マジョルカ島にて
雨が降る
君の帰りを待っている間
僕専用のピアノのふたを開けた
雨の音がやわらかな音をたてて
ガラス窓に当たる
不規則な雨の女神だ
鍵盤の上に手を置く
どんなメロディが聞こえてくるのだろう
君のはにかんだ笑顔と真赤な口紅
その赤はピアノの上にある
赤いバラの花束そっくりだ
僕は結核を患っており
君の勧めでこの島へ療養に来た
早く治るといいわね
君の声が頭の中で聞こえたような気がした
そのとき、ピアノが音を奏で始めた
一通りその曲を弾いたあと
すばやく、ぼくは譜面に音符を書きとめた
忘れないうちに
やはりそうか
この曲はショパンの雨だれの曲か
君を待つ間に
ゆっくりと
なめらかに
僕の指が、雨の女神を誕生させた
