※あらすじ
TYPE-MOONの人気PCゲーム「Fate/stay night」を映画化した劇場版3部作の第2章。原作ゲームで、ヒロインのひとりである間桐桜を通じて「聖杯戦争」の真実に迫ったシナリオルート「Heaven's Feel」(通称・桜ルート)をアニメ化した。10年ぶりに冬木市で始まった戦争は、「聖杯戦争」の御三家と言われた間桐家の当主・間桐臓硯の参戦により、歪みが生じていく。一方、魔術師(マスター)として参戦していた衛宮士郎は傷つき、英霊(サーヴァント)のセイバーを失ってしまう。それでも士郎は、桜を守るため戦い続ける。そんな士郎の身を案じる桜だったが、彼女自身もまた、魔術師の宿命に捕らわれていく。(引用元:映画.com)
ライダーさんかわいいよライダーさん
第一章で書いたのでやはり第二章でも書かないと、ということで書いていきます。
今回はネタバレありで進めます。
自分自身の履修状況としては二年以上前に全年齢(PS Vita)版をプレイし、アニメはDEEN版とufotable版のUBWを観ました。つまり、PC版の原作はやっていません。
○ライダーのマスター
ライダーさんに蹴られたいだけの人生だった……そんな風に士郎を少し羨ましく思ったのは自分だけですかね。
戯言はさておき、士郎と慎二の対決。そして、凛の介入を経て明かされる、ライダーのマスターは慎二ではなく桜であるという真実。その説明の見せ方がだいぶえぐいことするなと。凛と士郎、桜は一直線で並んで真実を暴いているのに、慎二はそれを横から眺めているというのが慎二の立ち位置そのものを表しているようで悲しい。神谷さんによる慟哭がまたクル。
ですが、契約が本来のマスターに戻り、ステータス爆上がりのライダーさんは待ちかねていたのも事実。魔術が暴走していて危険な存在だとしても、桜を生存させることを第一に考え、鮮血神殿や魔眼を容赦なく使う凄まじさは他二ルートとの違いを見せつけてくれます。魔眼の演出、好き。
〇「俺は桜だけの正義の味方になる」
教会で明かされる桜が抱えている過去。そして、危険性を孕んだ現状。ついに士郎は決断の分岐点へと立つという大事なシーンですが、もう何も文句言えないでしょうこんなものを見せられると。
白髪の士郎が一瞬映るのはもうそういうことでしょう。抱いた理想とは違う道を選んだ士郎は雨の中で桜と対面し、行き場を無くした彼女と言葉を交わす。
やはりそのシーンの気合の入りようは半端じゃないです。明らかにPC版と思われる台詞を挟むのはそれが必要だから。桜の独白で彼女にズームしながら表情を丁寧に描くのも必要だから。盛り立てるのに必要なものはすべて揃えたと納得できるものです。というかこれは自分の語彙では表現しきれません。
また、改めて思ったのは桜がすごく潔癖症で、自罰的なのかなということ。士郎に隠し事を続けてきたこと、間桐家の正当な後継者として修練で何をされてきたかということ。自分がまだ危険な存在であること。そのどれもが士郎を傷つけることに思えて、自分はあの人の隣に居てはいけない。でもそんなことは死ぬよりも辛い。……もうしんどい。
〇ライダーさんの朝食
かわいい。それ以外の言葉が思いつかない
〇バーサーカーVSセイバーオルタ
映像がとんでもないといえば外せないのがこれ。一章以上ということを掲げて制作されたというだけあって、本当に一章の凄まじい戦闘シーンを超えてきました。最強格のバーサーカーと膨大な魔力供給を受けているセイバーオルタという規格外のサーヴァント同士の戦いとして恥じないものですし、改めて互いのバケモノっぷりを痛感しました。戦闘のなかで理がしっかり描かれていて、決着に至る過程もしっかり描写されています。もう終始圧倒されてました。
〇結ばれる士郎と桜
PG12ってあそこまでやっていいんですね……桜の自慰もそうですが、実際の行動が画になるかは別としてがっつりやることをやっていると分かるものでした。それがただのエロいベッドシーンという訳ではなく、その前の展開を踏まえたうえで必要なものだと思います。というかそれ以外では描写として不足になってしまうと感じました。
自分だけの大事な思い出だと思っていたことが憧れと嫉妬の対象である凛も持ち合わせていた。「その思い出まで取らないで」と涙を流す桜の姿が痛ましく、彼女には士郎に自分を女の子として好きなのかという証明がどうしても欲しかった。そこに全年齢版の描写を採用してはここまで重い意味を持つものになっていなかったと思います。
レーティング守るのは前提として、ベッドシーンは意味があるなら必要だと頭では思っていましたが、本当の意味で理解した気がします。HFはPC版をやるべきだという言葉の意味も多少分かったと思っています。
〇姉妹として
衛宮ごはんでもそうですが、凛と桜のこういうのは分かってても泣くんすよ、条件反射的に
〇「よもやそこまで」
突然出てきたファンシーな世界とドレスを着たお姫様の桜。主題歌「I beg you」のジャケットで見たやつだけど何かの暗示の夢かな。……そう思っていた時期がありました。
何ですか、あれ。いや桜のふわふわしたモノローグが聞こえてくるは、川に流されるぬいぐるみが亡骸に見えるは、城に入る桜を見送るファンシー生物の目が赤く光って恐いは。いじわるするぬいぐるみを弾いたら飴玉に変わった段階で嫌な予感は確信に変わりましたし、何が起きているのかも理解しました。
ギルガメッシュの声とともに引き戻されて明かされる現実。そこには虚ろな目で飴玉のように死人の指を食べようとする桜。……もう完全なホラーや。こういう見せ方するのかと感心すると同時に主題歌「I beg you」のジャケットは裏だけが罠ではなく、表も酷い罠だと思い知りました。
ギルガメッシュの最期は彼の株を過剰に持ち上げることなく、でもキャラクター性は損なわせない。どうあがいても勝てないと思わせる凶悪な演出だったので満足でした。
〇藤村先生
映画オリジナルのシーンと思われる藤村先生が桜の話を聞き、士郎と切継のことを話す場面――最高ですね。先生として家族として桜の不安を聞いて背中を押す。その中で切継のことを語ることで偶然聞いていたイリヤに一つの救いを与える。……もう最高ですよ。
〇「裏切るとも」
薄々感づきながらも否定しようとしていたが、臓硯によってついに明かされる桜と影の関係。「正義の味方」として生かす訳にはいかない存在だと突きつけられ、悲壮な思いで桜を殺そうとする中の葛藤で桜との過去がリフレインする演出。そこに切継とのあの夜のことが何度か挟まれるのがまたニクイ。そしてどうしてもナイフを下ろせず、違う道を選んだ自分の声に対して選んだ道を告げるような演出がまた最高でした。
〇慎二の最期、マキリの杯
慎二が調合した薬瓶が桜の魔力で光る。この場面が本気で辛い。もしかしたらこういうことを日常的にできる間柄にもなれたのかと無理でしかない幻想を一瞬抱かされ、粉々に砕かれました。げすい台詞を吐いて桜に引き金を引かせた慎二ですが、あの台詞を口にする慎二の姿も痛ましかった。やったことを許されることではないにしても、死にざまを笑う気にはなれません。桜も桜で一線を越えたことでマキリの杯として目覚めてしまい事態は最悪の展開へ、というところで引きですよ。一章に続いて二章も絶望に叩き落して終わらせてくれました。妥当な個所ではありますが、制作陣はドSなんですかね。
○I beg you
ジャケットの二段構えのトラップは卑怯ではないでしょうか。いや寧ろ三段構えというべきでしょうか
曲としてもこの段階の間桐桜を表現するのに最高のものだと思います。当然「花の唄」とは曲調も歌詞の雰囲気も異なり、過激なフレーズもありますが、それでもやはり本質は愛の唄なのだと思います。ここまで苛烈さと悲壮感が同居してるのもなかなかだと思いますが。
〇第三章「spring song」
2020年春公開と退路を断って宣言されました最終章。ここからは怒涛の展開でまだまだ激しいアクションも多いですが、制作陣の方々には健康に気をつけて良いものを作っていただければと思います。本当に良いものを見せられて感謝しているので、無理はないように。でもやはり春に見たいのは本音。
ライダーさんが全身全霊を賭してバケモンに立ち向かう最終章が今から楽しみです。