ギ・ド・モーパッサン(アンリ・ルネ・アルベール・ギ・ド・モーパッサン)は、1850年、仏国のノルマンディー地方で生まれた。裕福なブルジョワの家庭だったが、父親は女性関係が派手で、アンリが12歳のころ、母親は彼とその弟を連れて家を出、父親と別居し、エトルタの別荘で暮らすようになった。
アンリは、13歳で寄宿学校に入れられたが、その宗教色の強い教育方針になじめず、18歳のときにルーアンの学校へ入り直した。
やがてプロシアとフランスの普仏戦争がはじまり、モーパッサンは召集されて戦闘に参加した。彼は無事エトルタへ帰ってきたが、戦場で目にしたさまざまなできごとをきっかけにして、彼の人間不信がはじまったと言われている。
22歳のとき、モーパッサンはパリに出て、海軍省の役人になった。以前から詩を書いていた彼は、母親の友人だった作家のフローベールに師事し、小説を見てもらうようになり、フローベールの紹介で、エミール・ゾラとも親交をもつようになった。フローベールは『ボヴァリー夫人』『サランボオ』、ゾラは『居酒屋』『ナナ』を書いた、いずれも文学史上の巨星である。
25歳のころから短編小説を発表しだしたモーパッサンは、30歳のとき、ゾラたちと出した同人誌に『脂肪の塊』を発表。この作品によって作家としての地位を確立。以後、『女の一生』『ベラミ』など長編を数編と、二百とも三百とも言われる数の短編を書いた。
モーパッサンは、神経を病んでいて、神経衰弱や頭痛、不眠に悩み、麻薬を用いだし、自殺未遂を起こし、精神病院に収容された。そして、そのまま病院で、1893年7月に没した。42歳だった。
「文学の王国」フランスには、スタンダール、ユゴー、バルザック、ロマン・ロラン、プルーストなどなど、世界文学の高峰がいくつもそびえているが、フランス文学の短編の名手となると、やはりメリメと、このモーパッサンということになるだろう。
モーパッサンの短編を自分は『脂肪の塊』を含め、二、三十編くらい読んでいると思う。小学校時代に読んだ『首飾り』が、数あるモーパッサン作品のなかでも有名な作品らしいと知ったのは、ごく最近になってからだった。気のきいた筋の運びと、どんでん返しのある、皮肉な味わいの好短編である。ただし、後をひく、深みのある読後感が残るという意味では、たとえば、同じ貴金属を扱った短編でも、『宝石』のほうが感じが深い気がする。いずれ、みごとな短編小説なので、読み比べ、おすすめです。
モーパッサンの経歴では、戦争体験が重要な位置を占めている。戦場での経験が、彼の作家としての視座というものをしっかりと定めた面もあったろう。しかし、その経験は、彼の人間としての精神を、確実に壊し、修復不能にしてしまった。
たった十数年の活躍で、不滅の輝きを放ちつづける作品群を残した天才作家であり、その生涯が短かったのが惜しまれる。
(2015年8月5日)
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