黒姫へと出掛けると
アファンの森からの帰り道
もう
家主のいないそこへと立ち寄り
トントン とドアをノックしてみる
すると
あの頃のように
やあ! 元気? と
そのドアが開き
大きな男が顔を出す
そんな氣がして…
一昨年の春
ニックさん家の庭で
芽を出していたどんぐり
それを
3つほど救出して来た
それがわずかに育ち
秋には紅葉し
冬にそのすべての葉を落とし
じっと2度の冬を耐え
この春にまた
新たな芽を付けて
成長し始めたけれど
その1本は
原因が分からぬまま
枯れてしまった
しかし
あとの2本はスクスク育ち
今
我が家の庭で 2Mにもなり
更に
それは成長し続けている
さて
これをどうしようか? と思えば
この秋に
近くの公園か
もしくは
黒姫の森へと
戻そうかと思ってみるが
分からない
このコナラの木は
秋に
多くのどんぐりを落とし
その多くは
森の獣たちの食事となる
残ったものが
春に芽を出すけれど
そこは
仕方なくも森の掟
そのほとんどが淘汰され
現実には
1つも残らない
そう
そこには大きなコナラの木があって
それがやがて枯れ落ちた頃
やっと場所を譲るのだろう
さもなければ
森はとっくに
コナラだらけとなり
それを
森の自然は許さない
アファンの森の
ニックさんが愛したマザーツリーもまた同じで
秋には
その根元が
数え切れないほどの
どんぐりで埋まるけれど
その近くで
発芽しているどんぐりを見掛けても
それらが成長することはなく
深い雪と
多くの獣たちとの戦いで
終えてしまうのだろう
それでも
昨今のナラガレなる病により
そのマザーツリーの危機を感じ
ならば
わずかでも その対策をと
どんぐりを拾い集め
我が家で育ててみる
それは
すでに何年もに渡り
試して来たけれど
高原の気候と
下界の気候との差は
なかなか埋められず
失敗ばかり
今年もまた
昨年のどんぐりがいくつか発芽し
頼むよ! って
声を掛けながら
育てているが
はてさて
どこまで頑張ってくれるのか…
黒姫の森へと出掛ければ
真っ先に
ニックさんの眠る
メモリアルストーンへと向かい
あれからね… と
勝手に呟きながら
任せて下さい! と
言葉を締める
昨今
黒姫ですら暑い夏となり
未来を心配するが
間に合うのだろうか
いや
間に合わせねばならない
幸あれ…