ママたちへのメール(6) | とりあえず

職場の同僚のママ友に原子力の専門家がいらっしゃり、先日来の彼女からのメールを送ってくださいました。


数日分の疑問がその時々のベストソリューションとして書かれていますので、数回に分けてアップします。ご本人の承諾を得ているとのことなので、メールの文章を以下にそのまま掲載させていただきます。


●第6通目● 318日 午前525分送信


みなさま(318日 午前525分送信)

今回は以下のラインナップです。

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1.地震によるPTSD(Post Traumatic Stress Disorder; 急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害)について

2.最悪の事態が起きたらどうなるの?

3.(私の見解は)楽観的過ぎない?

4.洗濯物は干してもだいじょうぶ?

5.食品の放射能汚染の心配は?

6.ほんとうに情報隠ぺいはないの?

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です。


またまた今日も長文ですが、よろしくお願いします。+質問いただいた方、結局日中には返信できずごめんなさい。


1.地震によるPTSD(Post Traumatic Stress Disorder;急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害)について


友人よりいただいた情報です。



日本小児精神医学研究会が災害したことで、こどもにPTSDが起きていないかを心配し、リーフレットを作成しています。

PTSDとは、非常に強い恐怖の体験を受けて、心が混乱したせいで起きるものです。以下に具体的な症状とその対応について記しますが、対応は、少なくとも2・3カ月間から半年間、また必要に応じてそれ以降も絶えず繰り返して下さいとのことです。


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PTSDの具体的な症状】

ž 表情が少なく、ぼーっとしていることが多い。

ž 話をしなくなったり、必要以上におびえている。

ž 突然興奮したり、パニック状態になる。

ž 突然人が変わったようになり、現実にないことを言い出す。

ž そわそわして落ち着きがなくなり、少しの刺激でも過敏に強く反応する。

ž いらいらいしていて暴れたりする。

ž 吐き気や腹痛、めまい、息苦しさ、頭痛、頻尿、おねしょ、眠れない、からだの一部が動かない、などの症状を強く訴える。

ž 今まで、言うことを聞いていたのに反抗をする。または、逆に、急に素直になってしまった。


PTSDの対応】

まずは、安全・安心を感じること、そしてよく眠れることが大切です。

 家族が集まれたから「もう大丈夫」「ここは安全だよ」「守ってあげるからね」と伝える。

 みんな集まっているから、安心していいことを告げる。

 「心配なことがあったら無理しないで教えてね」と告げる。

 こういうできごとが起こってしまったことは、「あなたのせいではない」「誰も悪くない」「○○が出来なくても恥ずかしくないよ」と告げる。

 自分の身におきた恐怖の体験について、子どもが自分から話し出した時は、無理にやめさせようとせず、その事実や怖さに耳を傾けてあげてください。(※ただし ⓐ軽度の場合で、ⓑ子どもに表現する気持ちがあり、ⓒ被災時の気持ちを共感できる雰囲気や、体験を共有しうる場合に限ります)

 痛いところがあったら、さすってあげて下さい。

 お子さんを1人にせず、そばによりそって下さい。できればスキンシップを心がけてください。

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以上、日本小児精神医学研究会のHP http://homepage2.nifty.com/jspp/PTSD_parents.pdf  より。


でも、こうした対応っていつでも子はしてほしいものだと思いますし、今、具体的な症状が出ていない子であっても、先日の地震には驚いたこと間違いないと思います。乳児、幼児は、そもそもで地震のメカニズムも知りませんし。私も一親として心して子と接したいと思います。


※この情報は、区議の方や区役所にも伝えたので、後日保育園等で関連する配布物があるかもしれません。


2.最悪の事態が起きたら、東京はどのような状況になるの?

この「最悪」の設定がかなり難しいです。

福島第一には計6基の原子力発電所があります。質問くださった方は、一つが爆発して、その影響で6号の機が全部爆発してしまうことを心配していらしたのですが、それはありません。火が出て・・・というような他に影響を及ぼすような爆発というのは、「臨界(発電がおこなわれている時の原子炉内の状況)」という核分裂が行われている状況にならない限り起きないと考えるからです。


すでに制御棒が入っていることから、「臨界」が起こるには、燃料が溶けて圧力容器という燃料が入っているカプセル状の器の下の方にたまって・・・とそれなりの状況と時間を要する状況がある必要があり、私はそれはないと考えます。・・・というのが、情報その4で書いた「4.福島第一の最悪事態とは、チェルノブイリのようなことはおきることなの?」部分の背景でした。


そのうえで考える「最悪」は、水蒸気爆発もしくは水素爆発による原子炉格納容器および圧力容器の両方が破壊されることです。水蒸気爆発と水素爆発の詳細はここでは説明しませんが(知りたい方は、ここ数日の新聞を読んでください。解説があるはずです)、これにより、もし圧力容器およびそれを囲んでいるコップをさかさまにしたような形の原子炉格納容器に穴が開いたとしたら、多くの放射性物質が飛び散ることが考えられます。ただ、この場合も東京には健康に影響をもたらすような害は起きないでしょう。



ポスペ等の開発をなさったメディアアーティストの八谷和彦さんによる「うんち・おならで例える原発解説原発くん」というのがあります。私にはとてもわかりやすいと感じたので(一専門家として「やられた!」ってくらい、わかりやすいです。私が考える最悪も同じです)、よろしければご参考ください(YouTubeです)

http://www.youtube.com/watch?v=ZUzBvxdnCFM


いずれにせよ、燃料が見える状況になってしまったら(圧力容器および原子炉格納容器に穴があく)現在被曝量を気にして作業されている現場の方々も、被曝量など気にせず対応されるのでしょう。たぶん・・・今だって彼らはそんなの気にせずより効率的に状況を改善したいと思っていると思います(私がもし現場にいたらそう思います)。でも、それは許されない。。。


自身としては、一般の方に害が及ばないのはもちろんですが、現場の方々も守りたいと願います。


3.(私の見解は)楽観的過ぎない?

楽観的あるいは性善説ではないかとの質問がありました。


私自身は、私の考えが、楽観的であるとか性善説であるとかは私以外の方が判断するべきものと考えています。私としては、それが楽観的かとか性善説であるかはさておき、一専門家として、責任もって情報発信しているというだけです。


正直、原子力というのは、それが専門というだけでそれまで普通に話していた人と縁を切られることがありえるものでもあります。ですから、別に隠すつもりはないのですが、とはいえ、このように多くの方にface to faceではない状況で、その専門であることを伝え、かつ発言をすることは、今の状況がなければしないことでした。



私は私として、いい加減なことも、むやみに安全を繰り返しもしません。私自身はその専門家として、なにかあれば被爆してでもというか被曝なんて気にせず飛び込む覚悟があります。しかし、みなさんをはじめ一般の人が健康を害するような被曝はあってはならない。絶対にダメ!と思っています。


ですから、その状況のときは、ちゃんと伝えます。できるだけ早く。

みなさんを守るって言い過ぎかもしれませんが、ある意味そういう責任を感じた上で、書いています。


4.洗濯物は干してもだいじょうぶ?

だいじょうぶです。屋内退避の指示が出たら、外には干さないでください。今は、ぜひ外に干して、おひさまのにおいのするものを着てください。


5.食品の放射能汚染の心配は?

今回の事故を受け、厚生労働省は、事故後の食品の風評被害を防ぎ、安全性の目安を明確にする目的によって、食品の放射能汚染について暫定的な基準を設けるとともに、それを上回る場合は出荷や販売をやめるよう都道府県や政令市に通知しました。各自治体で適切に検査が行われますので、水、牛乳、肉類、農産物、海産物・・・市販されているものは安心して購入ください。


個人的には・・・できるだけ被災地のものを積極的に購入し、被災地支援につなげたく・・・風評被害がないことを切に願います。

6.ほんとうに情報隠ぺいはないの?


東京電力や国に対する情報隠ぺいについていろいろ言われているようです。

私が思うのは、彼らにはまったく隠しているという意識がないのではないかということです。私自身、私が知りたい情報が出ている訳ではなく、彼らの出す情報で満足していません。よって、情報隠ぺいがあるかないかというより、東京電力あるいは国、日本の原子力機関というものに情報を隠ぺいする体質がある(本人たちは気付いていない)ということと考えます。これは事態が落ち着いてから、大いに議論すべき(個人的には改善すべき)ところでしょう。

とはいえ、こと放射線量については、その2でも書いたとおり、隠したところで、すぐにバレますから、情報を隠す意味がありません)。各自治体発表のものも含め、嘘はないと考えます。



少なくとも東京にいる者がどうすべきかの判断は、起きた事象はもちろんですが、それによる放射線量で決まるので、そこは信頼し、指示に従って行動ください。指示以上のことをする必要はありません。


以上