に当たって痛い。


私の実験では、バテてきても「粘膜奏法」や「ドライ奏法で上唇を引っ張ってくる」ような事をしなくても、音が出続けるようになり、効果は確認できた。

 

ーーーー

考察1

日本人的出っ歯は、物理的にトランペットに不向きであることが分かった。

 

では、西洋人的に歯が立っていたらどんな事が起こるか?

A,B,Cの中のどこが、より押しつぶされるだろうか?

唇は出っ張るだろうか、引っ込むだろうか?

 

マウスピースを真っ直ぐに唇に当てれば、AがB,Cよりもより押しつぶされ、唇は出っ張る方向であろう。

 

ーーーー

考察2

歯並びが悪いと、音は出ないのか?

答は、条件が揃えば、唇は出っ張ってくれて、音は出る。

 

「一本出っ歯」は、条件が揃えば、音が出やすい可能性がある。

出っ歯部分は確実にA部分を押し潰すので、唇が出っ張るから。

ただし条件があり、出っ張った唇部分に息を当てることが出来れば、だ。

さらに、すぐ隣に唇が引っ込んでいる部分が確実に存在し、そこから息が漏れてしまったらやはり音は出ない。

 

つまり、歯並びはある程度きれいな方が、金管楽器には有利であろう。

 

ーーーー

考察3

同じような日本人的出っ歯でも、上前歯の2本のネジレ方向の違いで、結果が変わる。

 

マウスピースを上前歯の2本で支えるように、唇に当てた場合。

A,B,C部分がどの様に押しつぶされることになるか?

 

・上前歯2本が外側を向いている場合

AよりもB,C部分の方が、唇を押し潰す力は弱くなる方向。

結果、上唇が出っ張るので、音は出しやすいだろう。

 

・上前歯2本が内側を向いている場合

AよりもB,C部分の方が、唇を押し潰す力が強くなる方向。

結果、上唇は引っ込んでしまうので、音は出しにくいだろう。

 

つまり、かなりの出っ歯でも、この条件が満たせれば、音は出るだろう。

大音量のハイトーンを手に入れる物理的な方法

 

【概略】

前回記事のエアビームを作り出す、上前歯の具体的な形状の事例 で、具体的な歯の形状の事例を説明。

物理的に音の高さを変える仕組みを口の中に作り込んだ。

 

問題点

高い音を出すために唇の長さL を短くすると、息の通る三角形の面積は小さくなる。

口腔内の圧力が一定だとすると単位時間当たりの通過できる息の量が減るので、結果的に音量が小さくなってしまう。

つまり、高い音になるにつれ音量が小さくなってしまう。

この問題を解決する事例を説明する。

 

【結論】

三角形の底辺の長さLが減った分を、三角形の高さを増やして息の通るスペースを確保する。

 

ーーーーー

【詳細説明】

前回記事のエアビームを作り出す、上前歯の具体的な形状の事例のよう設計すると、わずかな顎の動きで振動する唇の長さLをコントロール可能になり、音の高さのコントロールが容易になる。

しかし、実際にやってみるとかなり窮屈な感じとなり、音量が出せない。

いくら踏ん張っても息が入らないので、音量が稼げない。

 

音量を上げるには息の量を増やす必要がある。

三角形を通る息の量を増やす方法は、次の2種類。

・口腔内の圧力を上げる。

・三角形の大きさを大きくする。

 

口腔内の圧力を上げるにも限界があるし、プレスが増えるなど副作用が大きい。

長さLを変えずに三角形の面積を増やすには、高さを大きくすれば良い。

 

●試算

前回設計した三角形のエアビームエアビームを作り出す、上前歯の具体的な形状の事例の、面積を計算してみる。

 

高さは0.5mmのとき、面積はそれぞれ

・低音域 底辺16mm:4mm2

・中音域 底辺8mm:2mm2

・高音域 底辺4mm:1mm2

息が通る面積は、高い音になるほど指数関数的に減っていく。

 

ーーー

●対策

・第1案

 底辺1mm、高さ1mmの三角形を追加

 => 底辺1mm、高さ1mm:0.5mm2

 

・第2案

 底辺2mm、高さ1mmの三角形を追加してみる。

 => 底辺2mm、高さ1mm:1mm2

 

自分の条件に合わせて、必要なだけ面積を追加する。

 

ーーー

前回記事の設計値に、第2案を採用した時の値を試算。

息の量は次のように増加する。

・低音域 底辺16mm:4mm2+1mm2 = 5 mm² 25%アップ 1.25倍

・中音域 底辺8mm:2mm2+1mm2 = 3 mm² 50%アップ 1.5倍

・高音域 底辺4mm:1mm2+1mm2 = 2 mm² 100%アップ 2倍

 

 

第2案は、超高音域用としても使用可能な、底辺2mm、高さ1mmの4つ目の三角形を乗せる形になる。

 

イメージ図

第1案の、4つめの三角形を乗せてみた。

 

 

この稼いだスペースにより、口腔内の圧力を上げること無く息の量を増やすことが出来るので、比較的楽に音量を上げることが出来た。

【概略】

エアビームを作り出す、上前歯の具体的な形状の事例を紹介する。

 

振動する唇の長さLは、1オクターブ上がると、半分の長さになる。

 

事例の前提条件

・マウスピースのカップの内径が16mmの物を使用。

・ここでは、最低音が下加線2本のソと「仮定」する。

 

この時の唇の長さLを計算してみる。

・16mm : 下加線2本のソ 最低音

・8mm : 第2線のソ 8mm短くなる。1オクターブでの変化量は8mm。

・4mm : 五線の上のソ 4mm短くなる。1オクターブでの変化量は4mm。

・2mm : 上加線4本のソ 2mm短くなる。1オクターブでの変化量は2mm。

・1mm : 上加線本のソ 1mm短くなる。1オクターブでの変化量は1mm。

 

このように、音が高くなるにつれて、唇の長さLの変化量は小さくなる。

 

ーー

唇の長さLを変えることによって音の高さをコントロールする仕組みは、以下で説明しているので参照されたし。

トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。

トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方

ハイトーンを出すためのエアビーム作成事例

トランペットで音が出なくなる仕組み

トランペットで「バテ」て音が出なくなる、物理的な仕組み

 

ーーー

【具体的な形状例】

ここでは簡略化のため、音域を3オクターブとして説明する。

 

三角形の形状。音域が3オクターブだとする。

・低音域:底辺に対して高さが低い、潰れた三角形。顎の動きに対する変化が大きい。

・中音域:底辺が半分になる。中くらいの三角形

・高音域:底辺が、更に半分になる。尖った三角形。顎の動きに対する変化が小さい。

 

上前歯の形状は、上記のように変化している必要がある。

 

顎の僅かな動きで、唇の長さLをコントロールする。

顎の動き = 三角形の高さ

 

全てを足した三角形の高さを、1.0mmと仮定する。根拠はない。1mmでは少ないように思えるだけ。

 

3オクターブで1.0mmをシェアするとすると、1オクターブ当たり0.5mm使える。

・低音域:底辺16mm、高さ0.5mmの三角形

・中音域:底辺8mm、高さ0.5mmの三角形(底辺16mmの三角形の、高さ0.25mmの部分に乗せる)

・高音域:底辺4mm、高さ0.5mmの三角形(底辺8mmの三角形の、高さ0.25mmの部分に乗せる)

この3つの三角形が積み重なっている形状となる。

トータルすると、高さは1.0mmとなる。(0.25mm+0.25mm+0.5mm)

 

形状を三角関数を使って計算するには直角三角形にする必要があり、底辺は半分になるので、

・低音域:底辺8mm、高さ0.5mmの三角形 arctan(0.5/8)*180/pi = 3.576 度

・中音域:底辺4mm、高さ0.5mmの三角形 arctan(0.5/4)*180/pi = 7.125 度

・高音域:底辺2mm、高さ0.5mmの三角形 arctan(0.5/2)*180/pi = 14.0362 度

この3つの三角形が積み重なっている形状となる。

(三角関数を使わずに、底辺と高さで設計しても、結果は同じ。)

 

 

イメージ図

 

【イメージ図の説明】

・イメージ図のように、二本の上前歯の形状は、指数曲線となる。この事例では、三角形の斜辺で単純化しているが、実際には直線ではなく、ギターのフレット間隔の変化具合と同じ。

・必要なら、さらにもう1オクターブ上の三角形を積み重ねる。

 

・指数曲線の変化が小さいと(潰れた三角形だと)、僅かな操作で音の高さを変えることが出来る。反面、ピロピロと音が外れやすく、コントロールが難しい。

・顎の動きの幅が、1mmではコントロール幅が狭いと感じれば、三角形の高さを大きくすれば良い。

顎の動きの幅と音を外しにくいかは、トレード・オフの関係にある。

 

・バイオリン等の弦楽器は、音の高さの変化と弦の長さの変化がリニアではないので、慣れが必要。ギター等のフレットがある弦楽器のフレット間隔を見ると、変化が均等ではないことが分かる。

・この形状であれば、音の高さは顎の動きに対してリニアに変化するので、人間にはコントロールしやすい。つまり、より音を外しにくい方向。リニアな変化であれば、延長線上に結果があると容易に予測可能だから。

 

・ハイトーンで楽器が下を向くプレイヤーを見かける。楽器を下に向けることで、「この形状を変化」を積極的に起こさせていると推測。

実際に歯の先端形状を、正面から見た形状と、下から見上げた時の形状の2つを意図的に変えると、狙った通りの効果が得られた。

 

・経験的には、1オクターブ分の三角形の高さが0.5mmでは、狭すぎて窮屈に感じた。それぞれの三角形の高さが1mmくらいがベターに感じた。

 

・歯とマウスピースに挟まれた唇は、思いもよらない形状に変化する。

私の場合、「一番漏れやすい位置」は、マウスピースのプレスや口腔内圧力、唇の締め具合の変化によって、位置も大きく変化した。低音と高音で、少なくとも4mmは移動する。

 

ーー

正解は一つではない。

 

プロや上級者からのアドバイスが、自分に合わないことが多々あって当たり前。

自分がコントロールしやすいと感じる奏法が、一番自分に合っている。

 

これは自分、当人にしか分からない。さまざま、仮説を立てて試してみるしか無い。

上級者からの「形容詞」から仮説を立てるよりも、物理的に考えて事象を絞ったほうが、結果が出る確率は上がるだろう。

 

トランペットは、息漏れとの戦い。

「意図した一箇所」だけから息が出るようにしたい。「意図しない場所」からの息漏れを如何に楽に(異常なプレス無しに)防げるか。

これらの条件が揃って初めて、プロや上級者が言う「息のコントロール」がモノを言い始める。

トランペットで「バテ」て音が出なくなる、物理的な仕組み

 

【概略】

トランペットの「バテ」を、物理的に分析してみた。

 

別資料で、「トランペットで音が出なくなる仕組み」を解説した。

原因の根は全く同じであり、バテの原因は「意図しない場所から」の息漏れである。

 

「息漏れを防ぐために口を硬く閉じると、口腔内の圧力を上げる必要が生じ、結果として息が漏れないようにプレスを強くする必要になり、更に息漏れを防ぐために更に口を固く閉じて・・・」

の悪循環におちいる。

 

ここでは、「誰もが必ず持っている」息が漏れてしまう「意図しない場所」の、事例を紹介する。

これは「誰もが必ず持っている条件」であり、全ての人に当てはまる、非常に有効な対策となるだろう。

 

 

【結論】

対策例

上前歯2本の合わせ目に出来る「V字型の溝」を、レジン等で埋める。

表面、裏面の両方とも埋めるのが、より効果的。

 

 

ーーー

【結論の概略説明】

 

金管楽器は「意図した一箇所」だけから息が出る仕組みがあれば、非常に楽に音を出すことが出来る。

ところが、別資料で説明したとおり、「意図しない場所」からの息漏れが生じると、思ったように音を出すことが難しくなる。

詳しくは「トランペットで音が出なくなる仕組み」を参照。

 

ChatGPTに「口の絵」を描いてもらった。「歯茎まで見える口」をリクエスト。

かなりキレイな歯並びである。上唇の形状も、トランペット向きである。産毛まで生えてる。

しかし、このようなキレイな歯並びでも、実は完璧ではない。

 

 

 

 

下図に「意図しない場所」から漏れるルートを図解した。

 

 

●前提、及びその息漏れのメカニズムの説明。

・「意図した一箇所」は、多くは上前歯2本の「先端部分」である。口腔内から唇に向かった、この部分を通ってエアビームが直接当たる。

・上前歯2本の歯茎部分には、大なり小なり、必ず隙間(穴)が開いている。

・上前歯2本の合わせ目には、大なり小なり、必ず「V字型の1本の溝」が出来る。

・この「V字型の1本の溝」と「上唇」に囲まれた「三角形のパイプ」が出来上がる。

・この「三角形のパイプ」は、上前歯2本の「歯茎側」と「歯の先端」を繋ぐ形になる。

・上前歯2本の合わせ目だけではなく、さらにその隣の歯との合わせ目も、同様に息漏れのルートになり得る。

 

結果、「歯の先端」を通り抜けてくる息(意図した一箇所)と、「歯茎の穴」を通り抜けてくる息(意図しない場所)の、2箇所からの息が、唇の合わせ目に向かって流れることになる。

特に加齢等で歯茎が下がると、「歯茎の穴」が大きくなり、「意図しない場所」からの息漏れが多くなると、以前のように音が出なくなったりするだろう。

 

楽に音が出る人は、通常はマウスピースのリムに押されて唇が密着して、「三角形のパイプ」を塞いでいる。

高音を出す等でプレスが増えて、徐々に唇の柔軟性が損なわれると「三角形のパイプ」からの息漏れが始まり、最終的には「三角形のパイプ」からの息漏れが「歯の先端」からの息漏れよりも多くなり、音が出なくなる。(もしくは、高い音に移行できなくなる。重音が出るケースもあるだろう。)

 

これが「バテた」と感じた時の物理的現象である。

 

・いわゆるチューニングのBbが楽に出ない人

・五線譜の上のソが楽に出ない人

・Hi-Bbが楽に出ない人

・Hi-Fが楽に出ない人

・ダブルHi-Bbが楽に出ない人

 

どのケースも、「このルートの息漏れ」が原因である可能性が非常に高い。

 

 

●プレスを掛けると高い音が出るのは、この「三角形のパイプ」が塞がれるて、口腔内の圧力を高めることが可能になるためだ。

更に高い音を出そうとすると口腔内の圧力が上がり、再び「三角形のパイプ」から息が漏れ始める。

それを防ぐために、さらにプレスを増やす。

 

高い音が楽に出せる人は、この「三角形のパイプ」の断面積が比較的小さい傾向にあると推測できる。

逆に言えば、高い音が出ない人は、この「三角形のパイプ」の断面積が比較的大きい傾向にあると推測できる。

(比較の対象は、「歯の先端」を通り抜けてくる息(意図した一箇所)。よって、完全に個別案件となる。)

 

対策としては、この「三角形のパイプ」を埋めてしまえば良い。

歯や唇の形状によって、大きなマウスピースに答えがある人もいれば、小さなマウスピースに答えがある人もいる。

「三角形のパイプ」のどの部分を唇で埋められると、より効果的なのか。と言う話。

 

それでも収まらなければ、レジン等で埋める。

 

●個人的には、この対策で劇的な効果があった。

バテてきて辛いんだけど、それでも音が出る。

物理式の通りの現象が起きている。

 

プレスして「三角形のパイプ」を埋める必要がないので、プレスが劇的に減った。

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方で説明しているエアビームのシステムと併用すると、殆どノンプレスでもHi-Fなどが出るようになった。もちろん音量は非常に小さい。

 

大音量を出すには息の量が必要なので口腔内の圧力を上げる必要があり、息が漏れないように相応のプレスが必要となる。

ppからクレッシェンドしてffまで行っても、破綻しない。

以前はクレッシェンドするために口腔内の圧力を上げると、「意図しない場所」から息が漏れてしまい、クレッシェンド自体が成立しなかった。

 

 

●歯のオモテ面だけをレジンで埋めても効果が薄ければ、ウラ面「も」塞ぐトライをオススメする。

 

「歯茎の穴」経由だけではなく、「歯の裏側から歯と歯の狭い隙間を通って出てくる息」も、場合によっては無視できないケースもあるだろう。

前歯の歯と歯の隙間は、歯並びが良ければ非常に狭いが、長いのでトータル面積としては相応の大きさになる。

「歯の先端」を通り抜けてくる息(意図した一箇所)と、「歯茎の穴」を通り抜けてくる息(意図しない場所)の、2箇所からの息の、相対的な比率で決まる。

 

私のケースでは、前歯の表側と裏側の両面塞いだ方が、より楽に音を出すことが出来た。

 

 

ーーーーーー

【バテるシステムの詳細説明】

 

バテた時、物理的には一体何が起こっているのか?

 

●前提

少なくとも、上前歯2本以上でマウスピースを支えている形状になっていることを前提とする。

 

根拠

上前歯の先端の幅は、約8.5mmプラス・マイナス0.5mm、と言われている。

上前歯2本で、約17mmプラス・マイナス1mm。

トランペットのマウスピースのカップ内径は、ほとんどが15mmから18mmの間にある。

以上から、少なくとも上前歯2本以上で、マウスピースを支えていることになる。

 

 

●基本的なセッティング例

歯と唇の位置関係。

「2本の上前歯と下唇で整形されたエアビーム」が、「上唇と下唇の合わせ目」に来るようにセッティングする。

このような位置関係になるように、マウスピースのセット位置や角度を、無意識のうちに調整している。音が出やすい位置を探している。

 

 

ーーー

●正常時 息の通り道は「1本」のみ(「意図した一箇所」からのみ息が出る)

「上唇と下唇の合わせ目」に当たるエアビームは、「2本の上前歯と下唇で整形」されて出てくる。

 

●異常時 息の通り道が「複数箇所」になる。

バテた時、重音が出る時、などは、この「意図しない場所」からの息漏れが原因。

具体的には、次の2経路から息が供給されることになる。

 

経路1 「上唇と下唇の合わせ目」に当たるエアビームは、「上前歯と下唇で整形」されて出てくる。

経路2 「2本の上前歯の歯茎部分の隙間」を通った空気が、「2本の上前歯の合わせ目に出来る溝」(2の溝)を通って、「上唇と下唇の合わせ目」に流れ込む。

 

 

ーー

【パスカルの原理のおさらい】

 

ーーGeminiの説明ーー

パスカルの原理のポイント

  • 「密閉容器」かつ「流体」: 閉じ込められた液体や気体でのみ成立します。
  • 圧力は等しく伝わる: 加えた圧力は、流体のあらゆる方向に、減衰することなく伝わります。
  • 力は面積に比例する: F = P x A(力 = 圧力 x 面積)の式が成り立ち、断面積が2倍になると、2倍の力が発生します。

ーーここまでーー

 

式の示す「力」を「息の量」と読み替えると、イメージしやすいかも。

トランペットの場合は、口腔内の圧力を一定と仮定すると、断面積に比例して息の量が決まる、と理解すると良いだろう。

(逆に言うと、息の量を一定に保つには、口腔内の圧力を一定に保つ必要がある。)

 

前提

息の通る経路は、

・「意図した一箇所」の「経路1」・・・歯の先端

・「意図しない場所」の「経路2」・・・前歯2本の間のV字型の溝

の2つが存在すると仮定する。

 

口腔内の圧力が一定であれば、断面積が大きい経路の方が息の量は多くなる。

つまり「経路1」の断面積と「経路2」の断面積の、相対的な関係で目標とした「音が出る」か「音が出ないか」が決まる。

音が出ないのは、努力や根性が不足しているからではない。

物理的な条件が揃っていないだけ、である。

 

バテは、「経路1」と「経路2」の断面積の比で、説明できる。

「経路1」と「経路2」の断面積は、どちらも可変であり、奏者は無意識に両者をコントロールしている。

パラメーターが2つになるので、話がややこしくなっている。

 

プロや上級者と言われる「楽に音が出せるプレイヤー」は、「経路2」の断面積が「経路1」の断面積に比べて、無視できるほど小さい、と考えると良いだろう。

しかし必ずどこかで「経路2」と「経路1」の、断面積の関係が逆転する。

高い音を出すには、「経路1」を小さくするのが合理的である。

「経路2」を小さくするには、マウスピースのプレスを強めて、唇の柔軟性で「2の溝」を埋めるしか方法が無い。

(「より厚いリム」もしくは「より薄いリム」のマウスピースに変える、「より大きい」マウスピースもしくは「より小さい」マウスピースに変えるなどで、良い結果が得られる場合もある。)

 

口腔内の圧力が一定であれば、断面積が大きいほど、多くの息が流れる。

つまり「経路1」よりも「経路2」の断面積が大きくなった時点で、狙った音は出なくなると考えられる。

 

と言うか、「経路1」よりも「経路2」の断面積が大きくなった時点で、現時点以上には口腔内の圧力を上げることが難しくなる。

口腔内の圧力を上げるには、「経路1」と「経路2」からの息漏れを減らす、つまり断面積を小さくする必要があるが、「経路2」の断面積を減らすことが出来なければ、「経路1」の断面積を減らしても、「経路2」の断面積で口腔内の圧力は、ほぼ決まってしまうから。

 

 

先の「パスカルの原理式」を変形して、それぞれの意味を読んでみる。

 F = P x A(力 = 圧力 x 面積) 力は、圧力と面積に比例する

 P = F / A(圧力 = 力 / 面積) 圧力は、力に比例、面積に反比例する。

 A = F / P(面積 = 力 / 圧力) 面積は、力に比例、圧力に反比例する。

 

 

厳密には異なるが、「力」を「息の量」と読み替えると、イメージしやすいかも。

 

 F = P x A(息の量 = 圧力 x 面積) 息の量は、圧力と面積に比例する

 P = F / A(圧力 = 息の量 / 面積) 圧力は、息の量に比例、面積に反比例する。

 A = F / P(面積 = 息の量 / 圧力) 面積は、息の量に比例、圧力に反比例する。

 

 

式を見るポイント。

右辺の2つの変数を同時に変えると、イメージが難しくなる。

2つの変数のうち、どちらか1つを固定して考えると、単純化出来て理解しやすくなる。

なるべくシンプルに、簡略化して考える。

 

 

混乱させるかもしれないが、ここでは

息の量 = 息のスピード

と考えて差し支えない。

 

「息の量」と「息のスピード」は、比例関係にある。

ある断面積を、単位時間あたりに通過する量を増やすには、スピードを上げる必要があるから。

 

ただし、「息の量」や「息のスピード」は、音の高さには無関係であることに注意したい。

「息の量」や「息のスピード」は、あくまでも音量を決めるもの。

 

詳しくは 音の高さを決める物理式を説明している別資料 を参照。

 

 

 

ーーー

【パスカルの原理から、次の関係を導くことが出来る。】

 

・「経路1」の断面積 < 「経路2」の断面積・・・状態A

二者がこの関係であれば、設計通りの音が出しやすい。

 

・「経路1」の断面積 > 「経路2」の断面積・・・状態B

二者がこの関係になると、「経路1」に必要な口腔内の圧力を作ることができなくなる。「意図しない場所」である「経路2」から先に息が漏れてしまうから。

「プスー」っとなるか、「それ以上高い音に移行できない」状態におちいる。

 

 

補足

唇に柔軟性があるうちは、「経路2」をマウスピースでプレスした唇で埋めることが出来るので、状態Aを維持することが出来る。

この時、経験的には、楽に音が出せる人から比べると、異常に高いプレスを掛ける必要がある。

この異常な高プレスにより唇の柔軟性が減ってくると、「経路2」を埋めることができなくなり、結果として状態Bにおちいる。

 

ーー

回避事例

この状態から回避するのに有効な手段は、マウスピースのリムをより下方にセットすることである。

いわゆる「粘膜奏法」にすることで「2の溝」を埋め、「意図しない場所」からの息漏れを最小限にできる可能性が高くなる。

 

逆に言うと、「粘膜奏法」におちいる原因は、この「2の溝」を塞ぐ必要があるから。

つまり、「粘膜奏法」のセッティングにしないと、まともに音が出ない状態なのである。

「粘膜奏法」が良くないことは一般常識的だが、分かっていても他の位置では「意図しない場所」である「2の溝」からの息漏れで、まともに音が出ないのである。

根本原因を直さずにアンブッシャーだけを変えても、解決は難しい。

 

 

ーー

【「メディアンスペース」的な隙間の考察】

「1」と「2の溝」の2つの経路は次の関係となり、互いに影響し合うことは無い。

 

・「経路1」の断面積 = 「経路2」の断面積・・・状態C

 

つまり、経路は1つしかない。

よって、今回のような事例は成立しないことになる。

 

メディアンスペースの議論は様々あるようだが、決定的な結論は出ていないと理解している。(ケース・バイ・ケース。一概には言えない。)

物理的に言えば、「メディアンスペースの位置」と「合わせた上下唇の中で一番息が漏れやすい位置」が正確に合っていれば、確実に結果が出るだろう。

ただし、メディアンスペースの幅は固定であり、結果として音の高さを決定する「唇の長さL」が固定となり、調整できる音程の幅の制約が出てくる。

 

 

●上前歯2本の間を「埋める」のではなく、「僅かに隙っ歯」にしても、物理的には複数の息の通る経路は生じないので、良好な結果が得られる可能性が高い。

実験していないので、結果は不明。

 

「隙っ歯」と「埋まってる歯」のどちらが見栄えが良い?!

 

 

ーー

【以上の現象は、次のように考えるとイメージしやすいかもしれない。】

 

息の使い方についてのよく耳にする事例として、「水道に繋がったホースの話」がある。

 

●ホースを水道の蛇口に繋いで水栓を開けると、ホースの先端から水が出る。=「経路1」

ホースの先端をつまんで出口を小さくすると、勢いよく水が出るようになる。

 

●このホースに、小さな穴が空いていたとする。=「経路2」

小さな穴からは、わずかに水が漏れる程度。・・・状態A

 

ホースの先端をつまんで出口を小さくしていくと、小さな穴から出てくる水の量が増えていく。

ホースの先端出口の断面積と、小さな穴の断面積が同じになった時、両者から出てくる水の量は同じになる。・・・状態C

ホース先端出口の断面積が、小さな穴の断面積よりも小さくなると、小さな穴から出てくる水の量のほうが多くなる。・・・状態B

 

 

水が「高いところ」から「低いところ」に流れるように、口腔内の息も「小さな穴」よりも「大きな穴」からより多くの息が出ようとする。

 

 

 

【副作用】

歯の隙間をレジン等で埋めると、衛生面で問題が出る場合がある。

やるのなら、自己責任でやってください。

 

虫歯の原因は、虫歯菌。

僅かな隙間があれば、虫歯菌は侵入する。

侵入した箇所を、掃除することが出来ない。

 

実際の医療現場では、「ブリッジ」と言う方法で複数の歯を繋いで一体にする手法は存在する。

よって、複数の歯の一体化を完全に否定するものではない。

一体化させる時、何に注意するべきか、よくよく確認が必要。

 

歯の目的は、食べ物を咀嚼すること。

歯医者は、この目的を達成するための医療行為を実施する。

 

「トランペットで楽に音を出す」ことを目的にした歯医者は、非常に少ない。

「それは医療行為に当たらないので、当院では受け付けない。」と言う反応が普通である。

歯に関する審美的な行為は、医療行為???

受注するかどうかを決めるのは、歯医者さん。

 

 

【レジンについて】

 

光重合レジンは百均等でも入手可能。

しかし、長期間口の中に使うものなので、少々値段は張るが、歯科用の光重合レジンを使う方が安全であろう。

 

歯科で使う、歯の欠損部分を埋めるレジンには、様々な種類がある。

完全な液体タイプ、緩いペーストタイプ、硬めのペーストタイプ、など。

 

簡易的に実験する時には、接着剤を使わないのがオススメ。

接着剤を付けなければ、ある程度の力を掛ければレジンは「パキン」とすぐに歯から剥がれる。

 

鏡を見ながら、自分の歯にレジンを盛って、形状を整えるのは、結構難しい。

ある程度、目的の形状になったら、紫外線で硬化させ、鉄ヤスリ等で形状を整える。

レジンは、本物の歯に比べると非常に柔らかく、ヤスリで削るとあっさり形状が変わっていく。

本物の歯にヤスリが当たった時と、レジンを削っている時では、手の感触や音、歯に感じるゴリゴリ感が大きく異なるので、神経集中して作業する。

 

ーー

参考までに、私が使用したことのある部材を紹介する。

今の時代、安全上の観点から、入手は難しいかもしれない。

 

●光重合レジン

 

製造・販売 株式会社 松風(SHOFU INC. )

 

ビューティフルII 4.5g

歯科充填用コンポジットレジン タイプ1(嵌合面を含む)クラス2(光重合レジン)

前歯・臼歯用(X線造影性)

直射日光を避けて保管(1から30℃)

 

色の選択が可能。

自分の歯の色に合わせて、選択する。

私の事例では「A2」が、違和感が少なかった。

 

SDS(安全データシート)の入手が可能。内容を確認して、あくまでも自己責任で。

硬めのペーストタイプで、扱いやすいと感じた。

 

●接着剤

レジンを歯に固定するための接着剤。

 

製造 クラレノリタケ デンタル株式会社

販売 株式会社 モリタ

 

クリアフィル ユニバーサルボンド Quick ER セット

管理医療機器

歯科用象牙質接着剤(歯科セラミック用接着材料、歯科金属用接着材料、歯科用知覚過敏抑制材料、歯科用シーリング・コーティング剤)

 

冷蔵保存(2から8℃)

輸送中は30℃以下のこと

直射日光、火気厳禁

 

●紫外線ライト

光重合レジンを硬化させるには、紫外線を照射する必要がある。

紫外線ライトは百均でも入手可能。LEDタイプが一般的。

 

光の強さと硬化時間は、反比例の関係。

光が弱ければ、長時間の照射が必要。

実際にレジンに紫外線光を当ててみて、硬化に必要な時間を確認する必要あり。

 

紫外線を裸眼で見ると、目を破壊する恐れがある。

歯科医師などは、オレンジ色のフィルムで紫外線がカットされた状態で使用していた。

 

医療用の紫外線は強力で、1回5秒程度で完全硬化。

百均等で手に入るレベルの紫外線光源は、安全上の理由で非常に弱いので、場合によっては1分以上の照射が必要かも。

 

百均の弱目の紫外線とは言え、硬化までの1分間、ずっと目で見ていてはいけない。目が壊れます。

基本的には目を瞑って照射作業し、時々照射位置が合っているか、例えば10秒に一回、薄目で一瞬見る程度に留める。

 

●ヤスリ

レジンの形状を整えるのに、ヤスリを使う。

幅4から5mm程度の、小さな鉄ヤスリが使いやすかった。

平らなヤスリ、三角形のヤスリ、丸いヤスリなど、数種類あると、形状を整えるのに便利。

百均の小型ダイヤモンドヤスリも悪くなかった。

 

●薄手のゴム手袋等があると便利

レジンは歯にくっつきやすく出来ているので、当然に手にも良くくっ付く。ゴム手袋等は、素手よりはくっつきにくいと感じた。

細かい作業になるので、指先が細めのゴム手袋がオススメ。

青い薄手のニトリルゴム手袋を使用した。

 

ーーー

私の場合、実際に何十回も歯科でレジンを盛って貰っていたので、作業内容は事前に十分学習出来ていた。

 

接着剤は完璧ではなく、大きな力が掛かれば普通に剥がれる。

歯医者で作業してもらったとしても、取れてしまうときは取れてしまう。

例えば、本番前に煎餅を食べるのは厳禁、かな。

 

「熱いお茶」や「冷たいジュース」を飲めば、レジンが伸縮して接続部に力が掛かる。

これを繰り返せば、レジンは取れてしまうだろう。

 

慣れてしまえば、作業開始からヤスリ仕上げまで、15分ほどで出来るようになる。

つまり、本番直前でも、15分あれば復帰可能。

しかし、形状やヤスリの仕上げ加減で、感触や音の出方が激変するので、出来ればやりたくないが。

 

トランペットで音が出なくなる仕組み

 

【概略】

「どうしたら音が出るか」と言う視点の記事や論文は、世の中に大量に存在する。

これらの資料の問題は、「音が出ない原因を特定はしていない」こと。

 

科学の世界では「仮説を立てて、実験する。」つまり「原因なりを特定して、それに対する対策を施す。」のが王道。

闇雲に対策を打っても、結果を得られる可能性は高くない。

手持ちのマウスピースがどんどん増えていくのを経験している方は、少なくないでしょう。

 

と言うことで、逆説的に「トランペットで音が出なくなる仕組み」を考察してみた。

 

事故で唇中央を切断、7針縫ったら、全く音が出なくなった。

呼吸法など含めた奏法を一切変えていないにも関わらず、一切音が出なくなったのだ。

 

トランペットの音が出るのは、唇が振動するだけの、ただの物理現象。それ以上でも以下でもない。

唇を目的の周波数で振動させることが出来れば、目的の高さの音が出る。

 

物理的に分析すること40余年、仮説を立ててはトライ・アンド・エラーを繰り返えしてきた。

極めて抽象度の高い結果を得たので、ここに記す。

 

ーー

【結論】

音が出なくなる原因は、合わせた上下唇の「意図しない場所」から息が漏れるから。

分かってしまえば、答えは非常にシンプル。

 

多くのプレイヤーが抱える問題点の事例

・高い音が出ない

・バテて音が出なくなる

・プレスを必要以上に強くしないと音が出ない

・豊かな音が出ない

・詰まったような音しか出ない

・音がカサカサする。空気の音が混じる。

・重音が出る

・高い音で、大きな音を出せない。小さな音なら出せる。

・高い音で、小さな音を出せない。大きい音なら出せる。

・粘膜奏法にしないと音が出ない

・唇を横に引かないと音が出ない

 

これら全てが、上記の一つの原因に集約される。

 

 

●原因が特定できたので、ここで初めて対策立案が可能となる。

 

抽象度上げた対策案は、次の通り。

・合わせた上下唇の、「意図した一箇所」から「だけ」、息が漏れ出る状態を作り出す必要がある。

 

逆説的に言うと、

・合わせた上下唇の、「意図しない場所」から息が漏れないような状態を作り出す必要がある。

 

ーー

対策の方法は、多岐にわたる。

個々人で、必要となる対策は異なる。

「歯並び」や「唇の形状」等、具体的な原因が異なるから。

 

ここで、原因の抽象度を下げていき、具体的にしていく。

 

まず、次の2点を具体的に絞り込む。仮定する、決める。

・唇の、息を出したい「意図した一箇所」はどこなのか?

・唇の、「意図しない」どの場所から息が漏れているのか?

 

対策すべき場所を具体的に特定できて、初めて具体的な対策を考えることが可能となる。

 

具体的な対策として、マウスピースを別のものに変えることで、解決できるケースもある。

マウスピースを当てる角度を上下左右に変えることで、解決できるケースもある。

必要な音域(口腔内の圧力)によっては、歯並びを変えないと解決できないケースもある。

 

大きいマウスピースに答えがあるケースもあるし、小さいマウスピースに答えがあるケースもある。

プレイヤーの歯並びや唇の形状は多岐にわたり、ケース・バイ・ケースであり、それぞれで答は異なる。

例えばトランペットのマウスピースの種類は、それこそ星の数ほどあるのはこのため。このことは歴史が証明している。

 

自分に合った対策に巡り会えるかどうか。

秘訣は、巡り合うまで諦めないこと。

成功するまで諦めなければ、成功する。鶏と卵だ。

 

ーー

考え方の一例

・合わせた上下唇の中で、最も息が漏れやすい場所を使う

・上記に正確に、絞ったエアビームを当てる

 

最も漏れやすい場所を使うことが出来れば、「意図しない場所」から息が漏れる可能性を下げることが出来る。

 

ーー

アパーチャの形状は「結果として出来る」ものではない。

アパーチャの形状は、意図的に作り出すもの。

 

アパーチャの形状を意図的に作る方法の一例を、以下の別資料で説明しているので参照されたし。

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方

ハイトーンを出すためのエアビーム作成事例

 

これらの事例は、エアビームの形状を制御することで、アパーチャの形状を制御する仕組み。

 

 

【詳細説明】

 

音が出なくなる原因は、合わせた上下唇の「意図しない場所」から息が漏れるから。

では、なぜ「意図しない場所」から息が漏れてしまうのか。

そのメカニズムを説明していく。

 

●口腔内の息の圧力

高い音を出すには、必然的に口腔内の圧力を上げる必要がある。

 

高い音を出すには、唇のアパーチャサイズを小さくすることが合理的。また、唇を硬くすることも合理的。

音の高さを決定づける論理式を、次の別資料で説明しているので、参照されたし。

トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。

トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析

 

アパーチャを小さくするために、感覚的には唇をより強く閉じる。

より強く閉じられた唇の小さな穴から息を出すには、口腔内の圧力を上げる必要がある。

 

ところが、口腔内の圧力を上げると、「意図しない場所」から息が漏れ始める。

「意図しない場所」から息が漏れ始めると、結果として口腔内の圧力が下がる。

 

「意図しない場所」からの息漏れを止めるために、上下唇をさらに強く閉じて息が漏れるのを防ぐ。

すると、「意図した一箇所」も同時に閉じてしまうことになり、「意図した一箇所」からも息が漏れ出なくなる。

「意図した一箇所」から息を漏れ出すように口腔内の圧力をさらに上げると、再び「意図しない場所」から息が漏れ始めて口腔内の圧力が下がり、結局「意図した一箇所」から息が出ることはない。

結果、唇の振動が止まり、音が出ることはなく、「意図しない場所」からの息が「プスー」っと聞こえてくることになる。

 

これが音が出ない状態に陥る、悪循環のシステムである。

口腔内の圧力を上げる

=>意図しない場所から息が漏れる

=>漏れないように唇を閉める

=>さらに口腔内の圧力を上げる

=>意図しない場所から息が漏れる

=>=>=>

 

このような無限ループを続けると、最終的には唇から息が一切出ない状態に達する。「口腔内の圧力」で「閉じた唇」を押し開くことができなくなる。

 

実際には人間はフィードバックを掛けて、「口腔内の圧力」と「唇の締め具合」のバランスを保とうとして、何とか音を維持しようとする。

「意図しない場所」からの息漏れを止め、「意図した一箇所」からだけ息が出るように、「口腔内の圧力」と「唇の締め具合」のギリギリのバランスを保とうとする。

結果として、例えば「か細い音」、「小さな音」になる。

 

それ以上息を入れる、つまり口腔内の圧力を上げると、

・「意図しない場所」から息が漏れ始めて口腔内の圧力が下がり、

・「意図した一箇所」から息が漏れ出すのに必要な圧力に達しなくなり、

・「意図しない場所」から出る息の音だけの「プスー」という結果になる。

 

 

●よく使われる言葉で言うと、「息のスピード」を上げることが出来ない状態に陥る。

(正確には「息のスピード」ではなく、「口腔内の圧力」。ここを誤解すると、カオスになる。)

 

この現象を見てプロや上級者は、「息が弱いから、もっと息を入れなさい」「息のスピードを、ヒューって上げて!」と、実行不可能なアドバイスする。

これ以上「息を入れる」と、音の出る仕組みが破綻する状態にあるにも関わらず。

「意図しない場所」から息が漏れず、かつ、「意図した一箇所」から息が出る、ギリギリのバランスを保って、何とか高い音を出しているのに。

 

実はこの現象、初心者に限らず、プロや上級者と言われる方にも平等に現れる、物理現象である。

高い音が出るか出ないかは、この現象の「程度問題」の差だけなのである。

 

・あるプレイヤーは、下加線1本のド以上に必要な「比較的低い」口腔内圧力で、この現象が生じる。結果、第2線のソが出ない。

・他のあるプレイヤーは、上加線2本以上に必要な「比較的高い」口腔内圧力で、この現象が生じる。結果、上加線3本の音が出ない。

 

これが「音が出なくなる仕組み」の全てである。

 

プロや上級者は、この意味を理解することが難しいかもしれない。

彼らは音が出るので、このことには気づかないし、そもそも気にする必要がないから。

(プロや上級者が努力や苦労をしていない、と言う意味ではない。次元が違い過ぎて理解できない、と言う話。)

 

 

●以上の事象を裏付ける、物理現象について説明する。

「パスカルの原理」をご存知だろうか。

 

Wikiによると次の通り。

パスカルの原理(パスカルのげんり、英語: Pascal's principle)は、ブレーズ・パスカルによる「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力[注 1]をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。」[1]という流体静力学における基本原理である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/パスカルの原理

 

Wikiの図にもあるが、風船が丸く膨らむのは、風船内面に対して均一な圧力が掛かっているからである。

 

同様に、「一本に繋がっている肺の中から口腔内、唇の全ての場所に、全く同一の圧力が掛かっている」ということ。

口腔内の息の圧力を上げるには、基本的には横隔膜等をコントロールして肺を圧縮する以外に方法はない。

息の出口をコントロールすることで口腔内の圧力が上がるのではなく、肺の圧縮があるから結果として口腔内の圧力が上がる。

 

流体は、圧力が高い方から低い方に移動する性質がある。

口腔内の圧力が上がると、比較的圧力の低い大気(楽器内)に向かって息が流れる。これが「音を出している」状態である。

唇のアパーチャから息が出ていくと口腔内の圧力は下がり、大気圧と釣り合うと息の移動は無くなり、口腔内から大気(楽器内)に向かって息が出ていかなくなる。

継続して音を出し続けるには、肺から空気を送り込んで口腔内の圧力を一定に保つ必要があり、結果としてアパーチャから一定の空気が供給され、継続的に音が出ることになる。

 

唇のすべての場所に同じ圧力が掛かると、唇の圧力に一番弱いところから息が漏れ始めることになる。

この場所が「意図した一箇所」であれば、結果が出る。

「意図しない場所」だった場合は、苦労することになる。

 

全ての金管楽器プレイヤーが、「楽に音を出す」ために日々行っている試行錯誤の全てが、「意図しない場所」からの息漏れを防ぐ行為と言っても過言ではない。

 

ーー

世界中で使われている「息のスピード」と言う言葉は、イメージ的にはそのように言ってしまうことは理解できる。

実際に「意図しない場所」から息が漏れにくいプレイヤーは、そのイメージだけで高い音を出すことが可能であり、手を変え、品を変え、言葉を変えて、異口同音で言い伝えられる。

 

しかし、実際に息(空気)の制御を支配しているのは「圧力」であり、「スピード」ではない。

ここを勘違いすると、カオスになる。

 

これらは、様々なレッスン本や文献、動画等の「息の使い方の重要性」を否定するものではない。

指導する側が、前提条件として「意図しない場所」から息が漏れないことが「必要条件」となることを、認識している必要がある。

 

「息の使い方」のアドバイスのみでその場で上達するには、「必要条件」が満たされている前提が必要。

100人に教えて100人に同様な効果が出ないアドバイスは、何らかの「条件」を満たしていないと考えるのが自然であろう。

 

物理現象は、条件が揃えば100%再現する。

再現できない場合は、何らかの条件が欠如していると考えるのが自然。

 

ーー

「息のスピード」のイメージは、恐らく水鉄砲から来ているのだろう。

 

単純な造りの水鉄砲、例えば竹で作られた直線的な水鉄砲が分かりやすいだろう。

水の入った竹筒に、ピストンを押し込むことで竹筒内の圧力が上がり、竹筒の先に開けた小さな穴から、勢いよく水が出てくる。

ここから、スピードと感じているものの正体が、圧力であることが分かる。

 

流体は、圧力の高い方から低い方に流れる。

 

「穴の大きさ」「圧力」「流体のスピード」「流体の量」の関係

・「出る穴の大きさ」が一定なら、流体の移動「スピード」と移動「量」は、圧力に比例。

・「圧力」が一定なら、流体の移動「スピード」は穴の大きさに反比例、流体の移動量は穴の大きさに比例。

・流体の「スピード」を上げるには、圧力をより高く、出る穴の大きさを小さくする。

・流体の「量」を上げるには、圧力をより高く、出る穴の大きさを大きくする。

 

これらは、どれも同じこと言っている。

 

ーー

同様に水道のホースの事例も、頻繁に耳にする。

ホースの先端を指でつまんで細くすると、勢いよく水が出る。

これはこれで、とても現象をイメージしやすい良い事例だと思う。

 

この話をさらに進展させてみる。

ホースの途中に小さな穴が開いているとする。

ホースの先端が解放されているときは、途中の穴からはわずかに水が出てくる。

 

次にホースの先端を指でつまんで細くしたらどうなるか??

指でつまんだ先端からも勢いよく水が出るが、ホースの途中の穴からも勢いよく水が出るだろう。

 

さらに先端をどんどん強く指でつまんで更に細くしたら、どうなって行くか??

最終的には先端からの水は止まり、ホースの途中の穴からだけ勢いよくたくさんの水が出ることになる。

 

この状態が「意図しない場所」からの息漏れであり、「意図した一箇所」であるホースの先端からは息が漏れ出なくなる。

ホース内の圧力は同じなので、弱いところから水が漏れる。

 

ーー

金管楽器で音を出すコントロールに、本当に必要なことは何なのか?

この設定を間違えると、カオスになる。

必要なのは「息のスピード」ではない。

コントロールするべきなのは、口腔内の圧力なのである。

 

 

ーーーー

【まとめ】

金管楽器プレイヤーは、楽に音を出すために「意図しない場所」から息が漏れないようにする努力を、常にしている。

・大量のマウスピースを取っ替え引っ替え試してみる。

・マウスピースを当てる角度を変えてみる。

・マウスピースを当てる場所を変えてみる。

・アンブシュアを変えてみる。

 

これらを試す目的は、「意図しない場所」から息が漏れないようにすることと同義と言って良い。

 

口腔内の圧力が高くても「意図した一箇所からだけ息が漏れ出る仕組み」が作れれば、高い確率で高い音を出すことが可能。

ある程度までは、マウスピースがカバーしてくれる可能性が高い。

しかし、歯並びを調整しないと、実現しない場合もあるだろう。

 

 

【コラム】

マウスピースを唇に押し付けるプレスを増やすのは、口腔内の圧力に唇が耐えるために必要だから。

プレスを強くしないと、マウスピースを当てた部分から息が漏れてしまうから。

例えば、ハイBb以上などの高圧力で吹いている途中で、試しにプレスを弱めてみてください。ブハー!って水道管が破裂したように唇が開きます。

 

弱いプレスで吹くためには、口腔内の圧力を下げる必要がある。

しかし、高い音や音量を増やすには、口腔内の圧力を上げる必要がある。

この関係は完全にトレードオフ。

 

ーー

如何にして「口腔内の圧力」を上げずに高い音を出すか。

この矛盾をクリアできれば、持久力は確実に増す。

 

矛盾をクリアする具体的な方法は、

・可能な限り唇を閉じずに、

・小さなアパーチャを作る。

と言うこと。

 

以下の別資料で説明した論理式のとおり、唇の長さLを小さく出来れば、周波数は上がる。つまり、高い音が出る。

トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。

トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析

 

ユルユルに合わせた上下唇に、必要なだけ細い息を当てる事ができれば、小さいプレスでの演奏が可能である。

これを以下の別資料の下の方で実験している動画があるので、参照されたし。

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方

「圧縮空気を指と指の間に当てる」動画。指と指を軽く閉じただけなのに「ピーッ」っと甲高い音が鳴る。

 

ところが、多くのプレイヤーは、ユルユルに合わせた上下唇では、音を出すことが出来ない。

同様に、多くのプレイヤーは、ノンプレスで音を出すことが出来ない。

バズィングでハイBb以上を出したり、バズィングで音階やメロディーを演奏出来るプレイヤーも、決して多くはない。

「意図した一箇所」からよりも、「意図しない場所」から先に息が漏れてしまうからだ。

 

・スーパーチョップスで紹介されているように、上前歯を下唇に当てて閉じ、口腔内の圧力が上唇全体に伝わらないようにするのも、手段の一つ。

・いわゆるシラブルコントロールも、手段の一つ。舌の先端形状を工夫して、唇の必要な部分以外に口腔内の圧力が加わらないようにする。

・別資料で説明しているエアビームの作り方も、手段の一つ。

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方

ハイトーンを出すためのエアビーム作成事例

 

ーー

高い音でよく耳にする話として、「壁を一つ超えると、また次の壁が来る」がある。

これが今回説明した理屈で説明ができる。

 

「意図しない場所」からの息漏れを止めることが出来ると口腔内の圧力を上げることが出来、結果として一つ上の音域に行ける。

さらに上の音域に行こうとすると、口腔内の圧力がさらに上がり、再び「意図しない場所」からの息漏れが始まる。

終わりなき戦いが始まる。

 

残念ながら、口腔内の圧力を上げるにも、限度がある。つまり、延長線上に答がない可能性が高い。

あるところまで行ったら、考えを切り替える必要がある。

如何にして口腔内の圧力を「上げない」で条件を満たせるか。

 

大気圧の絶対値は1kgf/cm2 abs前後。

人間が継続的に作れる圧力は、せいぜい1.2kgf/cm2 abs。

咳をする時に、瞬間的に1.4kgf/cm2 abs程度に上げられるが、継続的には難しい。

肺の中の圧力が上がると、血液が肺に戻ってこれなくなるために、血圧が急上昇する。つまり、生命維持ができなくなる。

ハイトーンプレイヤーだけが特別に、Turboエンジンのように2kgf/cm2 absを出せるわけではない。

 

実際に圧力を測定してみたのが、以下の別資料の下の方。

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方

 

 

長文をお読みいただき、ありがとうございました。

―― エンジン信号エミュレーターによる誤動作条件特定の試み ――

 

1. 概要

BP-VE エンジンとフリーダムコンピュータ(以下、フリーダム)の組合せにおいて、「パワー低下」「エンジン停止」「激しいハンチング」などの深刻な誤動作が頻発する事象が確認されている。

 

これらの誤動作については、発生中の各信号をオシロスコープにより直接観測することに成功しており、誤動作時の信号状態そのものについては、すでに解析を完了している。
(誤動作時の詳細な信号状態については『BP-VE とフリーダムコンピュータの組合せで不具合発生 その1』を参照されたい。)

 

しかしながら、「どのような条件下で誤動作が発生するのか」という根本的な発生条件については、依然として不明であった。

 

そこで本研究では、誤動作発生条件を机上で再現・制御することを目的として、フリーダムコンピュータ専用のエンジン信号エミュレーターを新規に作成した。

本稿では、そのエミュレーターの設計思想、ハードウェア構成、およびソフトウェア仕様について、詳細に記録する。

 

 

2. エミュレーターの定義と目的

 

2.1 エミュレーターとは

本稿における「エミュレーター」とは、実際のエンジンから出力される各種センサー信号を、時間・位相・振幅の点で忠実に再現する装置を指す。

語源は emulate(模倣する、再現する)であり、対象システム(本件ではフリーダムコンピュータ)に対し、実物と区別できない入力信号を与えることを目的とする。

 

フリーダムコンピュータを含む ECU は、

  • クランク信号
  • カム信号
  • 各種アナログセンサー信号

を周期的に受信し、それらを基に

  • 燃料噴射時期および噴射量
  • 点火時期
  • バルブタイミング制御量

を演算し、エンジンを制御している。

 

したがって、エンジンを実際に回転させることなく、これらの信号を正確に再現できれば、ECU は「エンジンが動作している」と認識し、通常通り制御動作を行う。

 

2.2 エミュレーターを用いる利点

エミュレーターを用いる最大の利点は、机上環境で ECU の挙動を安全かつ詳細に観察できる点にある。

 

実車走行中において、

  • オシロスコープを接続すること自体が困難
  • 走行しながら波形を観測することは極めて危険
  • 誤動作が一瞬で消失する場合、再現が困難

といった制約が存在する。

 

エミュレーターを用いれば、

  • 任意の条件を意図的に作り出せる
  • 同一条件を何度でも再現できる
  • ノイズや異常信号を意図的に注入できる
  • ECU の反応を時間をかけて観測できる

という利点が得られる。

 

本研究では、この特性を活用し、誤動作を「再現可能な現象」として捉えることを目的とした。

 

 

3. エミュレーターの設計方針

 

3.1 基本方針

フリーダムコンピュータがエンジン制御を行う上で、最も本質的な入力信号は、

  • クランク信号
  • カム信号

の2系統である。

 

他のセンサー信号(水温、吸気温、スロットル開度等)は一定値で代用可能であり、エンジン回転および同期認識に直接関与するのは、上記2信号である。

 

2024年当時の仮説として、

  • 誤動作の主因は クランク信号の読み落とし

である可能性が高いと考えていた。

 

そのため、本エミュレーターでは、

  • クランク信号を意図的に「追加」「間引き」できる
  • クランク信号のパルス幅を可変にできる
  • カム信号の位相を進角・遅角方向に自由に変化させられる

構成とした。

 

また、

  • 始動時相当の 100rpm
  • 設定上の上限である 10000rpm

まで、回転数を断続的に変化させ、全回転域での ECU の挙動を確認できるようにした。

 

 

4. エミュレーター構成

 

4.1 システム全体構成

 

4.2 エミュレーター部構成

 

5. エミュレーター詳細仕様

 

5.1 使用したマイコンおよび周辺部品

  • Raspberry Pi Pico 2
  • Pico Explorer Base
  • 4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール(BSS138 使用)

各部品の詳細

Raspberry Pi Pico 2 H(完成品)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g130982/
販売コード:130982

 

Pico Explorer Base
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g116239/
販売コード:116239

 

4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール(BSS138 使用)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g113837/
販売コード:113837
Raspberry Pi Pico の I/O 電圧は 3.3V 系であるため、フリーダム側の 5V 系信号とのインターフェースにはレベルシフタが必須である。
本モジュールは仕様上 10MHz 程度まで動作可能である。

 

ECU コネクタ(NA8 Sr.2 用)
AliExpress にて調達。

  • 26pin メス:917992-6 / 90980-11390
  • 22pin メス:917989-6 / 90980-11392
  • 16pin メス:917983-6 / 90980-11425

※フリーダム側 64pin オス(178883-6 / 30050-64A)は今回は未使用。

 

 

6. ハードウェア仕様

 

6.1 フリーダムコンピューターへの入力信号(全て 5V 系)

  • クランク信号(マイコン生成)
  • カム信号(マイコン生成)
  • 水温(固定抵抗による一定値)
  • 吸気温(固定抵抗による一定値)
  • スロットル開度(可変抵抗:全閉〜全開)
  • 吸気圧(可変抵抗:全閉〜全開)
  • O2 センサー(可変抵抗:A/F 10〜20 相当)

 

6.2 フリーダムコンピューターからの出力信号(観測対象)

  • イグニッション信号(5V 系、1-4 / 2-3 の 2 出力)
  • インジェクター信号(12V 系、4 気筒分)
  • VVT 信号(12V 系、PWM 制御 0〜200)
  • ISCV 信号(12V 系、PWM 制御 0〜255)

 

6.3 回路図

(ピン番号は NA8 Sr.2 ECU 用。左下のトランジスタに Raspberry Pi Pico の出力を接続。)

 

7. ソフトウェア開発

 

7.1 開発概要

エミュレーター用ソフトウェアは、本稿に記載する仕様書を基に、ChatGPT によって生成した。

 

この程度の仕様書であっても、ChatGPT はエンジン制御の概念を十分に理解しており、制御として破綻したソースコードが出力されることはなかった。

 

やりたいこと、目的、制約条件を明確に与えることで、人間では到底不可能な速度で実装案を提示してくる点は、従来の開発手法と比較しても特筆すべき点である。

 

初期段階では、

  • 回転数 1000rpm 固定
  • クランク信号・カム信号を周期的に出力

する最小構成のコードを作成した。

この段階で、フリーダムコンピューターは想定通りの出力を示し、エミュレーターとして成立することを確信できた。

 

しかし、その後の道のりは長かった。

  • 位相変更処理
  • LCD 表示
  • ボタン操作
など、細部において仕様通りの挙動を得るのに苦労した。

 

特に、カム信号位相を連続的に変化させる処理は最も難航した部分である。

出力されたコードを精査し、修正提案を行いながらのやり取りを繰り返し、最終的には数十回に及ぶ修正を経て完成に至った。

数十回の修正要求にも一切不満を示さず対応する ChatGPT に対し、月額 3,500 円でここまで付き合うエンジニアは存在しないだろう、というのが率直な所感である。

 

なお、最も手間取ったのはRaspberry Pi Pico 2 の開発環境構築であった。

従来の Pico に関する情報は豊富だが、新型である Pico 2 に関する情報は極めて少なく、事実上ベータ版ファームウェアしか存在しない状況であった。

ChatGPT の支援がなければ、Pico 2 への書き込みすら行えなかった可能性が高い。

 

 

8. ソフトウェア仕様書詳細

本節では、作成したエミュレーターソフトウェアの仕様を、原仕様書に基づき詳細に記載する。

 

本エミュレーターは、回転数の変化により信号の時間幅(実時間)が変動する。
そのため、時間軸を実時間(µs など)で指定すると、回転数に依存して信号形状が変化し、実車信号との同等性が崩れる。

そこで本エミュレーターでは、時間軸をすべて角度(度)で指定し、回転数が変化しても、実車信号と同様の角度位置でパルスが発生するように設計した。これにより、回転数が変化しても、波形の「角度上の意味」を一定に保つ。

 

8.1 回転数調整範囲

  • 調整範囲:100rpm〜10000rpm
  • ステップ:100rpm
  • 初期値:1000rpm

エンジン始動時の挙動を確認する目的で、下限回転数を 100rpm に設定した。

 

8.2 カム信号(実車信号測定値)

カム信号は以下の角度条件で定義する。

  • 0度から Lo スタート
  • 160度から 180度まで Hi
  • 180度から 315度まで Lo
  • 315度から 337.5度まで Hi
  • 337.5度から 348.75度まで Lo
  • 348.75度から 360度まで Hi

上記は、実車信号測定結果に基づく定義である。

(クランク2回転720度で、カム1回転360度)

 

8.3 クランク信号(実車信号測定値)

クランク信号はノーマリー Lo とし、以下の角度位置で Hi パルスを出力する。
(合計 8 発)

  • 0度
  • 70度
  • 180度
  • 250度
  • 360度
  • 430度
  • 540度
  • 610度

上記は、実車信号測定結果に基づく定義である。

(クランク2回転720度で、カム1回転360度)

 

8.4 クランクパルス幅

  • 調整範囲:0.25度〜10.00度
  • ステップ:0.25度
  • 初期値:5度(実車信号測定値)

 

8.5 カム‐クランク位相

  • 調整範囲:±180度
  • ステップ:1度
  • 初期値:6度(実車信号測定値)

 

9. テストモード

本節では、クランク信号に対して意図的な異常(追加・欠落)を与えるテストモードについて記載する。

 

9.1 クランクパルス追加(Test1)

Test1 は、クランク信号に対して 1 発余計なパルスを挿入する機能である。

  • 追加パルス幅:1度〜10度(1度ステップ)

追加位置は以下 2 系統を想定する。

 

追加位置 1(パルス間中央狙い)

パルスとパルスの間(中央)を狙い、Lo‐Hi‐Lo の追加パルスを挿入する。

 

追加位置 2(TDC 基準の 8 か所)

1 番気筒の TDC から順に、720 度までの 8 か所を対象とし、1〜8 の番号で追加位置を指定する。

 

9.2 クランクパルス間引き(Test2)

Test2 は、クランク信号から 1 発パルスを削除する機能である。

  • 間引く位置:1 番気筒 TDC から順に 720 度までの 8 か所
  • 指定方法:1〜8 の番号で指定

 

10. 押しボタンおよび LCD 表示仕様

本節では、Pico Explorer Base のボタン、および LCD 表示に関するユーザインターフェース仕様を記載する。

 

10.1 基本ボタン機能

  • A ボタン:決定(Select)
  • B ボタン:一つ前に戻る(Return)
  • X ボタン:Up
  • Y ボタン:Dn

 

10.2 LCD 画面のボタン案内表示

LCD 画面四隅に以下の案内を常時表示する。

  • A ボタン:Select
  • B ボタン:Return
  • X ボタン:Up
  • Y ボタン:Dn

 

操作体系は次の通りである。

  • X,Y ボタンでカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンで Return(戻る)

 

10.3 電源オン時のメインメニュー表示

電源投入時、LCD に以下の 5 項目を表示する。

1 行目:回転数モード
2 行目:位相モード
3 行目:クランクパルス幅モード
4 行目:クランクパルス追加(Test1)
5 行目:クランクパルス間引き(Test2)

カーソル初期位置は、電源オン時は回転数モードとする。
下層画面から戻った場合は、遷移前のモード位置にカーソルを復帰させる。

 

メインメニューにおける各ボタン機能は次の通りである。

  • A:決定
  • B:戻る
  • X:カーソル Up
  • Y:カーソル Dn

 

11. 各モード画面の仕様

11.1 回転数モード

表示内容:

  • 1 行目:「回転数」
  • 2 行目:現時点の回転数(最大 5 桁、単位 rpm)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:回転数 Up
  • Y:回転数 Dn

ここで設定した回転数は保持する。

 

11.2 位相モード

表示内容:

  • 1 行目:「位相」
  • 2 行目:現時点の位相(±180度、単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:位相 Up
  • Y:位相 Dn

ここで設定した位相は保持する。

 

11.3 クランクパルス幅モード

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定したパルス幅は保持する。

 

11.4 クランクパルス追加(Test1)画面

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス追加」
  • 2 行目:パルス幅(単位 度)
  • 3 行目:追加位置(1〜8)
  • 4 行目:Fire!

 

操作仕様:

  • X,Y ボタンで 2,3,4 行目間をカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンは機能なし
  • 4 行目(Fire!)で A ボタンを押すと、クランクパルスを 1 発追加し実行する

モード内で設定した値は保持する。

 

2 行目(パルス幅)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

3 行目(追加位置)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス追加位置」
  • 2 行目:追加位置(1〜8)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:位置 Up
  • Y:位置 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

11.5 クランクパルス間引き(Test2)画面

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス間引」
  • 2 行目:パルス幅(単位 度)
  • 3 行目:追加位置(1〜8)
  • 4 行目:Fire!

 

操作仕様:

  • X,Y ボタンで 2,3,4 行目間をカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンは機能なし
  • 4 行目(Fire!)で A ボタンを押すと、クランクパルスを 1 発間引いて実行する

モード内で設定した値は保持する。

 

2 行目(パルス幅)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

3 行目(位置)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス追加位置」
  • 2 行目:追加位置(1〜8)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:位置 Up
  • Y:位置 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

12. オシロスコープ・トリガー用信号

  • 出力ピン:GP7
  • 仕様:TDC で立ち上がり 1 発
  • 通常状態:Lo
  • パルス時:Hi
  • パルス幅:20µs 固定

目的は、オシロスコープにおいて1 番上死点(TDC)の波形を確実にトリガし、表示を安定して停止させることにある。

 

13. Pico2 周辺の写真

Pico2 周辺の写真

 

14. エミュレーターの画面表示

以下に、エミュレーターの画面表示例を示す。

  • メイン画面
  • 回転数画面
  • カム位相画面
  • クランク信号幅画面
  • クランク信号 1 発追加画面
  • クランク信号 間引き画面

 

 

 

15. まとめ(本稿の位置づけと所感)

本稿「BP-VE とフリーダムコンピュータの組合せにおける不具合発生(その4)」では、誤動作の原因特定そのものではなく、その原因特定を可能にした エンジン信号エミュレーター(シミュレーター)の仕様と設計思想に焦点を当てて記述した。

 

●誤動作の具体的な再現条件および原因の切り分けについては、すでに前稿「その3」にて説明済みであり、
本稿はあくまで、

  • どのような考え方でエミュレーターを設計したのか
  • なぜこの仕様が必要だったのか
  • どこまでを再現し、どこを切り捨てたのか

といった 検証のための土台を記録することを目的としている。

 

●本エミュレーターの開発を通じて、改めて強く感じたのは、AIの活用可能性の大きさである。

AI の持つ知識量と処理速度は、すでに人間を遥かに凌駕している。

ただしそれは「何でも勝手に解決してくれる存在」という意味ではない。

  • 何をしたいのか
  • 何を検証したいのか
  • 何が分かっていて、何が分かっていないのか

これらを 人間側が明確に言語化し、構造化して指示できた時、AI は非常に強力で、かつ忍耐強い「相棒」となる。

数十回に及ぶ仕様修正、コード修正、設計意図の再説明にも付き合い続ける存在は、少なくとも従来の開発現場には存在しなかった。

 

●また、本研究を通じて再認識したのは、エンジン制御という分野の本質的なシンプルさである。

 

エンジン制御は一見すると極めて複雑で難解に見えるが、
本質的には、

  • クランクがどこにあるか
  • カムがどこにあるか

この 2 点を正しく認識し続けられるかどうかに集約される。

 

不要な要素を一つずつ引き算し、「本当に必要な信号は何か」を突き詰めていくことで、問題の構造は驚くほど単純な形で姿を現す。

今回のエミュレーター設計は、その「引き算してシンプルにする」という姿勢の重要性を、改めて強く実感させる結果となった。

 

ーーー

ちなみに本原稿。要点と流れをなぐり書きした原稿を、ChatGPTに「論文調に仕上げて」と指示して完成させた。

最近のAIは、日本語も極めて上手。偽メールが来たら、騙されてしまうだろう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

免責事項(Disclaimer)
本記事に掲載している回路図・改造手法・ソフトウェア等は、特定の条件・環境での動作を確認したものであり、すべての環境で安全に動作することを保証するものではありません。誤使用、改造、実装により発生したいかなる損害・事故・故障についても、筆者および当サイトは一切の責任を負いません。
この情報に基づいて何らかの作業を行う場合は、ご自身の責任において安全・法令遵守の下で実施してください。

2025年夏、誤動作再発と原因特定・対策記録

 

概要

 2024年夏、カム信号およびクランク信号に対する誤動作対策回路を導入して以降、エンジンは安定して動作していた。
 しかし2025年夏、使用年数約10年のイグニッションコイルを交換したことを契機として、フリーダムコンピューターの誤動作が再発した。

 つまり、ノイズ源の条件が変化すると、既存の対策が成立しなくなることが明らかになった。
 本稿は、誤動作の真因の特定と、その結果に基づく対策方針・実装内容の記録を目的とする。

 

 

基本方針

 トラブル対応において最も重要なのは、原因の正確な特定である。
 原因認識を誤れば、対策もまた誤った方向へ進む。

 本件では以下を基本方針とした。

  • 誤動作の発生条件を再現可能な形で明確化する
  • 経験則ではなく、再現性を伴う検証に基づいて対策を立案する

 

 

 

誤動作トリガーの特定

 イグニッションコイル交換を境に誤動作が再発したことから、誤動作の主たるトリガーとなるノイズ源は点火系であると判断した。

 

 ガソリンエンジン用ECUの歴史は、点火ノイズとの戦いそのものである。
 点火系が発生するノイズは極めて大きく、単にノイズを抑制するだけでなく、**「一定の誤動作が発生することを前提とした設計」**が行われている。

 

 ダイレクトイグニッションが軽自動車を含む広範な車種に採用されている最大の理由は、高電圧配線を最短化することでノイズを最小限に抑える点にある。
 燃費向上等の副次的効果は、増加コストを正当化するための説明に過ぎない。

 

 OBD-IIにおける失火検知は、排ガス悪化を基準値の1.5倍以上引き起こす失火を対象とする。
 主な検知手法は、クランク角速度の揺らぎ、すなわちトルク変動の検出である。

 

 巨大な点火ノイズを発生させるガソリンエンジンは、日本の制御技術なくして成立しない。
 国外メーカーがEVシフトに走った背景には、この技術的限界があると推測している。

 

 このレベルの問題を、個人が根本的に解決することは現実的ではない。
 本来は、ノイズ源そのものを低減する、あるいはノイズの影響を受けにくい構造にすべきである。

 

 実際、BP-VEエンジンにおいても、

  • セミダイレクトイグニッションの採用
  • イグニッションコイル近傍へのノイズ対策コンデンサ配置

 といった設計上の配慮が確認できる。

 

 以上を踏まえ、本件では
 「誤動作モードに入らないこと」自体を目標としない
 という判断に至った。

 

 代わりに、

 誤動作モードに入った場合、それを検出し、自動的に通常モードへ復帰させる

 という戦略を採用した。

 

 

 

前回対策に対する反省

 前回は、不具合現象を経験的な推測に基づいて仮説化し、トライ&エラーによって複数の対策を実装した。

 結果として、当時のノイズ条件下では機能したものの、ノイズ条件が変化すると成立しないことが明確になった。

 

 前回の具体的対策内容

 クランク信号およびカム信号を、NPNトランジスタ受けからPNPトランジスタ受けへ変更NPN→PNP化により、GND基準でのノイズマージンは増加した。
 しかし、イグニッションコイル交換によりノイズレベルそのものが変化し、確保したマージンを超えたと考えられる。

 

 

今回のアプローチ

 今回の対策では、以下を明確な目標とした。

  • 誤動作の発生条件を定量的に把握する
  • ノイズによる誤動作が発生しても、検出・復帰が可能な構造を構築する

 そのため、フリーダムコンピューターの挙動を再現可能な専用エミュレーターを製作した。

 

 

 

エミュレーターの製作

 実車からの各種信号を模したエミュレーターを製作し、フリーダムコンピューターに接続。

 各種信号を変化させ、フリーダムコンピューターの挙動を確認・検証した。

 

エミュレーターの外観

  • Raspberry Pi Pico 2
  • Pico Explorer Base
  • 4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール BSS138使用

 これらを使って作成。

 

 

 

エミュレーターによる検証結果

 誤動作モード遷移条件

 エミュレーターによる検証の結果、以下の挙動が確実に再現された。

 

 正常モード

  • クランク1回転あたり、クランク信号は4発

 

 正常モード → 誤動作モード

  • クランク1回転中に4発 + 1発(ノイズ相当)=計5発が入力されると、誤動作モードへ遷移

 

 誤動作モード → 正常モード

  • 誤動作モード中に、意図的に1発追加して5発とすると、正常モードへ復帰

 

 以上から、

  • 誤動作モードを検出可能であれば
  • クランク信号を1発追加することで、確実に正常モードへ戻せる

 ことが明らかになった。

 

 正常モードとは、1番気筒上死点を正しく認識している状態である。
 誤動作モードとは、1番気筒上死点を誤認識している状態である。

 

 

 

対策回路の設計思想

 誤動作モード検出後、クランク1回転以内に正常モードへ復帰させることを目標とした。

 

 誤動作モード検出条件

  • カム信号と点火信号(2–3)が重なった場合を誤動作と判定

 通常モードでは両信号は位相的に重ならない。
 誤動作モードでは、1番気筒上死点の誤認識により両信号が重なる。

 ※カム進角時は本判定が成立しないため、後述の設定変更が必要となる。

 

 

 通常モード時の波形

 ・上 カム信号

 ・下 点火信号2−3

 上下の波形がズレている

 

 誤動作モード時の波形

 ・上 カム信号

 ・下 点火信号2−3

 上下の波形が重なる

 

 

 

 

対策回路図

 概略説明

 ・カム信号と点火信号2−3が重なった時(誤動作モード検出)、クランク信号に1発追加(通常モードに戻す)する。

 ・「カム信号と点火時期2−3」が重なった時、クランク信号に同期して、クランク信号の約1ms後に、約200us幅のパルスを1発入れ、その後約1秒間「カム信号と点火時期2−3」をマスクする。

 詳細説明は割愛する。

 

 

 

実装写真

 

 

 

 

ノイズレベル変化と負荷依存性

 誤動作の直接的原因は、プラグ点火回路由来のノイズである。

 

 ノイズの大きさは負荷条件により大きく変動する。

  • 高負荷時
    • プラグ要求電圧が高い
    • 放電時間は短い

 

  • 軽負荷時
    • プラグ要求電圧が低い
    • 放電時間が長くなる、または複数回放電する

 

 放電時間が長いほど、誤動作が発生する確率は高くなる。

 

 実際、

  • 全開走行時に誤動作モードに入った事は無い
  • ハーフスロットル等の軽負荷時のみ誤動作発動

 という結果が得られている。

 

 

 

 

フリーダムコンピューターの挙動に関する考察

 エミュレーターにより、以下の挙動が確認された。

 

  • クランク信号が減る(3発)場合
    → 一時的に不安定になるが、自動的に正常モードへ復帰

 

  • クランク信号が増える(5発)場合
    → 誤動作モードへ移行し、自動復帰しない

 

 この挙動は、設計上の不具合、すなわちソフトウェア的バグと考えて差し支えないだろう。

 

 

 

設定変更の必要性

 誤動作モード移行時、クランク信号が1発ずれることで、フリーダムコンピューター上の1番気筒上死点位置がずれる。

 その状態でVTC学習が行われると、誤ったカム最遅角位置が記憶され、再起動後も性能低下が残る

 

 これを防ぐため、以下の設定変更を行う。

  • VTC学習機能の停止
  • アクセルオフ時に必ずカム進角がゼロになる設定

 学習は取り付け初期のみ必要であり、通常運用中は不要と判断した。

 

 FCSS Ver.2.54

 1 係数 => 14 その他の係数 => 14 その他の係数2 => 1 バルブタイミング制御

 10 VTCアイドル制御フラグ => 1

 13 VTC学習回転数下限 => 10000

 

 

 

考察

 VVTマップおよびバルブタイミング制御設定を、今回の誤動作分析の視点で見直すと、この誤動作は既知であり、その結果として現在の制御仕様が形成されたとも解釈できる。

 VVTマップにおいてアクセルオフ領域がゼロで埋められている点、バルブタイミング制御の後半項目が誤動作対策的内容である点は、その痕跡と考えられる。

 これはあくまで私見であり、主観的解釈である。

 

 

 

総括

 本件は、ノイズ条件の変化により顕在化した、設計上の境界事象である。

 根本解決は困難であるが、誤動作を前提とした検出・復帰機構を追加することで、実用上の問題は解消できた。

 7年前に生産中止となった制御系ではあるが、同様の事象に直面した際の記録として、本稿を残す。

 

免責事項(Disclaimer)
本記事に掲載している回路図・改造手法・ソフトウェア等は、特定の条件・環境での動作を確認したものであり、すべての環境で安全に動作することを保証するものではありません。誤使用、改造、実装により発生したいかなる損害・事故・故障についても、筆者および当サイトは一切の責任を負いません。
この情報に基づいて何らかの作業を行う場合は、ご自身の責任において安全・法令遵守の下で実施してください。

 

【概略】

ハイトーンを出すのに必要なエアビームの基本的な作り方を、ハイトーンを出すためのエアビームの作り方で、2次元モデルを用いて可能な限りシンプルに説明した。

次に3次元モデルを考えてみる。

 

人間の口の形は人それぞれで千差万別であり、最低でも3次元で条件を成立させる必要がある。最終的には「吹き続けると、バテて音が出なくなる。」と言う、時間軸を入れた4次元での条件成立が必要。

 

 

【理想の定義】

「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、完全に一致していること。この条件を満たせば、「楽に」ハイトーンが出る。

 

※「楽に」と言っても、エアビームが作れていない時と比較して「楽である」と言う意味。腹圧を上げて真っ赤な顔して吹くのは、「程度の差はあれ、変わらず必要なこと」とである。

ハイトーン用の細いエアビームに、音量を稼ぐために息をたくさん入れるのに高い腹圧が必要なのは、ハイトーンを出すためのエアビームの作り方で計算結果を示して説明済み。

 

 

【理想の条件が揃わないと何が起きるか】

 

[事例1]

●私の上唇の形状は、図1のように「出っ張り」がある。これに図2のような「中央にエアビーム」を組み合わせてみた。つまり、「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、一致していない場合である。

 

●結果、fやffでは音が出るのだが、mpやpでの演奏が完全に不可能になった。早いパッセージや、跳躍も、比較的難しくなった。伝わるかわからないが、唇が軽くは反応しなくなる。プッって軽く息を入れても、音が出ない。

 

●何が起きているのか、メカニズムを考察してみた。

図1の「出っ張り部分」から息を出したいので、漏れやすい「引っ込み部分」からは、息がもれないようにしなければならない。fやffの時は、息の量に負けないようにするために自然と唇を閉めるので、「引っ込み部分」から息が漏れることはない。しかし、mpやpの時は、少ない息でも振動するように唇を緩める必要があり、「引っ込み部分」も緩む。その結果、「引っ込み部分」にエアビームが回り込んで「プスー」と漏れてしまい、「出っ張り部分」から息が出てくることはなく、音が止まる。

 

世の中には、「fやffでの演奏は得意だが、pは全くダメ」というプレイヤーを見かけるが、物理的に原因はこれであると考えて間違いない。pの息の量のエアビームでは、「出っ張り部分」の唇をおしのけて息を通すことができない。唇を緩めれば、漏れやすい箇所から先に息が漏れてしまうから。パスカルの原理そのままである。漏れやすいところから息が漏れないように唇を締めると、より腹圧を増す必要が生じ、結果としてマウスピースのプレスも増える。完全に悪循環にハマる。

 

 

図1 出っ張り唇

 

図2 中央にエアビーム

 

[事例2]

●図1の「引っ込み部分」からエアビームが出るように、図2の「薄い二等辺三角形」をズラして、位置が合うようにしてみた。つまり、「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、一致させた場合である。

 

●結果

ffからpまで、まんべんなく楽に音が出せるようになった。高速パッセージや跳躍も、比較的楽にできるようになった。

 

【考察】

事例1と2から言えること。如何にして「唇の形状」つまり息が漏れやすい場所に合わせて「エアビーム」を作るのかが、「理想」に近づける第一歩になる。

 

上級者からの「唇は柔らくどんな形状にもなるから、工夫するんだ。」のアドバイスも間違いではないが、唇の形状の調整幅には限度がある。彼らは、実際に唇の形状を工夫して、結果を出している。ウソは一つも無いし、騙そうとしているわけでもない。なので「理想的な条件がある程度揃ったうえでのアドバイスである」と受け取るのがベター。

 

例えば唇を横に引くことで「息の漏れやすい」位置を多少は調整可能であろう。しかし、唇の「出っ張り」と「引っ込み」を帳消し出来るほど、つまり直線になるまで唇を横に引くと、唇が薄くなって耐久力にも影響が及ぶ可能性があるだろう。

 

「唇を横に引いてはいけない」とはよく耳にする言葉で、意図する意味は理解できる。何事もトレード・オフの関係にあり、犠牲になる面もあるかも知れないが、唇を横に引いたほうがトータルでベターな結果が出るのなら、それはそのプレイヤーには正解である。必要であれば引けば良い、要するにバランスの問題であろう。上級者からのアドバイスは絶対的なものではなく、前提条件により話が変わることを知り必要に応じて解釈を変える、つまり真意や前提を知ったうえで、そのアドバイスの意味を自分の頭で考える事が重要。常識と言われるものが、時代時代で常に変化していることは歴史が証明している。

 

 

[事例3]

●事例1と2は、2次元の出来事。ここからは、3次元で考えてみる。

 

●事例2までの前提条件

・上唇の形状だけに注目。

・図2の下唇は、直線で厚みは均一ある。

・図2の歯は、平坦で並行で直線状である。

 

ところが、

・人の唇の形状は、平坦でも直線でもないし、厚みも均一ではない。

・歯の形状も、仮に歯並びが綺麗だったとしても、平坦でも直線でもないし、形状も均一ではない。

・平面的なマウスピースと、デコボコな歯に挟まれて、もともと曲がりくねってる唇の形は、さらに大きく変形する。

 

●では、マウスピースは口の何処に当てたら良いのだろうか?

 

結論を先に言えば、

・可能な限り歯並びの平らな部分にマウスピースを当てる

と言う事になる。

 

マウスピースのリムは、平面である。

このマウスピースの平面に合わせて歯並びも平面であれば、間にサンドイッチされる唇の均一に押されるので、「唇の形状は直線的な変化」をし、決してデコボコにはならない。

 

ところが、歯並びが荒れていて平面ではなくデコボコしていて、歯からマウスピースまでの距離が場所によって異なると、間にサンドイッチされた唇の形状は、デコボコの通りの形状となる。つまり、歯からマウスピースまでの距離が「狭い場所」では、歯からマウスピースまでの距離が「広い場所」よりも、唇をより多く潰すことになる。

 

・マウスピース側に出っ張った歯により、より多く押しつぶされた部分の唇は、潰されて伸びることになり、マウスピースのリムで固定されているのとは反対方向の唇は長くなる。

・マウスピースから離れるように引っ込んだ歯により、あまり押しつぶされない部分の唇は、潰されずに現状の長さを維持する。

 

以上のように、対マウスピースの方向に歯並びにデコボコがあると、図1の出っ張りや引っ込み以外にも、さらに出っ張りや引っ込みが出来ることになる。これは、プレスの強さとも相関がある。プレスを掛けたときに、都合良い方向に変形する場合と、都合の悪い方向に変形する場合の、両方のケースがある。

 

経験的には、

・マウスピースのリムの内径を大きくする(唇の先端から遠い位置にリムを置く)

・平らなリムにする(プレスの力を分散する)

ことで、改善することが多いと感じた。

 

マウスピースのリムを旋盤で平らにすると、耐久力的には楽になったが、唇の自由度が減ったためか音を動かすコントロール的にはマイナスであった。

 

・数本並んでいる歯の表面を、1枚の平面になるように加工すると、大きな効果を得られたと感じた。

・耐久力も増し、音を動かすコントロールもしやすくなった。

 

●下前歯の形状

図2の下唇は、直線で厚みは均一ある。これを実現するためには、下前歯が平面的で直線的である必要がある。

 

上前歯と同様な結果であった。

・数本並んでいる歯の表面を、1枚の平面になるように加工すると、大きな効果を得られたと感じた。

・耐久力も増し、音を動かすコントロールもしやすくなった。

 

下唇がデコボコの場合、エアビームがリニアに変化しなくなる。この影響は上唇の変形よりも大きいと感じた。

 

 

●さらに細かい理想条件を言えば、

・エアビームの位置

・唇の息の漏れやすい位置

・マウスピースの位置

の3つの位置が一致している必要がある。

 

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方では、理想的な「歯」「唇」「マウスピース」の位置関係、つまり「全てが平らで並行で直線」に並んでいる前提で、理屈を説明した。

 

実際には、プレイヤーによって千差万別。条件が同じことはない。同じ道具だからと誰もが同じように音が出せるわけではないのは、実感していることだろう。

 

この3つの位置が一致するには、素質がモノを言う。

・図3の唇であれば、前歯2本で作るエアビームをそのまま利用可能で。

・歯並びは、平面的であるほうが、唇に余計なデコボコができないので、エアビームのリニアな変化がそのまま利用可能。

 

図3 出っ張りが少ない唇

 

 

 

[事例4]

私の具体的な事例。

マウスピースを当てる位置は、前歯1本分ほど左にズラしてある。先の「3つ位置」を揃えるには、ズラしたほうが都合が良かったため。

 

・唇の形状は図1のように中央が出っ張ったタイプ。事故の傷跡で大きなヘコミが有り、そのヘコミ部分が最も息が漏れやすい。

・前歯の平面具合は、左上1番と2番を使うと、かなり平面になる。

・エアビームは、唇の最も息が漏れやすい部分を狙って、前歯の左上1番を山型に加工。

 

 

[事例5]

上前歯の断面形状。

・歯の先端を平らにすれば、楽器の角度が真っ直ぐでも音が出しやすい。

・歯の先端の裏側をクサビ状に薄くすると、上唇を下唇に多めに被せて、息が下向きにでるように楽器の角度を下向きにすると、音が出やすい。

 

これらを組み合わせて形状を工夫すうると、楽器の角度を変えることで、2種類のエアビームを作ることが出来る。実際に、プロプレイヤーでもハイトーン領域では、楽器が下向きになるプレイヤーを複数みかける。

 

物理的に、図2の形状を同時に2つ作り込むことで可能になる。

・図2自体は、正面から見た図であり、楽器の角度が真っ直ぐな場合に適用。

・図2を下から見た図と考えたのが、楽器が下向きな場合に適用。

 

 

[事例6]

上前歯2本の並び方が

・「へ」の字の出っ歯

・段付きに平行移動

の場合も、楽器が下向きでエアビームを作れる。

 

イメージ的には図4を「下から見た図」と考えた状態。

このように、エアビームを「3次元で作り出す」と考えてみると、他にも組み合わせが見つかるかもしれない。

 

図4 上前歯に段差がある場合や、「へ」の字の場合のエアビーム


 

 

【その他】

 

●トランペットに限らず、金管楽器は音を出すのが難しい楽器。

音が出る出ないの差が、素質に大きく左右される。

 

例えば、ピアノはだれでも音は出せるので、すぐにバイエルなりの教則本で「音楽」をするための技術的練習を開始することが出来る。

ところが金管楽器は、まず音が出るようにならないと「音楽」をするための技術的練習を開始することができない。

 

ピアノは、鍵盤を弾けば音が出るような物理的な仕組みがあるので、誰にでも音が出せる。

リコーダーも同様に、息を吹き込めば誰にでも音が出せる。

 

フルートはリコーダーと同じ仕組みで音が出るのだが、誰にでも音が出せるわけではない。それは、物理的な仕組みの一部が省略されているから。フルートにもアダプターを付ければ、省略されていた物理的な仕組みが補完され、誰にでも音が出せるようになる。

https://www.amazon.co.jp/ledmomo-フルート-吹き方-トレーナー-マウスピース/dp/B0CFZDRPZ3

 

金管楽器にもこのようなアダプターがあれば良いのだが、物理的な分析がなされていないので存在しない。

しかし、金管楽器の音が出る物理的な仕組みは説明してきたとおりであり、物理的な条件が揃えば確実に再現して音は出る。

 

トランペットを吹くロボットが存在し、物理的な条件が揃えば確実に音が出る(だから絶対に音を外さない)ことは実証済み。

その物理的な条件が今までは明確になっていなかったが、これを明確に示せたと自負している。

 

まずは、ピアノ等と同じように物理的な仕組みにより誰でも音が出る状態、つまりスタートラインに立てることがとても大事。

このブログが、そのスタートラインに立つ手助けになればと思う。

 

最終的にトランペットが音楽的に上手になるかどうかは、ピアノ等と同様、別の練習や素質が必要になるだろう。

科学が進歩し、素質の殆どが遺伝で決まることが分かってきた現代。努力できるかどうかさえも、遺伝である程度決まってしまう。

音楽的に成功するかどうかと、音が出るかどうかは、全く別物の素質である。

 

●事例

1962年著の古い本だが、フィリップ・ファーカス著の「金管楽器を吹く人のために」と言う、奏法についての書籍がある。

1967年頃に、日本語翻訳版が出版。北村源三さんという25年間N饗の首席トランペットを努めた方が、巻末「監修を終えて」207ページで1962年から3年間ウィーンに留学したときのことを、次のように語っている。

 

ーーー引用ここからーーー

「1962年の秋から1965年の秋までの3年間、わたしはウィーンに留学し,ウィーン・フィルの首席トラムペット奏者でHermut Wobisch 氏とともにウィーン・アカデミーの教授でもある Joseph Levora 先生に師事した。大げさにいえば Levora 先生との出会いはまことに衝撃的なものであった。まず奏法のA,B,Cからすべてやりなおすこと、その前提として上の前歯2本を矯正することを要求されたのである。これは14才のときからトラムペットを吹きつづけプロとしての道を歩み始めたわたしにとってはきわめて勇気のいるスリルにみちた決断のいるしかも困難な仕事であった。

 

歯の矯正が終ったあとでの最初の練習のことをわたしは一生忘れないだろう。全く音が出なくなったのである!

以後それまでの10年余の奏法と全く訣別して,合理的奏法を学ぶのにつとめた結果,従来のわたしには演奏不能であったパッセージがらくにこなせるようになった。

例をあげればベートーヴェンの第七交響曲の三楽章,展覧会の絵、キージェ中尉,ペトルーシュカなどでぶつかるむずかしいパッセージがそれである。この事実から、(すくなくともわたしにとっては)新しく身につけた奏法は日本で学んだそれよりもはるかに合理的で正しいものであったということができょう。長年つづけた奏法を根本から変え筋肉にしみついた悪いくせを取り除くことだけについやした3年間の不安と恐怖(ヒョッとすると生活できなくなる!)は誠に深刻なものであったが、それによってもたらされた対価もまた大きなものであった。」

ーーーここまでーーー

 

北村源三さんの経歴は、ウィキを参照されたし。

上前歯2本の歯並びを、どのように変えたのかは分からない。

「より楽に音が出るようになった」ということは、「物理的な条件の精度が上がった」と考えて間違いない。

だから、25年間にわたりN饗の首席が務まったのだろう。

 

●素質

・誤解を恐れずに言えば、金管楽器の素質、つまり物理的に音が出る条件が揃っていなければ、絶対に音は出ない。しばらく試しても音が出なかったら、別の楽器にシフトすることをお勧めする。どうしても金管楽器を続けたければ、音が出る物理的な条件を作り込む必要がある。

残酷なようだが、この事実は実は多くのプレイヤーが薄々気付いてることと思う。

さまざま工夫することで、ある程度までは改善が見込めるだろう。しかし、音が出たり出なかったりするピアノでいくら練習しても、そもそも練習にならず、上達は見込めないだろう。


どの世界でも、上手いやつは最初から上手い。そんなもの。

「素質」とは、練習した結果、どのくらい「急激に」伸びるかどうか。この成長カーブの急峻さが素質。

 

・よく耳にする例え話。

素質には1から5までの5段階、努力にも1から5までの5段階ある。

5の素質があるやつは、1の努力でも急激に伸びる。1の素質で5努力したのと同じ結果が出る。

5の素質があるやつが5の努力をされたら、そりゃどうにも敵わない。

見極めも大事だし、諦めも肝心。

 

・先の北村源三さんの言葉を、どう読むか。

私は歪曲して解釈し「素質が全てだよ」と読んだ。

リスクを取って、物理的条件を揃えた。

 

●この素人が経験談から書いたブログを、信じるもよし、バカにするもよし。どう読むかは、各個人の自由である。

信じて行動に移した場合、非常にリスクが高いことを実施する必要が生じる可能性がある。全てが自己責任。

 

●素人の趣味であれば、下加線2本のソから、上加線2本のドまでの2オクターブ半が出れば、十分に素質はあると思うし、十二分に趣味を楽しめると思う。仮にきれいな音でなくとも、それは個性であり、受け入れられる場所に行けば良い。楽しいと思える環境でプレイすれば良い。

 

 

【概略】

別記事「トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。」で説明した「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」の作り方について、物理的な原理を示しながら解説する。

 

 

【考え方のベース】

●トランペットの音が出るのは、唇が振動する物理現象によるものである。

唇の振動数が、そのまま音の高さとなる。

例えばHi-Bbを出したいのなら、唇が935Hzで振動するようにコントロールすればよい。

 

●では、唇の振動数(=音の高さ)を、どのようにコントロールするのか?

唇の振動数を制御する手段は、物理式が示す次の2つだけである。

・唇の「硬さ」をコントロールする。

・唇の「長さL」をコントロールする。


 

・物理式から、「唇を硬く」すると「唇の振動数f」は大きくなる。(高い音が出る)

・物理式から、「長さL」を小さくすると「唇の振動数f」は大きくなる。(高い音が出る)

「長さL」や「唇の硬さ」と「唇の振動数f」の理屈は、別記事「トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析」で詳細を説明した。

 

音の高さを変える物理的な手段として、多くの楽器が採用しているのは、振動体の「硬さ」と「長さ」を変えることである。

・ギター等の弦楽器は、硬さの異なる弦を4本ないし6本用意し、それぞれの弦の長さを変えることで広い音域をカバーしている。

・皮物と言われる打楽器は、大きさ(=長さ)と張り具合(=硬さ)で様々な音域をカバーする。

・金管楽器も同様で、唇の硬さと長さを組み合わせることによって、広い音域をカバーしている。

 

金管楽器で唇の硬さを変える方法は、なんとなくイメージできるであろう。

では、唇の「長さL」を変えるには、どうしたら良いだろうか。

 

例えば、フィリップ・ファーカス著の「金管楽器を吹く人のために」と言う著書のP124に、この「長さL」を観察した結果が記載されている。

・1オクターブ上がると、「長さL」は半分になる。

・1オクターブ下がると、「長さL」は2倍になる。

 

事実を観察した結果、「長さL」と「音の高さf」は、完全に正比例の関係だったということが、示されていた。

この本が書かれたのは1962年。60年以上前から、分かっていたことである。

 

 

[注意]

何度か説明したが、「息の強さや量」は「音の高さ」に直接は関係しない

強い息や量は、あくまでも音量を出すため、つまり唇の振幅を大きくするために必要となる。

 

ここをゴチャ混ぜにして考えてしまうと、迷子、迷宮に入る。

ピアノやギターを強く弾いても、音階が表現できるような音の高さの変化が起こることはない。これが物理の法則である。物理式の示す通りである。

 

トランペットの演奏上、息の使い方は非常に重要である。しかし、「音の高さ」を考える場合には、一旦息のことを忘れる必要がある。

繰り返すが、音の高さを決める要素は、唇の「硬さ」と「長さ」の2つだけである。

 

 

●では、この「長さL」をどのようにコントロールするのか?

2つの手段がある。

・1つ目は、唇を締めたり緩めたりすることで制御する方法。

・2つ目は、概略でも書いたが「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」を使って制御する方法。

 

「1つ目」については、世にたくさんの書物やHP、動画があるのでそちらを参照いただきたい。

ここでは、全く語られていない「2つ目」について説明する

 

●先に結論を具体的に言えば、次の通り。

・「上前歯と下唇で細く薄く整形したエアビーム」を「上唇と下唇の合わせ目」に当てることで、振動する唇の「長さL」を強制的に決めてやることで、音の高さを強制的に決める。

 

●物理現象は、条件が揃えば必ず再現する。

逆に言えば、条件が揃わないと物理現象は再現しない。

 

上級者からのアドバイスで結果が出ない場合は、唇が振動するための物理的条件のうちのどれかが欠けていることが原因である。

これは断言できる。

 

●上級者からのアドバイスにウソは一つもなく、間違いなく効果があった経験談を形容詞で伝えようとしている。本当に親身になってアドバイスしてくれている。しかしながら、物理的な条件が揃わない場合は、効果があった「その物理現象」は絶対に再現しない。

 

●数多くの教則本やホームページ、動画等が存在するが、この「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」についての記載は見たことがない。知っていて言わないのか、本当に知らないのかは、不明である。

 

 

【単純化したモデルの作成】

●まず、音が出る物理的な条件を絞り込み、それぞれの相関関係を整理する。

「何処に向かって努力すれば結果が出るのか」を、論理的に提示していくことが目的だ。

 

●唇を希望する周波数(音の高さ)で振動させるための、前提条件を整理する。

まず、アンブッシャーを構成する各「パーツ」をリストアップし、それぞれの「役目」と「位置関係」について整理する。

 

パーツリスト

・上前歯

・下前歯

・上唇

・下唇

・マウスピース

※可能な限り単純化するために、骨格や口腔内の形状等の他の要因を、ここでは無視する。

 

●これらのパーツは立体であり、「個別パーツ」としても「それぞれの位置関係」としても3次元的に考える必要あある。

つまり、各パーツの「形状」と「配置」は人によって3次元的に異なることが、話を非常にややこしくしている。

(更に言うと、時間軸による「変形」で物理条件が変わっていくので、最終的には4次元で考えねばならない。バテる正体は何?って話。)

 

物事を考えるコツは、なるべく単純化すること。

ここでは、3次元を2次元にすることで、さらに単純化してみる。

 

●2次元化して考えるのに、最も単純な形状は「直線」と「平面」である。

全てのパーツの「形状」と「配置」が、直線状であり平面状である、として考えを進める。

 

単純化した形状と配置は、次の通り。

①上前歯と下前歯は、厚みは一定で、形状は平面で、先端形状は直線であり、上下方向にも平面になるように配置されている。

②上唇と下唇は、厚みは一定で、形状は平面で、先端形状は直線であり、上下方向にも平面になるように配置されている。

③マウスピースのリムの円周上は、元々平面と考えられる。(テーブルの上にマウスピースを立てられるのは、リムが平面だから。)

 

②の上唇と下唇を、①上下の歯と③マウスピースで、サンドイッチした状態が、アンブシュアである。

単純化したこの形には、人によって異なる「歯並びによるのデコボコ」もなければ「唇のデコボコ」もない。

究極の単純化であると仮定して、考えを進める。

 

この時、それぞれの位置関係は次の通りとする。

・上唇と上前歯は面で接触していて、一体化している。

・下唇と下前歯は面で接触していて、一体化している。

・上唇と上前歯の先端の位置は同じ。

・下唇と下前歯の先端の位置は同じ。

・上唇と下唇は接している状態。

・マウスピースは、上唇と下唇の合わせ目を中央に、上下に均等に配置。

 

これらパーツの「形状」と「配置」を図にしたのが下図。

口を横から見た図。左側が楽器側で、右側が口腔内。

この状態を「単純化モデルのデフォルト状態」(初期状態)と呼ぶことにする。


このデフォルトの状態では、実は息が唇を通り抜けることができない。

理由は、真っ平らな上前歯と下前歯が合わさることにより、前歯で息がせき止められて、唇まで到達できないから。

 

逆に言うと、「どこからも息が漏れない」ようになっている。

ここでは、このことが非常に重要であることを覚えていて欲しい。

 

 

 

【口腔内の空気の圧力分布はどの様になっているのか?】

結論を先にいうと、口腔内の空気の圧力分布は、全ての場所で完全に同じ圧力になっている。

口腔内と繋がっている肺の中の空気も、同じ圧力になっている。

 

●「パスカルの原理」をご存知だろうか。

Wikipediaによると次のように説明されている。

ーーここからーー

「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。」という流体静力学における基本原理である。

ーーここまでーー

 

ちょっと何言ってるのか分からないと思うので、風船で考えてみる。

ここで言う「密閉容器」を、風船であるとする。

「風船の内部の空気の圧力は、すべての部分で同じ」と言う事を言っているのがパスカルの原理。

まあるく膨らんだ風船は、どこの部分でも全く同じ圧力が掛かっている。

 

口腔内でも全く同じことが起きる。

トランペットを吹いた時、肺の中の空気を横隔膜を押し上げて圧縮することで、口腔内の圧力高くなることを感じると思う。

肺から口腔内に送られた空気は、風船を膨らます時のように圧縮されており、その時の口腔内と肺の空気の圧力は完全に同じ圧力になる。

同様に口腔内のすべての部分が受ける圧力は、すべての場所で完全に同じ圧力になる。

 

「肺の中」から「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」まで、全ての場所に同じ圧力がかかる。

これが「パスカルの原理」から言えること。

 

 

 

【息は唇のどの部分から出てくるのか?】

結論を先にいうと「物理的に最も弱い場所」から漏れ始める

 

●横隔膜等で肺を圧縮して空気の圧力を上げていき、それに伴い口腔内の圧力を上げていくとどうなるか?

口腔内の空気の圧力に耐えられなくなった「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」のどこかから、息が漏れ始めることになる。

 

●では、「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、いったい何処から一番最初に息が漏れ始めるのか?

息が漏れ始める場所を積極的にコントロールすることは、はたして可能なのだろうか?

 

答えは、「物理的に最も弱い場所」から息が漏れ始める。

 

●具体的に「物理的に最も弱い場所」とはどこだろうか?

・上下唇の合わせ目の形状は直線ではなく、波を打っているのが普通であろう。

・上下の唇の厚みも、場所によって異なるのが普通であろう。

 

上下の唇を閉じたときに、結果的に

・上下唇の「重なり代」が少ないところ

・上下唇の「重なり圧」が小さいところ。

から息が漏れ始める。

 

例えば下図のような上唇、中央が「出っ張り」その両脇が「引っ込み」のM字型の場合、どこから先に息が漏れ始めるだろうか?

上下の唇を閉じた時、「中央部」よりも「その両脇」の方が、「重なり代」も「重なり圧」も小さい、ことがイメージ出来ると思う。

つまり、「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、いったい何処から一番最初に息が漏れ始めるかと言うと、先に息が漏れ始めるのは中央部ではなく、その両脇から先に息が漏れ始めることになる。

 

 

他方、下図のように大きな出っ張りが無い上唇を持つ方も、存在するであろう。

上で設定した「単純化モデルのデフォルト状態」は、このような上唇の形状に近い。

ここでは「単純化したモデル」を使って話を進めるので、こちらの段付きが少ない上唇をイメージしていただきたい。

 

 

 

 

 

【唇の特定の場所から息が出るようにコントロールする方法】

●「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、何処から一番最初に息が漏れ始めるのかを、積極的にコントロールする方法を考える。

上の「単純化モデルのデフォルト状態」では、前歯で息がせき止められて、どこからも息が漏れないようになっている。

 

口腔内の圧力を上げても、前歯に守られている上下の唇には、空気の圧力が「全く掛からない状態」にある。

もしも前歯を取り除いたら、口腔内の圧力は上下の唇の全ての場所に均等に掛かるようになる。

つまり、もしも歯が無ければ、柔らかい上下の唇は、口の中の圧力に押し出されて、外側に出てしまう

 

多くの上級者は「唇は柔らかくせよ」と口を酸っぱくして言う。

ところが、唇を柔らかくしたら、物理的に口腔内の圧力に負けて、唇は外側に出てしまう。
しかし上級者は、実際に唇を柔らかくして演奏している。

ここに大きな矛盾が生じる。なぜそんな事が可能なのか?

 

この矛盾を解消するには、「唇の裏のすべての部分に歯を置き、唇に直接口腔内の空気の圧力が掛からない状態」にすればよい。

※実際には、上下唇の合わせ面の僅かな部分のみに、口腔内の空気の圧力が掛かるように、セッティングする。

 

 

●「単純化モデルのデフォルト状態」を工夫して、必要な形状のエアビームを作る。

次のように、各パーツの「形状」と「配置」を変更していく。

 

 

●下図のように、上前歯が下唇に乗るように「配置」を変更する。

これにより、「硬い上前歯」が「柔らかい下唇」に接触する。上前歯が下唇に刺さるようなイメージ。

これを「事例1の状態」と呼ぶことにする。

下図「事例1の状態」は、「主に上唇を振動させる」モデル例である。

 

●下図はマウスピース側から口を見た図である。

 

・上前歯の「形状」をこの図のように変更し、下唇との間に薄い二等辺三角形を作る。

 

・もしくは、下唇の「形状」をこの図のように変更し、上前歯との間に薄い二等辺三角形を作る。


 

・このような形状にすると、わずかに顎を上下させるだけで、容易にそして確実に「長さL」を、しかも顎の動きに対してリニアにコントロール可能な「エアビーム」が完成する。

(顎を上げると、上前歯が下唇にめり込んでいき、「薄い三角形」が小さくなる。)

 

・この「長さL」に整形されたエアビームが、上前歯の目前に配置されている上唇に直接当たり、振動する上唇の「長さL」を制限することが可能となる。

 

つまり、「長さL」を顎の動きでコントロールすることで、「音の高さf」をダイレクトにコントロールすることが可能となる。

 

・顎を上げて「長さL」が半分になれば、音は1オクターブ高くなる。

・さらに、口腔内の圧力は「薄い三角形」のわずかな部分の唇だけに掛かる。唇の他の部分には、一切圧力が掛からない。つまり、この「薄い三角形」部分以外の唇が振動することはない。

 

・マウスピース無しの唇だけでのバズィングでHi-Bb(935Hz)を出すことも可能である。音階を奏でることも可能。「それが出来るから何?」って言う「意義の議論」は別として、物理的には可能という話。つまり、「マウスピースのプレスがゼロでも、Hi-Bbは出る」って話。その時の音色や音量は、別問題。あくまでも「音の高さ」の話。

 

 

【今後の展開】

直線と平面で単純化したモデルによる「エアビーム」作成の説明は、一旦ここまでとする。

 

現実的には、様々な要因が4次元で複雑に関係し合い、ここで示した「理想的な状態」に近づけるのは簡単ではない。

 

歯の形状と歯並び、唇の形状、歯と唇の関係、マウスピースの形状と歯と唇の関係、などなど、キリがないくらいの組み合わせがある。

今後は、これらの組み合わせについて説明していきたい。

 

 

【その他】

金管楽器の演奏において、呼吸法を含めて息の使い方は大変重要であり、マスターすることが必須である大変重要な事項である。

 

●息の強さや量は、いつどんなときにどうして必要になるのか、ここで簡単に説明しておく。

ここで作られたエアビームは「薄い三角形」である。1オクターブ高くするには、長さLを半分にすれば良い。

 

では、長さLを半分にした時、「薄い三角形」の面積は、どのくらい小さくなるだろうか?

三角形の面積を求める公式は、「底辺x高さ 割る2」 である。

 

答えは、底辺と高さがそれぞれ半分になるので、1オクターブ上がった時の三角形の面積は1/4となる。

 

息が出てくる面積が小さくになれば、口腔内の圧力が一定だった場合、出てくる空気の量は面積減に比例して減る。

出てくる息の量が減ると、音量を決める「唇の振幅」は小さくなる。

出てくる息の量を増やして音量を増すには、口腔内の空気の圧力を上げるしかない。

 

以上の物理的背景から、高い音でも低い音と同じ音量を保つためには、口腔内の圧力を高める必要がある。

多くのプレイヤーが顔を真赤にして、気を失って倒れそうになりながら高い音を吹いているのは、このような物理的な背景があるから。

 

繰り返すが、息の強さや量は「音の高さ」には直接は関係しない。

ここを分けて考えないと、話がややこしくなって、原因にたどり着けない。

 

●参考までに、空気が出てくる面積が小さくなった時、同じ空気の量が出てくるようにするためには、口腔内の圧力をどのくらい上げる必要があるのか、計算してみた。ChatGPTに計算してもらった。ベルヌーイの法則と連続の式を使用。

答えは、息が出てくる面積が1/4になると、元と同じ量の息を得るためには、口腔内の圧力を16倍にする必要がある。つまり2乗の関係になる。

人間の肉体では、難しいのかもしれない。

 

●ここでの事例は、エアビームの形状が三角形の場合の話である。三角形の場合、顎を上げていくと、「長さL」は直線的な反比例関係になる。しかし、息が通る「量」は顎の動きに対して二乗に反比例する。では、もしも三角形の斜辺が二次曲線的である場合、どのように「長さL」と「息の量」が変わるか、と考えながら、自分の前歯を見つめてみるのもよろしいかと。

 

●振動体である唇の「長さL」と「硬さ」を上手くコントロールして、「音の高さ」と「音量」をバランスをよく両立させていくことになる。

さらに、「音色」という重要な課題もある。「音色」は、唇の「硬さ」と相関が深いのは、既知の事実であろう。

 

ーーーー

●「長さL」が小さいと高い音が出ることを、物理的に実験で再現させた動画を撮影したので掲載。音が出るので、再生時注意!

 

「エアダスター」と言う、ホコリを飛ばすスプレー缶から出てくる圧縮空気を、息に見立てて使用。

左手の「人差し指と中指」の間の皮膚を唇に見立てて、圧縮空気を当ててみた。

ノズルの先端の穴径は、約0.5mm。(Φ0.5)

 

唇ではなく、指の間の皮膚でも、「長さL」が小さい空気を至近距離から当てれば、「長さL」を保ったまま皮膚が振動し、高い音が出る。

指と指の間を締めると音の高さは高くなり、緩めると音の高さは低くなる。

エアダスターはホームセンター等で1本500円程度で入手可能。

 

この「ピー」音の周波数を観測すると、1900Hz前後。トランペットで言うと、ダブルHi-Bbくらいの音の高さ。

 

 

●人間の肺は、何気圧までの圧力を作ることが出来るのか?

実験してみた。

手元に自動車用のターボメーターがあったので、息を吹き込んで値を読んでみた。

 

結果は、1.2kg/cm2。つまり1.2気圧。

大気圧が1kg/cm2なので、たったのプラス0.2kg/cm2。

クラクラするまで頑張ってみたが、これが限度。

 

人間の能力では、この程度までしか圧力を上げられないようだ。

肺の中の圧力は、咳をする時には1.5kg/cm2くらいまで行く、らしい。継続して1.5kg/cm2を作るのは、体に良くない、らしい。

 

 

 

 

 

【概略】

音色の可視化その2。

同じ音域の3種類の楽器の音色比較。

トランペット、コルネット、フリューゲルホーンの音色を可視化して比較してみた。

 

 

【使用した楽器】

●トランペット

 :YAMAHA YTR-83 + EM1

●コルネット

 :Besson Sovereign BE928 + Deniswick 3

●フリューゲルホーン

 :YAMAHA YFH-8315G + Deniswick 3FL

 

 

【吹奏条件】

●mf程度の演奏

●五線の第三間のド(実音Bb)

 

 

【結論】

●詳細は、下記の観測波形を参照。

・音色から想像するよりも、ずっと倍音の違いが小さく、驚いた。

・基音と第2倍音のバランスは、どの楽器も同程度で大きくても3dB程度の差しかない。

・第3倍音以降で、やっと差が見られるようになる。

「あの音色の違いは第3倍音以降が効いている」と言うことになる。

 

【考察】

●楽器の重さによる違いか?

・YTR-83とYFH−8315Gは、軽めの楽器。高次倍音が20次以降まで出ている。

・Besson 928は重めの楽器。重めの楽器。9次倍音程度までしか出ていない。

 

●マウスピースの仕様の違いか?

・EM1はカップ径16mm、スロート3.65mm。カップ容積は、小指の爪半分まで入るくらい浅い。

・Deniswick 3と3FLのカップ径は17mm、スロートは4.58mm。カップ容積は、小指の第一関節まで入るくらい深く大きい。

完全に真逆の仕様なので、データ上でももっと大きな差が出るかと思っていたが、意外であった。

 

●常日頃感じてるが、道具の違いよりも、プレイヤーの違いの方が、音色の差は大きいのかもしれない。

例えば、音を聞けば誰が吹いてるのか識別可能。ウォーミングアップの音を聞けば、その人の習熟度がある程度想像できる。などなど。

 

 

【観測波形】

五線の第三間のド(実音Bb)
mf程度
 

●トランペット : YAMAHA YTR-83 + EM1

基音と第2倍音は同程度。第3第4倍音が基音から−10dB。第5,6,7倍音が基音から-20dB。以下数dBずつ低下。

高次倍音は20次以降まで伸びる。

 

●コルネット : Besson Sovereign BE928 + Deniswick 3

基音と第2倍音は同程度。第3倍音が基音から−5dB。第4倍音が基音から-20dB。以下10dBずつ低下。

高次倍音が非常に少ない。非常に重い楽器だと感じるが、その影響か?

 

●フリューゲルホーン : YAMAHA YFH-8315G + Deniswick 3FL

基音と第2倍音は同程度。第3倍音が基音から−15dB。第4,5,6倍音が基音から-20dB。7次以降が急激に低下。8,9次が急降下。

高次倍音は20次以降まで伸びる。

 

【測定条件】

●測定機:iPhone6 内蔵マイク

●測定に使ったアプリ:Audio Frequency Analyzer●測定時期:2017年2月頃

 

【その他】

・それぞれの音色は、息の量、音の大小、楽器の特性、プレイヤーの個性等で、大きく変わるもの。なんとなく傾向が分かる、と言った程度のデータである。

・スマホのアプリの記録ボタンを右手で押す必要があり、演奏はすべて片手運転。

・測定位置は、ベルの直近。スマホに右手が届くギリギリの遠さ。

・波形のピーク高さは、時々刻々と変化。幅で5dB程度は振れていて、記録ボタンを押した瞬間のデータが記録されている。何度か記録して、平均的と思われた記録データを提示。