「マサズ劇場」その111 取り柄 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。

 

「岩田くん、MP1の地板と受け板、何セット出来てる?」

 

「えーっと、、今8個分ですね。 全部コタ(虎太郎)に渡してありますよ。」

 

「了解、8個分ね。失敗することも考えると、あと3セットくらいは作っておくようかな。」

 

「そうなんすけどー、それより香箱とか鉄パーツの方が間に合わなくなりそうな気がして、今、そっちやってるんですよ。」

 

「そうか。まあなんとか平行してやってかないとしょうがないなー。」

 

 

えーっと、虎太郎、虎太郎と。

 

 

「虎太郎、岩田君から受け取った地板と受け板のセット、どんな具合?」

 

「とりあえず全部バリを取って、穴石の穴もリーマー通してある状態です。 あとピニオンも一通り個数分は熱処理と研磨はしてあるんで、あとはホゾの加工ですかね。」

 

「じゃあ手が空いたところでホゾもやっちゃってよ。」

 

「うーん、でも今やってる凪の文字盤がまだ相当掛かりそうだしケースの方もやらなきゃなんで、、当分そっちはできそうもないんですよ。」

 

「まあそうだよな。 うーーん、どうすっかな、。オレも当分テンプで手一杯だしなー。」

 

 

早いもので、気がつけばもう6月も末。

 

5月にご注文をいただいたオリジナルウォッチの納品まで、残すところ10ヶ月となった。

 

まだまだ先なんて思っていたけど、、具体的に計画を立てだしたら、結構時間がないことがわかってきた。

 

 

Nayutaモデルの納品が間近な篠原と佐々木は、まったく手が空かない。

 

両方の時計の面取り仕上げをやってるアレックスはてんてこ舞いだし、残る真下は定期整備で手一杯。

 

どうやっても、数か月先までみんな次の段階には入れないか、。

 

 

今期の納品分だけでもそんな状態なのに、、来年は新商品も計画している。

 

定番の「凪」と「蒼黒」に加え、MP1を搭載した新たなラインナップを少なくとも一つ加える計画でいて、すでにケースはプロトタイプができているのだが、、。

 

まあでも、、なんとかなるだろ。

 

 

いざとなった場合の最終手段は、自宅工房での追い込み。

 

つまり、私の担当しているテンプ、アンクル、ガンギ車の仕上げや調整を帰宅後や休日の作業に回して、日中はみんなの手が回らない作業を私がやればいいのだ。

 

 

おかげさまで私は、昔から丈夫さだけが取り柄。

 

時計屋になる前はいつ死んでもおかしくないようなことをやっていたのに、骨を折ったこともなければ病気らしい病気をしたこともなく、還暦を過ぎた今でも、少々の徹夜ではへこたれないほど元気だ。

 

何年か前に総合検診にいった際には 「甲種合格。君は丈夫そうな身体してるねー。」

 

戦中派のおじいちゃん先生に太鼓判を押されてしまったほど (笑)

 

その点に関しては親に感謝するべきだろうと思うが、、そんなわけで、いつもたいへんだーたいへんだーと騒いでいるわりに、最終的にはなんとかなると心の隅で思ってしまうのだ。