職場の同僚のママ友に原子力の専門家がいらっしゃり、先日来の彼女からのメールを送ってくださいました。
数日分の疑問がその時々のベストソリューションとして書かれていますので、数回に分けてアップします。ご本人の承諾を得ているとのことなので、メールの文章を以下にそのまま掲載させていただきます。
とりあえず、この8通目が最後です。
私の率直な不安もこのメールのおかげでずいぶん楽になりました。テレビや新聞で目にする専門家も同じことを言っているのですが、同じ一人の母親としての言葉であることがそのまま響いてくるためだと思います。
●第8通目● 3月19日8時2分送信
みなさま
最初は、ママ友と保育園の役員ML+数人の知り合いに送っていただけだったのですが送信先がだんだん増えてきました。結果として、間違いや言葉が足りない所を指摘いただくことも。ご指摘くださったみなさま、本当にありがとうございます。
今後も読まれた方で、ミス等みつけられましたら、是非ご連絡ください。よろしくお願いします。
今回のライ
ンナップは以下です。
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1. 「うんち・おならで例える原発解説原発くん」でいうと今の状況ってオムツからうんちが漏れてる状態?
2. 本当に臨界にはならないの?
3. レントゲン○枚、CTスキャン△回という説明は適切?
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1. 「うんち・おならで例える原発解説原発くん」でいうと今の状況ってオムツからうんちが漏れてる状態?
3月18日 午前5時25分送信の6回目の情報の中で紹介した「うんち・おならで例える原発解説原発くん」。では、今は「おなら」なのか「オムツの中でうんちしちゃった」状態なのか、「オムツからうんちがはみでちゃった」状態なのか。どれでしょう?
私の見解は「おなら」です。ただ、これは私の見解なので、今の状況を「オムツの中でうんちしちゃった」と捉える人もあるかもしれません。とはいえ「オムツからうんちがはみでちゃった」状態とは、いわゆる「最悪のケース」・・・ただこの言い方にはいろいろ議論があり、私としても適切な表現とは思わないので「想定しうる一番悪いケース」とさせてください。
その「想定しうる一番悪いケース」とは
・原子炉の中で“臨界”という普段原子炉内で起こっている核分裂を連続させて起こらせる状態が起き、 圧力容器および原子炉格納容器に穴があいた
・使用済み燃料のプールにおいて、“臨界”になった
のどちらか。つまりキーワードは“臨界”です。
ご質問の方は、すでにオムツからうんちがはみだしている状態ではないかと心配なさっていらしたのですが、今はそうではありません。
2. 本当に臨界にはならないの?
では、本当に“臨界”にならないの?という疑問を持たれるかと思います。これに対し、私が副委員長をしている日本原子力学会倫理委員会で委員長をしている東北大学名誉教授の北村正晴先生が、田口ランディさんとう小説家からの質問に的確に回答くださいました。北村先生は「前段の再臨界可能性に関しても、小生は若干厳しい見方をしておきたいと思います。」としたうえで考察された想定しうる一番悪いケース」の結論は
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【判断1:】
燃料プールで燃料が溶融し,そこで原子炉臨界状態が出現するという再臨界現象はおそらくは起こらない。(なおホウ素投入はないと仮定している)
【判断2:】
再臨界状態が起こる可能性は圧力容器内部の方が相対的に高い。(こちらの場合もホウ素投入の効果はある。しかし再臨界を抑止できると保障することまでは困難)
【判断3:】
再臨界は望ましくないことは当然であるが、実害はチェルノブイリ事故とは比較にならないくらい小さい。爆発的事象は起こらない。再臨界による中性子放出量の増加は圧力容器、格納容器、遮蔽壁が存在しているので中性子線による住民への悪影響は生じない。
【判断4:】
以上を要するに、苫米地さん(編註: 苫米地英人さん、脳機能学者)のブログで引用されている「1つの原子炉がメルトダウンしても、被害が出るのは50キロ圏内。2つ以上の原子炉がメルトダウンしても、被害はあまり変わらない。現在の20キロ圏内の避難勧告は、妥当な判断。」という記述は理にかなっていると考えます。
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と書かれています。
詳しく読まれたい方は、http://getnews.jp/archives/105518 をご覧ください。
それにしても・・・少々愚痴の様で申し訳ないですが、私もちょっと手にした雑誌、あるいは個人のブログ等でかなりショッキングな記事を目にし、今までもありましたが、今回の、そしてこのタイミングにおいてのそうした記事に唖然としてしまいました。
一般的に、「安全」を説明しても、それを「いやいや、そういっている専門家は本当のことを隠していて、まったく安全なんかじゃない」という意見が出た場合、技術的な判断ができない方はどちらを信用するかはさておき、後者に不安を感じてしまうことが多いと思います。
こと、原子力の場合、自分で手にとって「これって本当にだいじょぶなの?安全なの?」と確かめることができるものではありませんし、わからないことが多すぎて、不安が大きくなり易く思います。
そんなときは是非ご連絡ください。
私が回答出来ない場合でも、私のまわりには北村先生をはじめさまざまな原子力専門家がいます。
今の状況の中、現地で対応している方もいらっしゃり、すぐに回答できない場合もあるかと思いますが、できるだけ迅速かつ的確に回答したいと思います。
3. レントゲン○枚、CTスキャン△回という説明は適切?
昨日、保育園の友人が家族で遊びにきてくださったのですが、その中のお一人がよく海外出張をなさる方で、被曝線量の説明の際に東京~ニューヨーク等の搭乗が引き合いに出されている状況に、少なからずショックを受けられているようでしたので、解説します。
すでに過去に書いた通り、被曝といってもその放射線源(放射性物質)がなんであるか、あるいは放射線の種類(α波、β波・・・なにで避けることができるか)によって異なります。
よって、測定された放射線量をレントゲン○枚、CTスキャン△回、東京~ニューヨークの往復■回などと説明するのは、わかりやすくしようとしている努力の結果であり、その努力はよくわかるのですが“正しい”かと言われればなかなか正しいと言い難いところがあります。
簡単にいえば、紙一枚でも防げるα波と、水やパラフィン、厚いコンクリートでやっと止めることができる中性子では、同じ○Svといわれても、まったく違うからです。
また1時間そこにいたら浴びると言うSv/hと瞬間で浴びる放射線量と比較するのもナンセンスです。とはいえ、飛行機に乗るのを怖がられる必要はまったくないですし、人体等への影響は、かならず瞬間の値だけではなく継続してそこに居続けた場合という検討がなされた結果が報道されます(「健康被害をもたらすことはありません」等)。安心ください。
尚、「マイクロシーベルト」と「ミリシーベルト」という単位をよく聞かれていらっしゃるかと思いますが
1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=100万マイクロシーベルト(μSv)
です。
よって、2000マイクロシーベルト(μSv)と訊くと、え?2000??大きくなくない?だいじょうぶなの??と思ってしまいますが、200万マイクロシーベルトで5%致死線量なので、2000マイクロシーベルトでも5%の致死線量といわれている値の1000分の1です。
これまた繰り返しになりますが、大量の放射線は人体に有害ですが、微量なら人体に影響はありません。万一の場合を考えることも、それに対しできる個個人が対策を取ることは重要ですが、とはいえ「マイクロシーベルト」というのは単位はとても小さいということを心にとめていただければと思います。
以上