2月23日は、ロック・ミュージシャン、宇崎竜童が生まれた日(1946年)だが、シンガーソングライターの中島みゆきの誕生日でもある。
自分は、「時代」を歌っていたころから中島みゆきを知っていたし、まわりの友人たちは彼女の歌をよく聴いていたけれど、長らくどこがいいのだかピンとこなかった。でも最近、遅ればせながら、その魅力がすこしわかってきた。
中島みゆきこと本名・中島美雪は1952年、北海道の札幌で生まれた。父親は産婦人科医で、子どものころは、岩内、帯広、山形、ふたたび帯広と引っ越しが多かった。
帯広の高校を出、札幌の女子大で国文学を専攻した。高校時代から自作の歌を歌うようになり、大学時代はあちこちの音楽コンテストに出場し「コンテスト荒らし」と呼ばれた。
大学卒業後も、帯広を活動の拠点として音楽活動を続け、23歳のとき、音楽コンテストで「傷ついた翼」を歌い入賞。「アザミ嬢のララバイ」でレコード・デビューした。
同じ年におこなわれたコンテストで「時代」を歌い、グランプリ受賞。「中島みゆき」の名前はこの楽曲とともに一躍全国に知れ渡った。
以後「わかれうた」「悪女」「空と君のあいだに/ファイト!」「旅人のうた」「地上の星/ヘッドライト・テールライト」などを発表。ユーミンこと松任谷由美と並んで、ニューミュージック界の女王と呼ばれ、ユーミンが「純愛の神さま」であるのに対して、中島は「失恋の神さま」と、その歌の内容に陽と陰との対照があるとされる。
ほかの歌手に提供した楽曲も多く、研ナオコ「あばよ」、桜田淳子「しあわせ芝居」、工藤静香「黄砂に吹かれて(作詞のみ)」、吉田拓郎「永遠の嘘をついてくれ」、TOKIO「宙船(そらふね)」などのヒット曲がある。
自分が最初、中島みゆきの曲を聴いたときは、テーマと真摯に向き合った、やや暗い感じの内容を、若い声で朗々と太く歌い上げる変わった女性、という印象だった。
その後、ラジオの深夜番組をやっているのを聴いたら、軽く明るい、はじけたキャラクターで、そのギャップに驚いた。
彼女の写真を見たのはその後だった。いわゆるかわいこちゃんタイプの女性で、そのギャップに三たび驚いた。だから、自分にとって中島みゆきは、ばらばらなイメージをつぎはぎした感じの人である。でも、どの面の印象も、それはそれで悪くなかった。
ご覧になった方も多いかもしれないけれど、以前、タレントのマツコ・デラックスがテレビ番組のなかで、中島みゆき論を語っていた。中島みゆきの「タクシードライバー」の歌詞とそっくりな体験をしたことがあるとマツコは言っていた。失恋して、仕事も失い、心がボロボロの状態でタクシーに乗り、後部シートで泣いていると、タクシーの運転手が野球の話ばかりを延々と繰り返していた、と、歌詞そのままの体験談だった。
それを聞き、ああ、と、自分は納得するものがあった。
心がボロボロにくずれているのが、明らかに見てとれるとき、想像力を働かせて相手の心の内を察し、あえて相手の気持ちに触れないでおこうという思いやりがある。中南米や欧米人に、そういう心の遣い方は見たことがないので、ひょっとするとこれは日本人独特の気遣いかもしれない。一般に諸外国の人々は、あまり他人の心に想像力を働かせない。
そうしてみると、この歌に関して、中島みゆきの魅力は、とても日本的なものだという気がする。また、歌詞から、苦労人こそそういう想像力のある思いやりを発揮するものだと中島みゆきが考えているとわかる。これも芭蕉に通じる考え方で、日本的だと思う。
(2014年2月23日)
●おすすめの電子書籍!
『わたしにそれを言わせないで(一)女子高生の社長秘書』(香川なほこ)
孤児となった女子高生・赤池美奈は、放課後は社長秘書のバイトをすることに。ある夜、社長に意外な事実を告げられた彼女の心は、二人の男のあいだではげしく揺れはじめる。青春官能小説。
『ポエジー劇場 子犬のころ』(ぱぴろう)
絵画連作によるカラー絵本。かつて子犬だったころ、彼は、ひとりの女の子と知り合って……。愛と救済の物語。
http://www.meikyosha.com