石田 衣良
眠れぬ真珠

  45歳の女性版画家と、17歳年下の青年との恋愛物語。


 なかば「ファンタジー小説ね」と思いながら読んでました(笑)。だって、女性が年上の17歳差カップルは、そうそう出来上がらないと思うし。


『愛は、経験じゃない。

恋は、若さじゃない。』


 と、帯にありますが、そんな感じの小説。

 でも、年上の女性が年下の男性に惚れられていやーん困っちゃうわ、な小説ではなく、かといって、こんなオバサンじゃ……とグジグジやってるだけの小説でもなかったです。

 そういう部分もあれども、年上の女性としてのリアルな悩みが、しっかりと描かれてます。

 作者が男性であることを忘れそうなほど、リアルに。


 ただ恋愛のことだけが描かれているのでもなく、どう生きるかということまで考えちゃう内容だと思いました。


 しかし、17歳下。

 ……というと、自分が高校生のときに赤ん坊だった人ってことですよね。

 そう考えると、ある意味人生のファンタジーなのかも。

 だけど、絶対にこういう恋愛があり得ないともいえないこの世の中。


 この小説、“あり得なさ加減”と“リアルさ加減”が絶妙な混ざり具合だと思いました。

川端 裕人
銀河のワールドカップ

 ワールドカップが開催されてるし……と思って読んでみました。
『平成のサッカー小僧小説の決定版』と帯に書いてあったので、少年が主人公のお話なのかなぁと思ったら、ちょっとした過去を持つ元・プロ選手が主人公でした。

 なので、もしもこれが漫画だとしたら、『少年ジャンプ』とかの少年誌じゃなくて青年誌っぽい。

 といっても、元プロ選手の花島を中心に、他の登場人物視点で語られる部分もたくさんでした。
 多少、視点の移り変わりが激しくて落ち着けない部分もあったのですが、それぞれの思いが見えるので面白かったです。

 これ、話としてはあり得ないだろうと思うのですが、そんなの抜きにして面白かった!
 少年・少女らが、サッカーで日本一、いや世界一、いやいや宇宙一になるんだと言いながら、突き進んでいく様子は爽快です。

 サッカーの試合シーンもたくさんあるのですが、ルールとかわかんないし言葉もぜんぜんわからないけど、面白い。

 なにより、登場人物のうちの一人、翼君がいい。
 サッカー小説で、翼君。

 もうこれだけで楽しくてしょうがなかったです。

恩田 陸
チョコレートコスモス


 読む前に、評判は各所から仕入れてました。
 書店サイトだったり書評サイトだったり。
 演劇物で、あの有名なマンガを彷彿とさせる……というのをよく見かけたので、ある程度予想しながらページを捲りました。

 や、マジでこれ、恩田版・ガラスの仮面だ(笑)。
 
 稽古で即興をやるシーンで、あるキャラクター(亜弓さんっぽい人)が、

 ――受けてたったわ。

 みたいな所があったり。
 百合の花でも噛みしめるのかと思いました。
 (実際はキャラクターの台詞とかじゃなくて、地の文で表現されてる箇所なのですが)

 なんか、果てしなくあり得ないっぽいんだけど、読んでいるうちに『あり得るのか……』と思わせられる。
 真実の中にちりばめられた嘘は見抜きにくいってヤツなのかな。

 ある書評サイトさんで、「予備知識なしに読み始めたが、最初は超能力者が出てくるようなSFっぽい話なのかと思った」というような感想が書かれていました。
 本を読む前にそちらのサイトさんを見ていたのですが、恩田さんがそういうジャンルの話を書かれているからだと思っていました。
 実際に読んでみて、確かに納得。
 これは、演劇物だと思わずに読んでいたら、エスパー物だと勘違いしてしまう……!

 でも、もしガラスの仮面を小説にしたら、すっごいエスパー物になるのかもしれない。

 にしても、マヤ的存在のキャラクターが、所属した劇団の公演でやらかしている事を読んでいるとき、私の心のなかでずっと、

 ――この子は……、舞台あらしだわ……!

 と、叫んでいました。
 まぁ、もしも私がその公演の演出をしていたとしたら、後ろからスリッパで頭はたきますが(笑)。

 だけどこれ、小説として面白いです。
 脇キャラっぽい人がたくさん出るけど、どの人も脇キャラっぽくない。
 その分、未消化な感じもするのですが、この本に限ってはそれがまた心地いい。
 すごく秀逸な描写もあって、満足の一冊でした。

 ガラスの仮面だけど、現代の小説。

 だから、ガラスの仮面っぽいけどちゃんと恩田さんの小説。

 でも、小説が好きでガラスの仮面が好きな方には、おすすめです。

 感想を書きたい本はいくつか溜まっているのですが、とりあえず読んだ本のタイトルだけ。


『疾走!千マイル急行 上下』(小川一水)

『ブルースカイ』(桜庭一樹)

『黄金を奏でる朝に セレナーデ』(沖原朋美)

『図書館戦争』(有川浩)

『空の中』(有川浩)

『海の底』(有川浩)

『塩の街』(有川浩)

『ナ・バ・テア』(森博嗣)

『憑神』(浅田次郎)

『沖で待つ』(絲山秋子)


 などなど。

 たぶん他にも読んでるんですが、ちょっと思い出せない。


 いくつかでも感想、上げられるといいな。


あさの あつこ
地に埋もれて

 まず冒頭でびっくり。

 まさしく、“地に埋もれて”。


 埋められた人間の心境というのはどんなものだろう……と、読んでて怖くなりました。


 主人公を助けた……らしい、少年「白兎」。

 この少年、『透明な旅路と』という作品にも出ていて、これを読んだことのある方は、なんとなく物語の行く先を予想しながらページをめくるのではないかな、と思いました。


 私も『白兎』の存在を踏まえて、予想しながら読み進めたものの、少しはずしてしまいました。

 仰天するほど予想外のラストではないけれど、でも――ああ、ここに到着するんだ――って感じでした。

 

 にしても、やはりあさのあつこさんの描く“少年”は素敵です。

 『透明な旅路と』という作品もこの作品も、白兎の存在がなければ、とりたてて言うほどの展開ではなくなるかも知れないと思うのです。

 けれど、どちらの作品にも『白兎』がいる。

 そして、他の登場人物もぐいぐいと回されていく。


 あさのさんの、このジャンルの話も大好きになりました。

 

長谷川 集平
ホームランを打ったことのない君に

 絵本作家、長谷川集平さんの新作。

 日本人の心に野球は深く根をはっているのに、そんな野球の魅力を語ったこどもの本がないのを不思議に思っていました――と帯に書かれてありました。
 確かに、野球自体の魅力を語っている本は、あまり記憶にないなぁと思いつつ、読んでみました。

 これ、絵本だし、当然子供が読んで楽しめるけれど、大人が読むと違った感じに引き込まれる。
 じんわりと胸に染みます。
 ホームランを打ったことの無い主人公の少年と、野球部出身の青年との交流。
 
 そして、絵本に出てくるスタジアムは、多分長崎の『ビッグNスタジアム』をもじったような名前だし描写。元ホークスでメジャーへ行っちゃったあの選手をもじったような名前も出てくるし。

 そして、作者さんご本人がなにより野球が好きなんだなぁってのがびしびし伝わってきます。

 書写近影の写真を見る限り、たぶんホークスファンでいらっしゃるようです。

 そして表紙見返しにこんな文章が載ってて、ちょっと感動しちゃいました。

 ― ホークスの川崎宗則(むねのり)選手が子どもたちに「ホームランを打てなくてもいい。どんな打順でもそれぞれの仕事があっておもしろいんだ。奥が深いんだ」とよく話すそうです。それを聞いてホームランを打ったことのないぼくは何か肩の力が抜けるような思いがしました。
でも、本当のことを言うと、まだあきらめてないんです ― 
 (表紙・見返しの著者の言葉より)


松樹 剛史
スポーツドクター

 バスケ部で活動する、女子高生の夏希。

 部員の怪我の付き添いで、スポーツドクター・靫矢のもとに訪れるが、なぜか怪我した子じゃなくて夏希の足を気にするドクター。


 この夏希を主人公に、学校のバスケ部、リトルリーグ投手の肘、水泳選手のある悩み、そしてドーピングの問題へと話が移っていきます。


 一人の怪我につき一話完結っぽい作りですが、ドーピング問題が絡むころから話は続いている感じ。

 最初、夏希ら女子高生の会話を読むのがつらかったです。

 なんだか、まったりしすぎるような、うるさいような。

 でも、夏希の問題が明らかになるころから中に入り込めました。


 もう少し、読み応えがあればなお良かったんだけども。

 ――と思うくらい、患者一人一人についてもう少しがっつり読みたいなと思わせられる内容でした。

 

 にしても、客にも同僚にも無愛想だけど夏希とだけは会話が成り立つ、スポーツジム・インストラクター義陽くんが、かなり好み。

 もう義陽くんの存在だけでも、読んで良かった、みたいな(笑)。

 夏希ちゃん、義陽くんは買いですよ、買い! って心で何度も叫びつつ読んでました。

 

 

 

駒崎 優
運命は剣を差し出す―バンダル・アード=ケナード〈3〉
ようやくバンダルの隊員たちと合流できた隊長ジア・シャリースと医師ヴァルベイドだが、依然として賞金首として狙われ、新たな強敵が争奪劇に参戦する。「運命は剣を差し出す」完結編。

 隊長のジア・シャリースとバンダル・アード=ケナードが合流し、話の勢いが増します。

 ヴァルベイドは引き続きシャリース、バンダル・アード=ケナアードに護衛される形です。


 でも、シャリースとヴァルベイドにはやっぱりそれぞれ賞金がかけられていて、雇い主のヴァルベイドを単に護って行くだけの展開ではなく色んなものが絡み合ってきてます。


 前巻までは、わりとへタレというか、もしかしたら単なる語り役・もしくは引き立て役でしかないのか……? と思ってしまっていたヴァルベイドが、この巻の後半から俄然光ってきます。(いや、私はそもそも最初からヴァルベイドびいきだったんですが、なんか目立たなくて悲しい思いをしていたのです)


 で、それに付随してシャリースもラストあたりは小憎らしい感じにカッコいい。


 だけど、このバンダル・アード=ケナードって、ほんっとうに『隊長スキスキ部隊』だなー。


 この話は、全3巻で完結ですが、シリーズはまだ続くようで、けっこう楽しみです。

駒崎 優
運命は剣を差し出す〈2〉バンダル・アード=ケナード


東のエンレイズと西のガルヴォが争乱に突入して30年。戦いに明け暮れるエンレイズのバンダル・アード=ケナード隊長・シャリースの元に奇妙な異国の青年が現われる。この出会いがバンダルとシャリースの運命を大きく変え…。

 2巻は前巻の続きではなく、それ以前のジア・シャリースとヴァルベイドが出会う前のお話。

 シャリースがとても名高いアード=ケナードという傭兵隊の隊長だというのは1巻からわかっていましたが、ここにきてそのステキさが発揮されてきました。


 しかし、なによりこの巻で大注目なのが、顔に刺青のある異国の青年「マドゥ=アリ」。

 戦うことに関しては高い能力を発揮する彼は、あまり隊にとけこまずいつも一人でいるのです。

 それをなんとなく気にする隊長、シャリース。


 そんなシャリースに、マドゥ=アリの心とタマシイが一直線です。

 たまげるくらい、一直線でした。

 そんなマドゥ=アリの一直線を、ちゃんと受け止めちゃうシャリースは男前だなぁとか思ったり。


 そして、この巻のラストから一巻の最初に繋がります。

 なんだか3巻がむちゃくちゃ待ち遠しくなる過去編でした。

駒崎 優
運命は剣を差し出す―バンダル・アード=ケナード〈1〉


辺境の街道でヴァルベイドは負傷して戦場に置き去られた若き傭兵と白い狼に出逢う。この男こそ世に名高いバンダル・アード=ケナードを率いる隊長だった。追われる身の彼らは珍道中を繰り広げるが、追跡は深刻化する一方で…。

 あらすじや表紙からのイメージで、ちょっと地味めだけど渋い感じの作品? と思いつつ手に取りました。

 この1巻では、追われる医師・ヴァルベイドとケガで動けなくなった傭兵隊長のジア・シャリースが出会い、行動を共にし始めます。

 

 シャリースはケガを治してもらいながら、ヴァルベイドに雇われて護衛につきます。

 しかし二人とも、それぞれに追っ手がかかってたりして、状況は複雑っぽいです。

 ちょこちょこ謎が散りばめられていたり。


 まだこの巻では、大きな盛り上がりがなく、本当に序盤の序盤って感じがするのですが、でも続きが気になる一冊でした。