桂 望実
県庁の星

 

間違いは認めるな!?予算は使い切れ!?役人根性全開の県庁のエリート
が、田舎のスーパーにやって来た。
手に汗握る、役人エンターテインメント。』


 Y県初の民間人事交流研修対象者の一人に選ばれた、エリート職員の野村。
 この一年の研修をのりきれば、昇進も確実だろうと意気揚揚と乗り込んだ先は、スーパー。
 食料品やら家庭用品が売ってある、ごく普通のスーパー。
 はたして野村は『民間』でやっていけるのか?


 ――という、すごく興味を引かれるお話でした。
 公務員さんが民間で仕事をやっていけるのか、ってのは結構いいツボついた作品だなー。
 惜しむらくは、赴任先のスーパーがわりといい加減経営のところだった、って設定。
 いや、これは単に私の好みの問題ですが。
 スーパー側も、ちょっと『民間』代表としてはだらしなさ過ぎという感じだったので、なんとなく主人公・野村の言い分もわかる部分もあるというか。


 だけど、主人公の成長モノとしてとても楽しめました。
 この主人公を、映画で織田裕二がどう演じるのか、ちょっと楽しみです。




白石 昌則, 東京農工大学の学生の皆さん
生協の白石さん

 東京農工大学。この学校の生協の職員、白石さんの『ひとことカード』の回答を集めたこの1冊。


 『ひとことカード』というのは、学生から生協への質問、要望などの投書カードで、担当者が回答を書き、張り出すコーナーがあるようです。
 そしてこの東京農工大学の生協では、白石さんという方が担当。
 そのステキな回答っぷりに、たぶん学生の間で話題になり、そしてネットで話題になり、ついには本にまでなってしまったようです。


 近頃、ネットでの話題が元で出版される本には少し辟易しているのですが、これはいいなぁって思いました。
 機智に富んで、ユーモアがたっぷりで、そしてそこはかとなく漂う腰の低さ。
 なんだろう、こんなに爽やかに腰が低い文章って、すごいなと。


 すごいと言えば、本のセールスも凄そうだし、ガンダムのCMにも白石さんの『ひとことカード』が使われててびっくりしたり。


 本に収録されている『ひとことカード』、大抵はネットで見たものが多かったのですが、それ以外に書き下ろしエッセイが何点かあったのがまた面白かったです。
 白石さんの困惑振りや、生協職員としての立場を崩さずに保っているところとか、やっぱり腰の低いところとか(笑)。

 私は白石さんの、ほんの些細なことでも人を傷つけない言葉の言い回しがとても好きだなって思いました。



須藤 靖貴
フルスウィング

 野球をベースにした短編集。恋愛あり、犯罪あり、ミステリーあり、と裏表紙で紹介されていて目を引きました。

 8年間所属したチームを解雇された選手がバッティングピッチャーになるお話や、現在大リーグで活躍している実在の選手と元監督を彷彿とさせるような話や、大学野球でプロ入りが決まっている選手の恋愛系ストーリーなど、てんこ盛りな一冊でした。


 とくにチームを解雇されるという設定の話が二つあり、『切な爽やか』な読後感で好きでした。

 

 野球が題材の小説は大好きなのですが、その中でも好きなタイプの作品というのがあります。これは好きな一冊だったな。

 とはいえ、この本に掲載されている話の全編が好きかと言うとそうでもないのですが、嫌いな話はなかったしお気に入りの一冊と言っていいなと。


 私はとくに、「ビリケン打撃投手」と「ぐでんぐでん」という話が好きでした。

 ここ数日で数冊読了してるのですが、なかなか感想を書けずじまいです。

 風邪引いて寝てばっかりいたので、その間にちょこちょこ本を読んでおりました。


 読んだ本はこれ。


『1985年の奇跡』 五十嵐 貴久:著

『フルスウィング 』 須藤 靖貴:著

『光降る精霊の森』 藤原 瑞記:著

『未来のおもいで』 梶尾 真治:著

『死神の精度』 伊坂 幸太郎:著
『天使のナイフ』 薬丸 岳:著

『君の名残を』 浅倉 卓弥:著


 どれも途中でやめることなく読み終えました。

 『君の名残を』は、友達からオススメしてもらい、でもずっと借りっぱなし(図書館やら友達やら……)だったのですが、ようやく読了。

 面白くなかったのではなく、ただ単に長かった。でも面白かったです。


 おいおい感想をアップできたら、いいな。

恩田 陸
酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記

 恩田陸さんの小説ではない作品を始めて読みました。

 紀行文、というのかな、イギリス・アイルランド旅行のことが綴られています。

 しかも、旅行中に体験したものから浮かんだ“小説”のワンシーンが載っていたりして、読んでいてワクワクしました。


 でも、なにより何度も頷いてしまったのが飛行機への恐怖。

 実は私もかなりの飛行機恐怖症。

 その恐怖の種類は、たぶん恩田さんと同系統。まるきり同じ恐怖ではないかもしれませんが、でもまさしくそんな感じなのよ! と心で叫んじゃうほどです。


 車や電車に比べると事故の可能性は低いとか、そんな問題ではなくただもうダメなのです。

 飛行機に乗らなければ、と決まった瞬間から、すごく心が重たくなっちゃうし。

 とか言いながら、長崎―東京の往復に飛行機を使ったこともありますが。

 でも他に手段があるならばJRとかバスとか使いたい。

 

 と、そんなくらいに私には共感できるものでした。

 でもそれだけじゃなくて、エッセイ、紀行文、そして恩田さんのお話の作り方などいろいろな要素を楽しめて、あっという間に読めた一冊でした。

伊坂 幸太郎
重力ピエロ

連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。
無意味な言葉の羅列に見える落書きは、一体何を意味するのか?
キーワードは、放火と落書きと遺伝子のルール。
とある兄弟の物語。


  (「重力ピエロ」本の帯より)


 伊坂幸太郎さんの小説は『I love you』という男性作家の恋愛小説アンソロジーで初めて読みました。

 かなり引きこまれる内容だったので、長編も読んでみたいと思って手に取りました。

 所々、ひっかかる感じはしたのですが、文章が面白くて読みやすいからか、最後まで一気に読めました。


 ひっかかる、というのは、過去の回想話がちょこちょこ挿入されていて先に進まない感じがしたのと、“後から思えば”という記述がわりと多くて、読んでいて流れが切れちゃう感じがしたから。

 でも嫌いな手法ではないので、ほんの少しの引っかかりでしたが。


 それよりも文章がけっこう好みだったので、読んでいて楽しかったです。

 

 それと、作中の文章やセリフで心に残るものが幾つかありました。


・気軽に「さようなら」が言えるのは、別れのつらさを知らない者の優越的権利だと思う


・本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ

 

 とか、いくつかありました。

 ――そういう面もあるよね、程度のものだと思うけれど、でも確かにそうかも知れない、とじわじわ効いてくるような文章でした。


 主人公の泉水と、その弟の春、この二人の関係性がなんかいい感じだったなー。

 春がちょこっと子供っぽいのは気になったけれど。そこまでやるか? みたいな感じで、若干引くところもあったけれども。

 父親、母親との出来事の数々もすごく好きでした。


 ちょこちょこと、「ん?」って箇所があったにしても、すごく好きな作品です。

あさの あつこ
福音の少年

 小さな地方都市で、あるアパートが全焼する。その火事で同級生の少女を失った少年二人が、火事の真相に迫っていく。


 という内容ではあるのですが、なんだろう、こんなに粗筋が役に立たない小説ってのもないような気もする。

 本の帯とか出版社サイドの紹介文とか、それすらも全然内容とは違ってるような気すらしてしまう。

 それくらい、内容が不思議というかなんというか。


 正直、思ったほどのめり込めなかった。

 色んなことが宙に浮いてるような気がして。

 ただ、それぞれの登場人物が抱えているものに決着がついてしまってたら、それこそ面白くなかったような気がする。

 

 10代の少年の心の闇、というのがこの話のポイントらしいのですが、こんな感じにワケわかんない物なのかもしれないと、ふと思いました。

 決着とか出口とかないような。

 

 ラストはビックリしたけど、あの手の終わり方はあれでアリだと思うので、そこは気になりませんでしたし。

 やっぱり少年二人の会話が好きだなぁと思ったし。


 実は一番気になって気に入ったのがジャーナリストの男性。

 気になるなー。


 だけど、本当にあさのあつこさんって人と人との関わりの描き方が、真摯だなと思います。

 容赦ないくらい、痛々しく感じちゃうのも各キャラの接し方が真摯だからじゃないかと、勝手に想像しています。


 そういや私のイトコは、多分キャラの描き方の事だと思うのですが『えげつない』と表現してました(笑)。

 それを聞いたときは「そんなことないよ」と反論してたのですが、確かにそうかも知れない。

 ただ、現実の人間関係なんて確かに『えげつない』んじゃないかな、ある意味。

 その現実を小説のなかでわざわざ見なくていいって思うと、確かにあさのさんの本は読むのがキツイ部分もあるかも。


 なんて、頭悪い私が勝手に考えてるだけですが。

 実を言うと、私もあさの作品を読むのが辛かったりするのですが、それくらいに真摯な部分が好きなんだろうなぁ。


 そんなわけで、ストーリー的には思ったほどのめり込めなかったけれども、嫌いな本ではないな。

ひぐち あさ
おおきく振りかぶって 1~3巻セット

 ちょうど夏の甲子園真っ最中なので、高校野球マンガを。


 軟式から硬式に変わったばかりの、新設野球部。

 部員は一年生だけで、監督は女性。

 主人公の三橋は中学時代の経験から、高校では野球はやれない、と思っていた。が、この野球部に投手として入部することになる。


 という出だしで始まるこのマンガ。

 巷では大人気で、書店でもかなり目立つ所に置かれてます。

 そして、私も大大好き。

 

 作者さんがかなり長い間取材を続けているらしく、すっごく細かく描かれていて面白い。

 野球が好きな人やそうでもない人、男性、女性、幅広く「面白い」という感想を持たれるようです。

 

 『ドカベン』『タッチ』など、高校野球マンガには不朽の名作がたくさんあるけど、この話はまた新しいタイプじゃないかなー。

 登場人物が、きらっきらしてるんです。

 一言一句一挙手一投足が、きらっきらしてて、私なんかどのコマみても「ぐはっ」て唸るしかないくらい。


 そして、特に野球に関しては忠実に描かれてると思いました。

 試合のシーンだと、本当に観戦しているくらいの臨場感で、試合展開がちゃんとわかる。

 そして、打者、投手、捕手それぞれの駆け引きとか、すごくわくわくします。

 

 で、私が最初にこのマンガを買うきっかけになったのは、一巻目の背表紙の言葉。


《オレらのエースは 暗くて卑屈。 勝つために、弱気なエースのために。行け、オレら!》


 って。

 く、暗くて卑屈? な、エース? 

 な、なんだろう今までにない野球物っぽい気がするわ……。

 ――そう思って、即買いしちゃいました。


 いやホント、ある意味卑屈な主人公でした。

 でも、誰にも負けないくらい投げることが好きで、ひたむきな主人公でした。


 これ、高校野球物ですが、連載が少年誌じゃなくて青年誌なんですね。

 そこもまたポイントかも知れない。(少年誌だと、ヒーローチックな主人公になっちゃってそう)


 て、なんか好きなだけに長くなってしまった。

 とにかくこれ、おすすめ作品です。(現在四巻まで出てます)

松岡 圭祐
ミッキーマウスの憂鬱

 『史上初、ディズニーランド青春小説』

 という帯の言葉に惹かれて読んでみました。

 TDLの、バックステージ物。そして、青春物。


 ディズニーランドに派遣で勤めることになった青年の、初出勤からの3日間が描かれていました。

 実在しない名称・既に廃止された名称などがあります、とのことですが、それでもバックステージってこういう感じなんだろうなぁ、なんて思っちゃいます。


 主人公の後藤、後半はかなり気持ち入れて読めるんですが、前半はちょっと痛い、かな。

 でもまぁ、『新人』ってそういう感じかもしれないし。

 あと、正社員と準社員の確執ってのが、ちょこっとステレオタイプな感じもするかも。


 が!

 正直、3/4は痛さをかなり感じながら読んでたのですが!

 ミッキー役の二人(ショー用とパレード用)がイイ。

 この二人の会話が、たまらん感じでツボでした。


 それに、痛さを感じながら読んでいたけれど、最後まで読むと、なにか納得してるんですね。

 夢の世界と現実と、どっちも殺さず受け入れてるって雰囲気がいいなぁって。

 夢ばっかりじゃなくて、でも「現実ってこんなもんか……」って諦めるわけでもなくて。


 にしても、すごいなこれ。

 ディズニーランドが舞台ってのが、いろんな意味でスゴイな。

川原 泉
甲子園の空に笑え!

 

 夏といえば、野球。甲子園も始まるので、それらしき本を選んでみました
 画像がないですが、これ漫画です。


 九州の某所にある学校に赴任した女性教師。
 その女性教師が、野球経験もないのに弱小野球部の顧問になるトコロから始まっていて、ただのギャグかと思って最初は読んでいました。
 が、最後ちょっと涙ぐんでしまいました。
 ずいぶん前に描かれた漫画なので、ちょっと古い感じはするものの、すごくいいお話です。


 この文庫に一緒に収録されている『銀のロマンティック、わはは』も大好き。
 こちらはフィギュアスケートの話です。
 少女漫画によくありがちなフィギュア物だけど、ちょっと違う。
 
 野球もフィギュアも観るの大好きな私なので、なおさら楽しく読めるお気に入り作品です。