「マダム、気付きましたか?」
…ハッ…私は何を…
「終わったんですか?」
「終わりましたよ」。
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遡ること1時間前、病院の処置室。
今日はこれから、胃カメラの検査です。
フランスの胃カメラは全身麻酔(静脈鎮静)下での処置が選択できます。日本での胃カメラも笑気麻酔でやったチキンな私は、胃腸科の担当医の勧めに迷わず全身麻酔を選択しました。

胃カメラ当日、まずは受付で全身麻酔の同意書など十数箇所に予めサインをした書類を提出し、氏名、生まれたときの苗字(私の場合は旧姓)、入院日、誕生日、保険証番号、担当医などが記されたリストバンドを装着。この日は半日入院扱いになります。
次は会計で支払い。麻酔医・胃腸科の先生・病院入院代を別々に支払いしますが、これは後日(通常半月以内)に社会保険と任意保険による払い戻しがあります。

使い捨ての病院着に着替えて、ここからはストレッチャーで処置室に移動。静脈鎮静とはいえ、ドラマで見るような手術室さながら施設です。
私を待っていた気のいい看護師のお兄ちゃんの、絶食しましたか?などの質問に答えつつ、バイタルを確認されます。
そうこうしているうちに麻酔医と胃腸科の先生が到着。軽く挨拶を交わしたあと、カテーテルを装着。
「はい、完全に左向きに寝てくださいね」「はい、じゃあこれを口にくわえてください」「ちょっと酸素送りますね」「では、のちほど」。
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…
「のちほど、って…」
気付くとそこは処置室ではなく、麻酔回復室。時計は処置室に入ってからきっかり1時間後を指しています。
「先生たちが処置室に来てあっという間だった…
胃カメラ…本当にやったのかな…」
その記憶が全く無いからこその全身麻酔胃カメラなのですが、どんな事をしたのかちょっと知りたかったな…などと、勝手なことをぼんやり思っていました。どうやら同じ回復室内のベッドの仕切りの向こうには別の人の気配があり、すっかり麻酔にかかったままの人のイビキが高らかに聞こえます。
「目が覚めたみたいですね。もう少ししたら立ってみますか?個別スペースに移動して、ドクターを待ちながら軽食にしましょう」。

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胃カメラ当日はサクサクとスケジュールが進んでいきますが、ここまでの道のりは日本よりも長くかかります。
最初に胃が痛くなったのが10月上旬。
1:薬局に行く(薬剤師さんのアドバイスで胃薬などをもらう)。
2:薬局に行く(あまり効果がなかったので違う薬局に行く)。
3:かかりつけ医に行く、処方箋薬を貰う。
4:それでも苦しいぞ?SOSメディサン(自宅に医師を24時間365日呼ぶことができるシステム)に連絡する。
5:SOSメディサンが救急車を呼ぶ。
6:救急病院一日入院。医師が直接救急車を呼んだので優先的に検査を受けられるが、病院がストライキ中で病室に入るまで14時間かかる(フランスでは想定内)。
7:CTなどを撮ったが異常なしなので痛みが和らいだところで退院。胃カメラを後日受けるように言われる。
8:かかりつけ医に行き、胃カメラを撮るために胃腸科の紹介状を貰う。
9:胃腸科を予約し、問診。
10:麻酔科を予約し、問診(この日気温0℃で公共交通機関はストライキ中)。
11:胃カメラ当日を迎える(この日も気温0℃で公共交通機関はストライキ中)。
ここまで約2ヶ月、もはや軽い逆流性食道炎しか感じない程にせっせと強力な処方箋薬を飲み続け、「今さら胃カメラ撮る必要あるっけ?」と「一年間任意保険払い続けたから、せっかくだし」の気持ちを胸に、ストライキの中(※病院のある地区がデモ行進のコースに入っているのでタクシーも使えない)検査に向かったのでした。
(つづく)