ママたちへのメール(7) | とりあえず

職場の同僚のママ友に原子力の専門家がいらっしゃり、先日来の彼女からのメールを送ってくださいました。


数日分の疑問がその時々のベストソリューションとして書かれていますので、数回に分けてアップします。ご本人の承諾を得ているとのことなので、メールの文章を以下にそのまま掲載させていただきます。


●第7通目● 319日 31989分送信


みなさま


私への体調のご心配もいただき、ありがとうございます!

なにしろ頑丈なので、だいじょうぶです!+昨夜は少し寝ました。ってことで、今日の発信時刻が遅くなりました。



みなさまからの質問も、ちょっと落ち着いてきて、今回かなりマニアックというか一定の知識がある(物理の知識量が豊富)方からの質問だったりもあり、ちょっと個別対応させたりしていただきますが、了解ください。


以下、今回のラインナップです。


と、その前に1点。

過去の発信したものを、送信日時を明確にしたり誤字脱字や単語が抜けていることで誤解を生じやすいようなところ等簡単な修正を加えたものをまとめました。もし今から友人に転送なさる方等いらっしゃいましたら、お知らせください。添付ファイルでもメール本文でもご利用しやすい方でお送りします。



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1. ほんとうに避難しなくてだいじょうぶ?

2. 今、東京から離れているんだけれど、いつになったら戻って大丈夫?

3. 停電はいつごろには安定するの?

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1. ほんとうに避難しなくてだいじょうぶ?


だいじょうぶです。

過去のチェルノブイリ事故などを見ても200km離れている東京で避難する必要はありません。ちなみに、東京の測定値は平常値が毎時0.0280.079マイクロシーベルトですが、317日の日経新聞に掲載されていた16日午後4時~午後5時の観測値は毎時0.054マイクロシーベルトでした(この値を1年間浴び続けると473マイクロシーベルト=0.473ミリシーベルトです)。



心配すべき被曝量ですが、すでにいろいろなところで掲載されているものにもあるとおりで、これは一度にまとめて被曝した場合ですが、

 250ミリシーベルトの被ばく:白血球の減少。

 500ミリシーベルトの被ばく:リンパ球の減少。

 1,000ミリシーベルトの被ばく:急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁。

 2,000ミリシーベルトの被ばく:出血、脱毛など。5%の人が死亡する。

 3,000 - 5,000ミリシーベルトの被ばく:50%の人が死亡する

です。



それから、私も今回のことでいろいろ調べた結果、実は過去には米露を中心とした核実験の実施により、現在よりもより多い放射線量を一般の人々も浴びていたことを知りました。もし2011年が2010年よりも測定値が高かったとしても、それが健康に影響するかどうかはまったく次元が別の話です。


避難等については、単に一度(瞬間的)にどれだけ被曝するかではなく、そこで生活する=その状況の被曝をしつづけた場合まで含めての検討がなされます。そうしたことも理解し、安心して指示に従いください。



また子どもに対する心配ですが、乳幼児や若年者では特に甲状腺がんの発症率が高くなるのは事実です。日本産科婦人科学会のHPに「福島原発事故による放射線被曝について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)」というファイルがあり、ここでも述べられていますが、まずは50ミリシーベルトという被曝量を基準にして、それ以上の被曝をしたと考えられる場合にのみ心配ください。普通の被曝量については、子だからと特に心配はなさらぬよう。原爆でわかるとおり、被曝に対する知見は、大人だけではなく乳幼児あるいは成長期の子に対してのものも積まれています。ちいさい子い対して心配になるのはわかるのですが、子は怪我が治るのも早い(細胞の回復力が早い)等のこともちょっと思い出し、冷静にいていただければと思います。


※日本産科婦人科学会の当該PDF資料は

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110316.pdf

です。



2. 今、東京から離れているんだけれど、いつになったら戻って大丈夫?


福島第一原子力発電所のことが不安で東京を離れていらっしゃるのでしたら、「冷却機能が安定した」という状況を目安にいただければと思います。

物資が心配でしたら、そろそろ・・・・一時行われていた買占め等も落ち着いてきたようですのでだいじょうぶかと。


地震については、私はなんとも言えません。ごめんなさい。


停電については、書き3を参考ください。



あっ、私自身は、避難する必要はないといっていますが、だからといって、避難することを否定するつもりはまったくないです。いちばんは本人が安心すること。それに、親が安心していない状況では、子はもっと不安になり不安定になると思いますから。子のためにも、安心して過ごせる場所はどこかとお考えください。



私は私としてこうした情報発信により、みなさんが冷静に判断できるように。不要な心配をいだかなくて済むようにと思っていますが、避難指示を越えた地域での個個人の避難するかしないかの判断は、私を含む専門家がすることではなく、個個人がすることです。

みなさんが自分の判断でしていただく。それがいちばんです(先日、避難する友人に「お土産待ってる~」といったら笑われました)。


専門家の中には、無理に実家等に帰って環境がかわり、ストレスをもつことを懸念したりする人もいますが、何より本人が納得していること、不安がない状況がいちばんと私は考えますし、自身として、避難の必要のない方まで避難されるような状況を強いてしまっていることに、普段からもっと適切な情報提供をしていなかったこと、あるいは今回のような津波やそれによる影響を予想できなかったことを申し訳なく思っています。



3. 停電はいつごろには安定するの?


現在の東京の停電は、福島第一原子力発電所だけの問題ではなく、火力発電所なども大きな影響を受けていることにあります。現在、東京電力では現在止まっている火力発電所の復旧等々で4月末には復旧を目途としています。ただ、今回海水を使った原子力発電所は廃炉が決定と思われます。動かせないことはないのですが、すべての機器を洗って・・・とたいへんですし、現場の放射線量、周辺の住民の方を含めた社会情勢・・・廃炉は決定でしょう。


また廃炉しない原子力発電所を運転するかも、技術的にも、社会的にもさまざまな検討や議論がなされなければならないでしょう。中越沖地震の影響で一部まだ運転が開始されていない柏崎刈羽原子力発電所(新潟)も残りの運転を開始するか不明です(社会情勢のため。尚、すでに運転を開始しているものは現在も運転を続けています)。



よって、4月に一旦おちついたとしても、今まで原子力発電所に頼っていた東京で、電力需要が伸びる夏などにどうなるかはわかりません。輪番停電を行うかはともかく、節電への心がけは引き続き行っていただきたく、よろしくお願いいたします。



以上