「ライ麦畑でつかまえて」の続編を勝手に書いたら | 商品・製品を守る知恵 by弁理士バッカス

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先日の海で精神的には回復したのですが、無理して波乗りをしたせいで、腕の痛みが増してますウキャー!

精神的に救われたからよしとしたいところですが、きつい…


さて、他人が書いた小説の続編を別の人が勝手に書いたら、著作権の侵害になると思いますか?

勝手に人の小説の続編を書いたら駄目でしょう~って普通に思いますよね。

でも、これ同人誌などの世界ではよくやられていることなんです。


まさにこういう事例の裁判がアメリカで進行中です。

サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」という小説をご存知でしょうか?

大学のときの英語の教材とされていたので、なつかしい小説なんですよね~

って、そんなことがメインではありません!


サリンジャー以外の人が本人に無断で書いた続編を著作権侵害として出版の差し止めを求めた裁判で、差し止めの仮処分がくだされました。

処分の詳しい内容がまだ分からないのですが、どういう理由で差し止めを認めたのかが非常に気になります。

ニュースでは、この続編がパロディーか批評にあたるかを争点としていると伝えているので、著作者人格権(同一性保持権)の問題として争っているのかもしれません。

ちなみに、パロディーや批評であることが明白なら、著作者人格権が及ばないと解釈されています。

ですが、これが著作権侵害に該当すると判断したなら、その判断は妥当だと思いますか?

これ、実は、二つの考え方に分かれていて、勝手に続編を出すのは、著作権侵害とする説もあれば、非侵害であるとする説もあり、日本ではまだ判例がないと思います。

著作権侵害とするのは、原作を勝手に改変したという著作者人格権の侵害と判断するものが主流でしょう。

ちなみに私は非侵害だと考えています。


というのは、小説の続編の場合、ストーリーをまねしたわけでなく、設定を流用したということになります。

一方、著作権は、著作物に関する著作者の権利を守る法律で、著作物というのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)で、創作と表現が求められます。

ところが、キャラクタや設定はあくまでアイデアであって、表現されたものではないので、著作物には当たらず、著作権は発生しません。

となれば、勝手に続編を書いても著作権の侵害にはなりませんよね。


なので、日本で差し止めを認める可能性があるのは、続編と勝手にしたことで、サリンジャーの名声へのただ乗りってことで不正競争防止法によるのかなと思ってます。


もっとも、漫画のキャラクタの絵をまねて続編を書けば、これは表現されたものの真似なので、著作権侵害になるのでご注意を!

著作権って本当に難しいですね汗