PerfumeとMåneskin | 全身蜂の巣

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煩悩を持て余せ!

 

 

 

ほんとうに上手いバンドは、スタジオ盤音源よりもライブ演奏の方が魅力的。

1970年代に、良い音楽バンドを判別する指標としてよく言われていたことだ。

 

プロトゥールスなど、DAWにて音源制作することが普通になった現在、細かなミスや時間的なズレは何事もなかったように簡単に修正が可能だ。

言い換えると、スタジオ盤の音源は魅力的であるが、ライブに足を運ぶと少々がっかりするバンドが増えた、と言うと、言い過ぎだろうか。

 

老害の愚痴だと思って聞き流していただきたい。

 

 

 

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いろいろと多方面で話題になっている、Måneskin。

イタリアの若手バンドである。

快進撃が続いている理由のひとつに、ライブパフォーマンスの素晴らしさがある。

 

↓こちらが出世作のスタジオ音源

 

「Måneskin - I WANNA BE YOUR SLAVE」 (Official Video)

 

 

↓同曲の2023年のライブパフォーマンス

 

 

誰が見て、聴いても、オーディエンスと対峙しているライブパフォーマンスのほうが、公式のMVよりも格段に魅力的な音に聴こえる。

ライブならではの一期一会の緊張感が観客の声援と呼応し、演者の音に生々しいエモーションが宿っている。

音楽の評論などでよく使われる言葉、

 

 ”初期衝動”

 

または、音楽ライブの現場で時々言われる、

 

 「マジック・ナイト」

 

・・・のような現象である。

 

 

 

 

 

 

Måneskinというバンド、メンバーはたしか22~24歳、しかしながら現代の若者らしい研ぎ澄まされた抜群のタイム感、リズムのグルーヴをバンドメンバー全員が持っている。

 

楽曲自体にも、先人の残してきた偉大な楽曲へのオマージュや影響を感じ取れるが、具体的に説明せよと言われると上手く言い表しにくい。

でも、オマージュは随所に感じられるし、一言で片づけるなら”ミクスチャー”と言ってしまいたくなる音楽性を持っている。

でも、なぜかトラディショナルな佇まいなのに、新奇性がどこかにある。

 

 

 

 

 

 

楽曲の創りも上手いが、プレーヤーとして見ても、簡単そうなシンプルなフレーズの演奏が、なんかカッコイイという上手いミュージシャンしか持ちえない条件もクリアしている。

 

ここを、もう少し分かりやすく解説してみよう。

 

 

 

 

 

 

楽器の初心者や楽器を嗜んだことのない一般音楽リスナーに向けて、音数の多い複雑なフレーズを演奏してみせると、リズムが少々不安定でも”上手い演奏”という感想を漏らしてくれる。

しかし、ほんとうに難しいのは、誰でも簡単に演奏できるフレーズを奏でた時に、

 

 「上手いっ!」

 

と多くの人に言ってもらうことだ。

 

 「より多くの人に、良いと言ってもらうことを諦めないこと=普遍性」

 

こんな偉人の言葉も思い出す。

 

この、Måneskinというバンドのライブ、ステージ上に派手な装飾があるわけでもなく、シンプルに楽器が並んでいるだけだ。

もっと言うと、その並んでいる楽器は、1960年代後半から70年代のバンドが使っていたようなオーソドックスでトラディショナルな機材である。

なんとなく、1970年代に人気を博したバンドのステージ上の風景のようにも映る。

 

 

 

 

 

 

 

ベースのヴィクトリアさんが使っている”DANELECTRO  LONGHORN BASS”とか、シンプルの極みのようなエントリーモデルのベースである。

 

奏でるベースラインは、あくまでも楽曲のリフレインを崩すことなく、単調に繰り返すベースパターンが多いのだが、とても良いグルーヴで楽曲を支えている。

 

 

 

”DANELECTRO  LONGHORN BASS”

 

 

ベーシストが女性、それもバイセクシュアルを公言しているところなど、ルックスの整った人がジェンダーの問題を提示すると説得力が増す。

そんなところも”新世代”を感じさせる。

 

 

 

”参考 Ampeg SVT Blue Line”

 

 

 

 

 

ギターのトーマス・ラッジさんもトラディショナルなストラトキャスターやテレキャスターを好んで使っているようで、そのギターを英国製ギターアンプ、Marshall の古いモデルのスタック(2段重ね)に突っ込んで基本的なサウンドメイクを行っている。

 

スタイル的に、レッド・ホット・チリペッパーズのジョン・フルシアンテ氏などと比較されていることが多そうだが、私個人の見解は異なる。

もっと基本に忠実なギタースタイルであり、エモーショナルなリズム感なれど、アバウトな音は1mmも漏らさない正確なギタースタイルだ、ほんとうにギターが上手い。

新たなギターヒーロー像は、もしかすると正道に回帰してゆくかもしれないと思わせてくれるギタープレイだ。

 

 

 

”参考 Fender 1963 Stratocaster”

 

 

”参考 Marshall 1987+1960Angled”

 

 

ドラマーのイーサン・トルキオさんもLudwig 、それもクリアーのVistaliteシリーズなどを好んでいるようだ。

この方のリズム感も抜群である。音数の少ないシンプルなドラムパターンだけで良いグルーヴを感じさせることはとても難しい。

そういう意味でハイテクニカルだと感じる。

 

 

”参考 Ludwig Vistalite”

 

”参考 Ludwig Vistalite amber を叩く70年代のJohn Bonham氏”

 

 

 

このバンドの”音”自体、とてもシンプルだ。

シンプルで良い楽曲と感じてもらうこともとても難しい。

シンプル=簡略化、と捉えられると評価は下がってしまうし、

シンプル=簡素化を行うには、日本の文化である俳句表現のように、無駄を削ぎ落す一段上のセンスを問われる。

ともあれ、絶妙なバランス感をもった若手バンドであることは間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

ここまで、多くのPerfumeファンの方を置き去りにしつつKeyを叩いてきた。

お待たせした、ここからが本題である。

 

 

 

 

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   (Perfume)

 

①規模雄大な舞台装置などなくとも、演者3人のダンス自体が高度な舞台装置となり得る

 

②今でこそ、派手な演出チームを帯同することが多いが、初期の舞台は3人のみだった

 

③日本文化が得意とする”引きの美学”を感じさせる”留め”を含んだ振付演出が多い

 

④リフレイン(繰り返し)のテーマから着想を得たようなシンプルな楽曲が多い

 

⑤中田氏謹製の楽曲自体、ジャンルの連想を放棄したような多様さを感じさせるレパートリー

 

⑥ライブステージに於いて、感動を伴った最大の魅力を発揮する

 

 

 

 

基本、シンプルだけれども魅力的、という”Perfumeっぽさ”が随所に存在するPerfumeさん。

頭角を現し始めた頃、

 

 「斬新だけど、奇蹟のように素晴らしい」

 

と、各所の識者に言わしめた。

しかし、その理由を明確に言語化した評論は見当たらない。

私見だが、

 

 ”無駄を削ぎ落したシンプルな魅力”

 

という、芸術表現の中で一番難しいステージに挑み続けているような姿に見える。

 

 

 

 

物事を複雑化することは、ある程度の”知識”があれば可能ではないか。

それよりも、大切な部分を見極めて残し、無駄を省いてゆく”簡素化”という行いこそが芸術表現ではないのか。

その行いには知識だけでは補えないセンスを問われるはずである。

 

 

「ほんとうの芸術は、芸術であると自己主張しない」

 

「自己に卑近なものから美を見出す、自主的で素直な美感を持たない者には、真に世界的な訴        えを持つ表現は成し得ない」

 

 

識者が残された芸術論が胸を打つ。

そして、

 

 「より多くの人に良いと言ってもらうことを諦めない姿勢こそ普遍性」

 

そんな、当たり前のことに気付かせてくれたのが、我らがPerfumeさん達ではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

形態や業態、国籍は違えど、そんなことを久しぶりに思わせてくれたバンド、これは極個人的な想いだとは思うが、

 

 ”イタリアのバンド、Måneskinさん”

 

そのライブパフォーマンスを眺めていて、

ふと、Perfumeさんの姿に重なる部分を感じたのである。

 

あなたは何を想っただろう。

 

 

 

 

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・・・「クダクダしかったな」・・・とお思いのアナタ・・・

 

 

  ”シンプルに表現できるのは一部の一流の人のみ”

 

 

・・・「体現して見せたわけだなっ」