4月11日・森高千里論 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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4月11日は、評論家、小林秀雄が生まれた日(1902年)だが、シンガーソングライターの森高千里の誕生日でもある。
1990年ごろ、どこかの女性月刊誌に一般女性を対象にしたアンケート結果が載っていた。
「目と聞いて、あなたが思い浮かべる有名人は?」「髪と聞いたら?」
といった調子で、それぞれベスト20が発表されていた。どのアンケートでも、たいてい上位には小泉今日子とか中山美穂とか、当時の人気アイドルの名が並んでいて、あまりかわり映えしなかった。けれど、
「脚と聞いて、あなたが思い浮かべる有名人は?」
というランキングだけはちがった。ほかのどのアンケートにも登場していない「森高千里」がそこだけに顔を出していて、しかも断トツの一位だった。それを見て自分は、一般女性による「モリタカ」の認知のされ方を、あらためて教えられた気がした。

森高千里は、1969年、大阪の茨木で生まれた。幼いころに九州は熊本へ引っ越し、熊本で育った。音楽に熱中し、ギター弾き、ドラムをたたくなど、バンド活動に打ち込んでいた彼女は、ショッピングモールの食堂でウェイトレスのアルバイトをして、楽器購入費を捻出するという、典型的なバンド・ミュージシャンの青春を送っていた。
17歳のとき、コマーシャルのイメージガールコンテストでグランプリをとったのをきっかけに上京。東京の高校に編入してタレント活動を開始した。
18歳で映画「あいつに恋して」に主演。その後は歌手活動に力を入れだした。
19歳のとき、みずからの体験をもとに作詞した「ザ・ストレス」を発表。素朴で斬新な歌詞とダルな曲調、ミニスカートのウェイトレス姿でお盆をもって踊る「モリタカ」は一躍コスプレ系アイドルとして人気が沸騰した。
「ミーハー」「非実力派宣言」「臭いものにはフタをしろ!!」「雨」「勉強の歌」「この街」「ファイト!!」「私がオバさんになっても」「ハエ男」など、実感をそのまま歌にする生活詩人のシンガーソングライターとして活躍。はじめは美貌とスタイルのよさ、とくに脚線美を協調したコスプレで男性ファンが多かったが、しだいにその歌への共感から、女性へもファン層が広がった。
30歳のとき結婚、出産を機に芸能活動を休業。40歳ごろからドラマーとし、また歌手として、公の場に姿を見せるようになってきた。

「モリタカ」は、女性アイドルが苗字で呼ばれるようになったハシリだと思う。

自分はいまでも「ザ・ストレス」の振り付けが踊れる。
この曲をはじめて聴いたときは衝撃だったが、「臭いものにはフタをしろ!!」「ザ・バスターズ・ブルース」「うちにかぎってそんなことはないはず」といった歌にも驚かされた。「バスターズ・ブルース」など、OLが自室に現れたゴキブリと延々と対決する歌で、それをモリタカはセクシーなコスプレで歌うのである。

モリタカは「非実力派宣言」のなかで、こう歌った。
「始めから私はこんなもんよ。期待をしてたのね、ごめん」
「実力は人まかせなの。実力ないわ」
彼女はいまも、細野晴臣などベテラン・ミュージシャンたちとコラボレーションし、ボーカル以外にもドラマーとしてレコーディングセッションに加わる実力派ミュージシャンである。
森高は、その美貌とスタイルのために、あえて実力をないものとして、それを看板に掲げるという、とても屈折した売り出し方をしたアーティストである。ほかにちょっといない、すごくユニークな存在で、こんな人もいるのだと感心してしまう。
(2014年4月11日)


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