今朝
フジコヘミングが夢に現れて
あんたね… なんて
目の前に立ちはだかる
フジコ?
峰不二子ならなあ なんて
暴言を吐けば
あら
あたしだって
最初から
ババアだったわけじゃないのよ
若い頃のあたしに
会えなかったなんて
あんた 残念ね…
若い頃ね
ルパンにでも
惚れらたのかい?
そうよ
ルパンがしつこくてね
でもあの人
早くにいなくなっちゃったから
あたし
ずっと独身のまま…
惚れてたってことかな?
そうねえ
いつの間にか
惚れちゃったってことかもね…
そう言えば
いつかの夢もまた
ちょいと揉めてたような…
最後に
あんた そろそろ
会いに来なさいよ と
微笑んだことを覚えてる
確か誰かに
江東区辺りと聞いた
そちら方面に出掛けた時にでも
寄り込んでみようかな…
フジコ
クラシックは
歌詞のない曲は
ちょいと苦手だけれど
いつか
ここだけは聴いて置かねば思い
出掛けた近くのコンサートホール
やっと取れたチケットは
仕方なくもの2階席だったけれども
満席の会場は
老いも若きもで熱気に溢れていて
今か今かと
待ち望んでいると
スマートにエスコートされた
おばあちゃんがゆっくりと現れ
中央のグランドピアノに
腰を下ろした
その姿は
なんとも氣品のある
それでいて
がむしゃらな
頑固ではない
そんな雰囲気
ようこそ とだけ
言葉にすると
だとだとしく
そこへと歩いて来た姿は一変し
静かに鳴り出したピアノは
その一音一音が
刺さるように聞こえて来た
評論家や
プロの方々からは
賛否両論あろうけれど
まったくの素人の僕には
上手さよりも味で
分からない中で
これぞ! と響く音が
とても心地良くさせてくれた
終演には
スタンディングでの
満場の拍手が鳴り響き
これがすべてかと
嬉しくなった
またいつか
近くにお越しの際にはと
思っていたけれども
後にも先にも
1度だけのそれで
終えてしまった
時折
こうして
それらを探し
振り返ることがあるのは
何を求めているのだろう
きっとそれは僕も
分からないまま
終えるのだろうけれども…




