吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。



ゴールデンウィークを過ぎると、いよいよ暖かい日が多くなる。
 

帰り道の冷え込みもなくなって、すっかり上着がいらなくなった。

 

「この時計は間違いなく直りますよ。まったく問題なし。」
 

「あー、よかったー。 前に、部品が無いから直らないって言われたんですよ。」
 

あるご婦人がお持ちになったのは、1940年代、OMEGAの腕時計。
 

まだまだしっかりした作りをしていた頃の手巻きで、いくらでも直せる時計だった。

 

「それにしてもホント偶然、、吉祥寺の時計屋さんだったんですねー。 ビックリしちゃった。」
 

「え、、?」
 

、、、一体、どういうことだろう?
 

初対面の方なのに、、どうして?
 

 

「私、よくお見かけするんですよ。 あはは。」

 

そのお客さまは、そう言って屈託なく笑った。
 

 

え? なぜ?

 

ポカンとする私に「だっていつもサスペンダーしてるじゃないですかー。 すみません、私も国立なんですけど、前からうちの主人と、あのサスペンダーの人いつもこの辺歩いてるねなんて言ってたんですよ。」

なるほど。

 

時計の修理を持ち込んだ店が、たまたま地元で見かけるオジサンの店だった、ということか。

 

ようやく合点がいった私も、思わず笑ってしまった。
 

 

 

確かに私は、いつもサスペンダーをしている。

 

上着のいる時期は別として、暖かい時期はいつもシャツにサスペンダーでウロウロしているから、、何度か見掛けると、目につくようだ。

 

 

そう言えば、以前、アパレルの仕事をしている方に「中島さん、サスペンダーっていうのは下着みたいなもんだから、本当はそのままで出歩くもんじゃないんですよ。」と言われたことがあった。

 

言われて見れば、、、サスペンダーとシャツだけで歩いている人は、あまり見たおぼえがない。

 

でもファッションに疎い私は、今も結局そのまんま。

 

そのせいか、あちこちで知り合いから「この間見かけたよー」なんて言われることが多いのだ。

 

 

サスペンダーをするようになったのは、30年くらい前だったか?

 

きっかけは、銀座の百貨店催事。

 

馴れないスーツ姿で店頭に立っていると、なぜかズボンが下がってシャツが出てくるのが気になって仕方ない。

 

で、しょっちゅうシャツを直してバンドを締め付けていたら、見かねた同業者が「サスペンダーするといいよ」なんて教えてくれて、、そのまま洋服売り場に行って、買ったのだった。

 

 

以来、仕事の日は常にサスペンダー。

 

こんな楽なもの、二度と手放せるもんか。

 

 

いつの日か、オリジナルウォッチが成功してマサズ パスタイムが有名になった時(?)、、、サスペンダーがトレードマークになったら面白いかなーなんて、妄想しているところなのだ。

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

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さてさて、ゴールデンウィークもいよいよ終盤。

 

休暇明けの岩田は昨日前線に復帰して、替わりに辻本と虎太郎が休みに入った。

 

私も適当なところで一日くらいはと思ったが、、、どうも雲行きが怪しい。

 

 

この春は超難物の修復依頼が数点入り、スケジュールが押しつつある。

 

「キリのいいところで一回手止めて、この時計頼むね。」

 

オリジナルムーブメントの部品製作を継続していた岩田に任せたのは、300年物の英国製クロックウォッチ。

 

毎正時、それから15分毎に鐘を鳴らす機能のある古い時計で、外装の状態はいいものの、機械的にはかなりヤバい。

 

 

何時になってもかまわず鐘が鳴り続け、放っておけばそのまま時打ちのゼンマイが解けて止まり、時計も止まる。

 

例によって他所の修理で部品を取り外され、何点もの部品が無くなったまま返却された状態で入ってきたから、、まずは残った部品の形状や寸法をキーエンスで計測しつつ、「こうであったろう」という想定の下に、不足した部品を設計・製作していくという作業の連続。

 

さすがにこのレベルの仕事になると、今のところ岩田以外では難しい。

 

 

私はと言えば、風変わりなミニッツリピーターや古いクロノメーターなんかが続いて他には手が回らないし、休みに入った辻本も、休み明けにはケースや文字盤の製作、その他ケース修理も目白押しだ。

 

それに半数の連中は、まだこれから休暇を取ることになるし、、。

 

 

仕方ない。

 

「間に合わなくなりそうだから、来週から修理に戻るぞ。」

 

「あ、、分かりました。へへへ。」

 

ちょっと前からトゥールビヨンムーブメントの仕上げを再開していた佐々木も、修理現場に逆戻り決定。

 

当面、時計製作に専念するのは篠原一人ということになるが、いよいよとなれば、ヤツも戻さないといけないかも。

 

 

やっぱり休暇は無理かな~、。

 

後ろ髪をひかれながらも、、オヤジは諦めの週末なのだ。

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

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「トゥールビヨンの歯車は切っておきました。 土台から切り離して仕上げればおしまいです。あと、パテックのミニッツリピーターの精度試験はテラ(寺田)に引き継いであります。」

 

「オーケー。 それじゃあ楽しんで。」

 

 

一昨日から岩田はゴールデンウィークの休暇に入り、休み前に歯切りを終えたトゥールビヨンのゴールドトレインは、佐々木に託されている。

 

先週からこのムーブメントの仕上げを再開している佐々木は、現在、キャリッジのポイジング(片重りの解消)を終えたところで、このあと歯車の仕上げ→ピニオンの取り付けと進める流れ。

 

去年からある程度進めてはアンティーク時計の修復が入り中断、再開しては中断を繰り返してきたこのトゥールビヨン懐中時計も、ようやく少し先が見えて来た感じだ。

 

 

一方で、製作中の腕時計ケースの防水テストをクリアした篠原は、テンプとテンプ受け、その他のスティールパーツを製作中。

 

こちらは、比較的順調な進行状況だが、、、私はといえば、、完全自社製の腕時計のケースの部分的な設計変更→試作を虎太郎(清水)と進めつつ、あいかわらずムーブメントの材料調達で苦戦している。

 

 

国内で調達するルビーの穴石はともかく、ヒゲゼンマイの調達先であるドイツの製造メーカーは、先進国によるロシアへの経済制裁の影響を、まともに受けている。

 

耐磁性のある合金製のヒゲゼンマイにはパラジウムが使われるが、このパラジウムの価格高騰、それと同時にロシアからの天然ガスの供給が制限されることによる電力の急激な値上がりがあって、、ヒゲゼンマイの値段は、一向に提示されない。

 

 

もっとも、経済制裁の影響が出ているのは、ドイツだけではない。

 

有事に強い金ということで需要が強まり、金の価格が高騰。

 

うちで扱っているようなアンティークの時計はK18やK14のケースに入っているものが多く、当然、金時計の相場も上がる。

 

「店の時計の価値が上がっていいじゃない」なんて方もいるが、、、金の値段が上がったからといって、おいそれと店頭の金時計の値段を上げるわけにはいかない。

 

海外での取引き相場だけが上がって、時計が仕入れにくくなるだけなのだ。

 

 

お金の話しだけじゃない。

 

金の高騰で、特にアメリカでは時計の金ケースを潰してお金に替えようとする動きが強くなり、100年以上も温存されてきたアンティークウォッチのケースが、どんどん剥がされているようだ。

 

ひどいことをするなぁという声も聞こえて来るが、、、無理もない部分もある。

 

例えばここに、20万円の値札がついたまま売れ残っているK18の金時計があるとして、、、仮にこの時計のムーブメントを外したケース単体の重量が40gあるとすると、ケースには実質的に、約¥6000(K18の1gあたりの価格)×40g=「¥240,000」の価値があることになるわけだ。

 

ケース単体で¥240,000の価値がある時計を¥200,000で売ろうという業者はいないが、、、かといって¥200,000でも売れ残っている時計の値段を上げたら、なおさら売れない。

 

だからこの場合、ケースを¥240,000で金の引き取り業者に売り、中身の機械も、いくらかで売るだろう。

 

結局、ケースの揃ったまともな時計はどんどん市場から姿を消してゆくという、アンティーク時計ファンにとっては、実に憂うべき状況になっている。

 

 

影響と言えば、ニッケルもそうだ。

 

うちのオリジナル時計の地板や受け板はニッケルムーブメントだけど、これは洋白(洋銀)と呼ばれる金属。

 

いわゆる純ニッケルではなく銅とニッケルその他の合金なのだが、、いずれにせよ、ニッケルは不可欠。

 

ちなみに、ニッケルの世界最大の採掘地はロシアの鉱山だから、ここからの供給が止まることによって、ニッケルが高騰しているのだ。

 

 

実際、先日材料の追加注文を入れたところ、数か月前と比べて、価格は大幅に値上がりしていた。

 

更に先方から、「今月中の注文まではなんとかこの値段で出せるけれど、来月の分からは更に上がりますし、もしかすると、品物自体が入って来なくなる可能性があります」との知らせが入り、、慌てて残りの在庫を全て買い込んだ。

 

なにしろ、やっとこさ自社製ムーブメントが完成しても、この先継続して作れないのでは話にならないから、、。

 

 

巷で言われている通り、こういう状況はかなり長期化する可能性があるようだけど、、まあそれは仕方ない。

 

今も戦地で酷い目にあっている人々のことを想えばこの制裁に反対する気にはならないし、むしろ、もっとやってしかるべきだと思っている。

 

 

戦争、コロナ、ハイパーインフレ、、この先、日本は、世界は、いったいどうなるのか?

 

色々な意見や分析が報道されているが、、ハッキリとした予測は、誰にも立てられないだろう。

 

当然、私に分かることなどないわけだが、、分からない以上、むやみに心配しても仕方がないことだけは分る。

 

 

あ、経済制裁といえば、。

 

マンボーが明けて以来、それまでずっと控えていた居酒屋通いが復活し、小遣いの消費が激しくなった。

 

ちなみに我が家は完全なお小遣い制で、カミさんから給料日にひと月分の小遣いが全額支給されるシステム。

 

でも、先月末、どうしてもタバコ代が足りなくなって緊急支援を要請したら、制裁として、今月から一括支給を停止された。

 

 

「あのさ、カネ、ないんだけど、。」

 

「ハイハイ。 とりあえず、これだけね。」

 

数日分の額がチョコチョコしか支給されないからいつも財布がペッタンコで、、寄り道すると、心細くて仕方ないのだ。

 

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

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