いよいよ来週に来日公演を行うポール・マッカートニーだが、来日公演を前に日本独占でロング・インタヴューに答えてくれた。1966年のビートルズの唯一の来日公演から51年、一昨年に立った日本武道館のステージに深い感慨を覚えたとのことで、
今回もう一度、日本武道館に立つことを決めている。
そんな日本武道館公演への思い、リリースから50年を迎える
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』について、音楽ビジネスの現在、そしてイギリスのEU離脱について、ポールは非常に貴重な話を聞かせてくれた。
来日公演のためのリハーサルを行う合間に答えてくれた
ロング・インタヴューをお送りする。
――2年ぶりの日本武道館公演はどんな感じになるので
しょうか? なぜ再び日本武道館を会場に選んだのですか?
「日本武道館についてはすごくいい思い出があるんだ。
2年前にも日本武道館で公演をやったし、1966年にビートルズとして初めて来日した時も日本武道館だったし、日本武道館にはとても思い出があるし、楽しかったし、素晴らしいところだよね。
最初に来日した時というのは日本のファンも今とはかなり状況が違っていて、いい意味で日本のファンは最近になって変わって
きたんじゃないかと思う。初来日の時は日本のみんながすごく
バンドを尊重してくれるところがあってね、コンサートの間、
すごく静かだったんだ。全然、自分たち以外の音が聴こえない
くらいで、すごく静かにみんな聴いてくれたんだけど、最近は
ファンの方たちもいい意味で変わってきて、いい意味で賑やかに聴いてくれて、本当にパーティーをしてるような気持ちを持ってくれてるんじゃないのかな。そうやって静かに聴いていてくれた日本のファンも、今のように賑やかに聴いてくれる日本のファンも、両方とも僕は大好きなんだ」
――日本武道館には独自の雰囲気などがあるのでしょうか?
「初来日をした時は日本の文化についてまだ詳しくなくてね。
だけど、いろいろと日本の文化に触れるにつれて、いわゆる
西洋、ヨーロッパやアメリカとは違うところが日本にはあると
分かったんだ。日本はすごくきれいな国だし、いいところだけど、初来日の時にすごく驚いたのは、日本の女性の方が自分たちに席を譲ってくれたり、椅子を動かしてくれたことがあってね。それなんかはまずイギリスではあり得ないことだから、
このことを当時イギリスにいるガールフレンドに伝えて、
君たちも見習ったらどう?って言ったんだけど、
それは見事に断られたよ(笑)。
日本武道館というのはそもそも日本の武道を行うところだった
わけだけど、ただ初来日の時は自分たちのようなロック・ミュージシャンが武道をやっている神聖な場所でロックンロールをやるなんていかがなものか?という、あまりこころよく思ってなかった人たちもいたと思うんだ。けれど、そこで僕たちが楽しく
ライヴをビートルズとして演奏したことによって、もしかしたらそれがきっかけになって、多くのロック・バンドが武道館で
演奏することになったと思うんだ」
――5万人の東京ドームと1万人の日本武道館で
演奏する違いはありますか?
「東京ドームでやるのも好きだし、日本武道館でやるのも
好きだし、会場に大きさにかかわらず、どんな会場でやるのも
好きなんだ。ただ、東京ドームのほうが観客の人数が多いからね。多くの方たちに来てもらえるわけでね。
それに東京ドームのように会場が大きいと、大掛かりなプロダクションができるからね。“Live And Let Die”のような曲で派手な演出をすることができるよね。といいながらも、武道館のように親近感のある会場でやるのも好きなんだ。
実は去年、カリフォルニアのパームスプリングスの近くの
かなり小さな小屋でもやったんだ。だから、意外と小さな会場でやることはあるし、それはそれで大好きなんだ。
だから、両方でやるのが好きなんだ」
――今回の日本公演でサプライズはありますか?
「まだ日本のファンに観てもらえてないプロダクションがある
んだ。それを観てもらえるのを楽しみにしてるよ。もちろん、
今までやってきた、みんなが大好きな曲もやるつもりだよ」
――来月には『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・
クラブ・バンド』の50周年記念エディションがリリース
されますが、このアルバムはあなたにとってどのような
意味を持っていますか?
「すごいことだと思うよ。あの作品を作ってから50年が
経つけれども、自分にとっては5年くらい前に作ったような
気持ちにしかなれないんだ。実際に歴史を刻んだ作品だと
思うし、仲間とすごく楽しく作れた思い出もあるし、
自分にとって“特別”と思える作品だと思う。
何より嬉しいのは、50年経っても今でも多くの人がこの作品を
聴いて楽しんでくれていることでね、素晴らしいことだと
思ってる。50周年記念盤は音が以前よりもちろんクリアに
なっているし、さらにいい作品になったと思う。
今回の50周年記念エディションが出来たことは嬉しいし、
ぜひ多くの人に聴いてもらいたいね。
とにかくこのアルバムは自分にとって思い出深いアルバムだよ」
――今回の日本公演でも『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』からの楽曲を演奏しますか?
「演奏するよ」
――ツアーも音楽制作もエネルギーを使うと思いますが、
どのように体調管理をしていますか?
「自分はヴェジタリアンで、食事にすごく気をつけてるよ。
毎日1時間くらいエクササイズをしてるしね。
だけど、バンドのメンバーと一緒に演奏することが
自分にとって一番のエクササイズだと思ってるんだけどさ」
――現在、ニュー・アルバムを制作してるんですよね。
「今ちょうど半分くらい出来たかな?
いろいろなタイプの曲が入ると思うよ。
プロデューサーのグレッグ・カースティンのことは大好きだし、すごくいいプロデューサーだと思う。みんな、すごく楽しく
作業できていて、今4曲ぐらいできてるんだ。
今年中にアルバムが完成するんじゃないかと思うけど、必ずしもいついつまで仕上げなきゃいけないというわけではないし、
やってみないと分からないこともあるからね。
でも、一つの目安として今年中に完成させる予定だよ。
完成した暁には日本のファンにも聴いてもらえたらと思うよ」
――音楽業界の未来をどのように考えていますか?
「音楽業界の未来は明るいと思うよ。
どういう音楽であれ、みんな音楽を必要としていると思う。
ダウンロード、CD、アナログ盤、ストリーム、ラジオなど、
どういうものであれ、人々はいい音楽というものを聴きたがっていて、音楽を必要としていると思う。そういう意味では、
どういう形であれ音楽には明るい未来があると思うんだ」
――今回の来日で楽しみにしていることはありますか?
「日本に行ってみないとわからないし、
今回どれくらい自由な時間があるか分からないんだけどね。
でも、日本が好きだし、日本の文化も好きだし、
日本の人はこういう風にするんだ、ああいう風にするんだ、
と見ているのも興味深いんだよ」
――今年のグラミー賞で、多くのミュージシャンがアメリカのドナルド・トランプ大統領の新政権に対して発言をしていました。そのことに関してはどう思いますか?
「アメリカやヨーロッパ、日本は自由な国だよね。
自由に発言できるわけでさ。
民主主義であることはすごくいいことだと思ってる。
なかには自由に発言できない国もあるわけだからね。
上のほうからこういうことは言ってはいけないとか、言われた
ままに発言しなければならなかったり。そんな国もある中で、
自分は自由に発言できる国に生まれ育った。それは意味のあることだし、自由に発言できるということは健全なことだと思うよ」
――イギリスのEU離脱に関してはどう思いますか?
「正直、ちょっと様子を見てみるしかないのかなと思ってるんだ。イギリスのEU離脱は誰もが予期していなかったことで、
離脱に賛成だった人も、実際にこうなったことに驚いたんじゃ
ないかな。イギリスは他の国から指示されて、その通りにする
ことに少し懸念を感じたり、あまり快く思っていなかった部分もあると思う。シリア難民がイギリスに入ってくることに少し
不安があるとか、 いろいろなことがあって、EU離脱に繋がったと思うけど、多分良いことも悪いこともあると思うんだよね」
――では、最後ですが、あなたの音楽に対する情熱は
どこから来るんでしょうか?
「どういう分野であれ、自分が情熱を持っているものに対してはエネルギーを費やせると思うし、それは難しいことではないと
思うんだ。友人で画家のデヴィッド・ホックニーが
『自分が好きなことをやっているとエネルギーが湧いてくる。
自分が絵を描いている時は25歳の時に戻れるような気がする』
と言ってたよ。情熱を持てるものに対してはエネルギーが湧いてくる、それは自分もそうなんだ。音楽に対して情熱があるから
音楽を作りたい、音楽をプレイしたいという気持ちが湧いてくるんだよ」
ワン・オン・ワン ジャパン・ツアー2017
2017年4月25日(火)日本武道館
2017年4月27日(木)東京ドーム
2017年4月29日(土)東京ドーム
2017年4月30日(日)東京ドーム