相葉さんお誕生日企画の短編です。
現在連載中の「阿吽」の番外編となります。 なので、にのあいです。
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~和也語り
あれは俺が小学校3年生の時。
「や~い、嘘つき!」
「嘘は泥棒の始まりなんだぞ。」
「嘘じゃないもん!」
「馬鹿じゃないの?」
「あんなのアニメの話だろ?」
「違うよ。 だってほんとに・いたっ!」
クラスメートの投げた雪玉が肩に当たる。
3日前に降った雪は、陽の光で表面が溶けて氷のように固くなっていた。
「やった~! 命中!」
「よし、僕も。えいっ!」
ヒュッ! バシャン!
道路に落ちた雪玉がはじける。
小さい頃から人には見えないものが見えてしまった俺は、
その言動の奇妙さからクラスメートの格好のいじめの的だった。
友達なんて一人もいなかった。
バタバタ・・・。
「あっ、逃げたぞっ!」
必死に走って近くの公園に逃げ込んだ。
都会には珍しく大きな木々に囲まれた公園で、
北東の一角には小さな神社があった。
神社の近くは妖もあまり出没しないので、
安心して過ごすことのできる数少ない場所だったのだ。
どこか隠れるところは・・・。
辺りを見回した俺は、ひときわ大きな楠の幹にぽっかりと空いた洞を見つけた。
あれ? こんなのあったっけ。
「あれ~? 二宮の奴、どこ行った?」
「どっかに隠れてんじゃないか?」
近づいて来る声に、慌ててその中に潜り込む。
「でも隠れるところなんてないぞ。」
「もう行っちゃったんじゃない?」
「あいつ、逃げ足だけは早いからな~。」
「はははっ・・・。」
クラスメートは何度も目の前を通り過ぎたのに、
俺には気づかずに行ってしまった。
さらに15分くらい待って、もういいかと出ようとした時、
ポツ・・ポツ・・ザーッ!
急に雨が激しく降ってきた。
冬の雨は冷たい。濡れると風邪をひくかもしれない。
少し雨宿りしてから帰ろう。
2月だというのに不思議とその洞の中は暖かくて、
空気もまるで森の中にいるように爽やかだった。
木に当たる雨の音が幹を伝って優しく響く。
あまりの心地よさに、知らぬ間に眠ってしまったようだ。
目が覚めた時には雨は既に上がり、雲の切れ間からは青空が見えていて、
なぜか気分もすっきりと晴れやかだった。
それからはクラスメートに追いかけられたり学校でいやなことがあると必ず
その木の洞に入り込んで本を読んだりゲームをしたり、
時には眠ってしまったりして穏やかな時を過ごすようになった。
そんなある日。
「ねぇ、もう日が暮れるよ。」
「・・・ん?」
柔らかな声に目を開けると、洞の外から若い男の人が覗き込んでいた。
「あっ! ごめんなさい。」
勝手に入ったから怒られると思い、頭を下げる。
「別にいいけど・・・、もうすぐ暗くなるよ?
帰らなくていいの?」
「えっ? すみません。 帰ります。」
洞から出たとたん、冷たい外気に触れてぶるっと震える。
まだ春は浅く、夕方になると気温がぐっと下がってくる。
「ほんとにすみませんでした。」
見上げたその人は、男性なのにすごくきれいで、
優しく微笑む黒目がちな瞳に吸い込まれそうな気がした。
カーッ カーッ・・・。
もう空は茜色に染まり、カラスの声が物悲しく響く。
妖は寄り付かない神社だけど、こうなると別の意味で怖い。
早く帰ろう。
走り出してからもう一度頭を下げようと振り返ると、
もうその人はいなくなっていた。
それが雅紀との出会いだった。
≪つづく≫
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Mステ中に失礼します。なんと最初に歌ったんですって? 間に合わなかった~。
今から一回録画止めて観ます。
そしてこのお話、完全な見切り発車です。
上下じゃ納まらなさそうなので一応番号付けましたが、3つくらいの予定でいます。
途中で動画を挟もうかな~なんて考え中ですが、間に合う気がしない。