あなたが感じる自由は?ー「マイレージ・マイライフ Up in the Air」 | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

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観る映画が、あなたの、わたしの、人生のヒントになる。
ここは、SCREEN(私設)研究所。

潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。



|| 空の上に住む マイレージ男 ||




ライアン・ビンガムはいわゆる「解雇宣告人」
自分で部下を切れない 腰抜け上司の代わりに
初対面の従業員たちにクビを言い渡すのが彼の仕事



出張は年に322日
スーツケース1つでいつも空の上
「空港が我が家」というほど 自宅は空っぽ




「バックパックの中に入りきらない人生の持ち物は背負わない」のが彼のモットーで
それをネタに講演をするほどの徹底ぶり




家族とは殆ど会わず むしろ面倒くさいと感じていて
結婚には興味なし
旅先で出会う 気の合う女と気楽な関係を続けている




彼の夢は
マイレージを1000万マイル貯めて
飛行機に自分の名を残し 機長と面会すること
その為にも、マイルにならないお金は使わない主義
どこまでも徹底した男(!)




ある時、本社に呼び出され戻ると
現地出張をなくすネット解雇のシステムが動き出していた
猛反対のライアンは
システムを提案した新入社員のナタリーと激しく衝突する

上司は 新入社員に実際の解雇宣告を経験させるため
ライアンにナタリーの教育係を命じ ふたりは共に出張することに。




||| 身軽な男の自負 |||




初出張で荷物が一杯のナタリーと
いつもの身軽なバックパックのライアン
部下の荷物を捨てさせるところから旅は始まります。



ナタリーには、解雇宣告の現実を知る旅
しかも、後を追いかけ 結婚も夢見た彼氏と
出張で離れている間に メール一通で別れを告げられるという
我が身の現実も知る、皮肉なおまけ付き(!)




人を“切る”ことで初めて目にする現実に 彼女は衝撃を受けます
目の前で “切られた”者たちの主張が続く


 よく平気だね、こんなに僕たちを苦しめて
 お前何者だよ?


 敏腕プロデューサーの私をクビに?
 あなたは莫大な報酬 私は給料ゼロ
 クソッタレ


 計画があるの ウチの近くに橋があるから
 飛び降りるわ


目の前で、相手がどれだけ荒れようと
ライアンは静観し ナタリーに告げる
『人々を不安に突き落とす これが僕たちの仕事だ』





ある時は
ナタリーの的はずれなアドバイスにキレた男を
ライアンがこう諭します


『子どもはなぜスポーツ選手が好きか知ってるか
 夢を追っているからだ』


バスケなどできん と、ふてくされる男の前で 履歴書を眺め
『料理はできる』とひと言。


『フランス料理を習ってるね
 学生時代のバイトも一流レストランだ


 いつかこの仕事を辞めて 夢を追うつもりだった?


 君は 今がチャンスだ
 生まれ変わる 子どものために




会社に自分の時間を捧げ
会社時間に縛られて 自分自身の幸せを知らない人たちへ、
ライアンは静かに言葉を続け
解雇という大きな衝撃を 少しでも和らげようとする



若いナタリーに自分の背中を見せる 彼なりの この仕事に対する自負。





|| 持ちたい荷物と持ちたくない荷物 ||




自分の仕事には絶対の自信があるものの
プライベートとなるとなかなか…というのは
仕事人間に共通したものかもしれません。



ライアンは 姉から
出張先で 妹と婚約者の写真を撮ってきて と頼まれます。
自宅には ふたりが写った大きな看板が送りつけられている。
3週間後に結婚する妹の為、引き受けはするものの、気乗りがしない。
バックパックに入りきらない、幸せそうなふたりの写真は、彼にはうんざりするお荷物。
結婚式への出席も、ひとりでどうしようと悩んでいる始末。




家族を愛していないわけじゃない
だけどメンドクサイ。



彼は、久しぶりに家族と会う気まずさからか、気楽な関係のアレックスを、結婚式に同伴させます。




次第に 彼の中で大切な存在になる彼女
ライアンは アレックスとスケジュールを合わせて逢うだけでは満たされなくなり
衝動的に彼女の住むシカゴへ飛ぶ



だけど、彼女には彼女の“本物の”人生があった。




『会いたかったんだ 家族がいるなら言えよ』
と、本音を漏らしたライアン



今まで持ったことのない“荷物”を 持ちたいと思った瞬間です




だけど、アレックスはあくまでもクール。
『あなたは日常からの逃避 息抜きよ
 あなたはどうしたいの?』



シカゴで撃沈し 帰る機上
よりによって こんなタイミングで(!)
長い間夢見た1000万マイル達成を迎える



夢見ていた時を迎えたというのに
7人めだ 最年少の偉業者だ と賞賛されても


何度も何度も想像していたはずの あこがれの機長との会話も
まったく何も思い浮かばない



機長から お住まいは?と聞かれ
『ここです』 と答える彼の顔は
まるで 帰る家を無くした子どもの表情




会社に戻ると、上司から
我が社がリストラした人間が自殺したという報告と
そのショックから ナタリーが会社を去ったことを知ります



ライアンは初めて 自分の意思で 周りの人に
自分が持っているものを与えようとする




新しい職を探すナタリーへ 推薦状を書き
新郎新婦には 自分のマイルを譲るのです



「ネット解雇」システムは凍結
ライアンはまた、出張を命ぜられます


いつまで? と聞くと
『ずっとだ』と上司の命令が飛んでくる




彼もまた、会社に自分の時間を捧げているひと。




|| 彼の持つ翼 彼の持つ自由 ||




空港の destination boardの前
ライアンは立ち止まる



彼が 解雇宣告人を続けたのか否か
それは、映画の中では 語られることはないけれど



人生も同じ 我々は重荷で動けなくなってる
 生きることは動くことだ



と、自身が自ら語るように
彼は 彼自身に“新しいチャンス”を与えた




それは、
ひとつの価値観で、縛っていた自分を 解放すること
解雇宣告のようにね。




ライアンが手に入れたものは
マイルのためだけに飛んでいた自分に与えた
新しい翼




人は 今まで持たなかった選択肢を“持ってもいい”と自分に許した時
自由を感じます


 この仕事を続けてもいい 辞めてもいい
 新しい家族を持ってもいい 持たなくてもいい



ラストシーンの彼の表情から
あなたの“自由”感じてみてくださいね。