第九話「復活と再出発」② | 秘蜜の置き場

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「じゃ、私からもー。ピクシモン、よろしく」
「分かってる」
 話に一区切りついたところで、今度は葉月が口を開く。彼女達もこの四日間何もしていなかったというわけではないのだ。
 ピクシモンが机に載せたのは、両手でかかえるくらいの大きさの箱。この中に彼女達が集めたものが入っている。
「まず食料ね。葉月の言うところのパンだっけ。それが、数日分。あと、この地域の地図とかその他もろもろ」
 充達が情報収集している間、葉月達も何もしていなかったわけではない。巧の看病をしていない間は、一也とテリアモンとともに物資の調達をしていたのだ。この世界では日本円が使えないようだったが、以前の充とアシュラモンの条件もあり、あまり苦労することは無かった。
 詰まるところ、何もしていないのは巧とリオモンだけだ。
「誰かさんと違って、何もしてなかったわけじゃねえんだよ。バーカ」
「うるさい! 俺は動けなかったんだから仕方ないだろ」
「そ~だよ~。何もしてなかったのは事実だけど~。巧に関しては四日間寝てただけどね~」
「うぐっ……」
 一也には反発できた巧も、テリアモンには何も言えなくなる。ただのんびりと楽天的な奴かと思っていたが、こういうねちっこい部分もどうやらあったようだ。
「ま、まあ、とりあえず準備はできたんだろ。だったらどこに行くか決めて、出発しようぜ」
 巧の姿に居た堪れなくなったリオモンが慌ててそう言う。パートナーとしてこれ以上は見ていられなかった。
「そ、そうだな。充、どうする?」
 その気持ちはガルモンも理解できたので、後を引き継いでひとまず充に問う。
「そうだね。とりあえず……」
 箱から地図を取り出して広げ、充は左手に顎を乗せて熟考する。近辺にある悪核の支配地域を頭の中で整理し、自分達が行くべき場所を判断する。
「うん、ここだね」
 結果、指差したのはこの近辺にある海岸だった。数日前に横切った川が最終的に流れ着く場所である。
「良いけど……なんで?」
「巧、君が言うかい?」
 疑問符を浮かべる巧に充は逆に問い掛ける。まるで巧くらいは分かっておくべきだと言う風に。
「僕らに君を通して悪核の知識を与えてくれたのは誰だい?」
「まさか……真治?」
「その通り」
 出てきた名前はこの世界で会った人間の名前。関西弁を話してへらへら笑っていたあいつだ。
「おそらく彼とそのパートナーはここを訪れる」
「なんでそう思えるんだ」
「ああ、単純に彼のパートナーの適性だよ」
 確かに真治のパートナーであるガビモンはワニに似た性質を持っている。ワニには海水に生息するものもいるので、得意なエリアである可能性は高い。
「彼もそれなりにこの世界をどうしようとか考えている。だから、情報提供をしてくれたんだろう。でも、完全には信用されていない。だから、より積極的に行動を起こしているだろうね。川はこの町の直前で二又に分かれている。彼らはもう一方の道を行ったと思うよ。そして、最終的にこの海岸へ着く」
「なるほど……」
「ま、憶測でしかないんだけどね」
「十分です」
 基本的に彼らの指針を決めるのは充。巧たちも彼を信頼しているからなんやかんやでついていく。彼の予測は結構当たる。
「じゃ、行くか。リオモン」
「任せろ。よっ」
「俺も……」
 リオモンは窓を開けて飛び出す。次いで、巧は窓枠に足を掛けながら、その後姿にD-トリガーの銃口を向ける。
「進化弾」
「リオモン進化――ヴルムモン」
「よっと……うし、行くか」
 空中で進化したヴルムモンの背に飛び乗り、ゴーグルを下ろす。これ以上、この町に居座る理由はない。
「じゃ、僕らも乗せてもらおうか」
「無茶言うなぁっ!」
 ここから再出発。冒険の指針が決まったのなら、それに従って進むだけ。
「とりあえず前見た方が良いよ」
「何を……えっ?」
 言われた通り前を見た巧の目と鼻の先には、大木の太い幹が。
「ふごおぉっ!」
「巧ぃぃっ!」
 「そういうことはもっと早く危機感持って言え」と思いながら、巧は背中から落ちていくのだった。