12月6日・コミュニティー界の巨人キャット | papirow(ぱぴろう)のブログ

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 12月6日は、米コミュニティー史上の巨人、キャスリーン・キンケイド(愛称キャット)の誕生日である。自分は彼女とは何度か会い、彼女が書いた本を邦訳、出版した。自分の本のなかで彼女について書いたこともある。

 キャット・キンケイドは1930年、米ワシントン州シアトル生まれ。
 彼女が生まれた家庭は貧しく、ばらばらだった。彼女が小さいときに父親が亡くなり、母親はべつの男と再婚した。再婚相手のその義父によって、キャットとその妹は性的虐待を受け、そのかどで義父は刑務所に入れられた。それからキャットはおばに預けられたが、おばはこの姪に冷たく、つねに批判的だったという。
 17歳になったキャットは、こういう信条をもっていた。
「人間は誰でも、この世界にあるいいものや利点、それから不備などの悪い点をも含めて、すべてを平等に分けた自分の分け前を受けとる権利をもっている」
 そして、彼女は終生この信条をもちつづけた。

 キャットは35歳のころには、カリフォルニア州アズーサの町で、会社の事務仕事をしながらひとり娘を養う離婚歴のある独身女性となっていた。キャットは退屈さと無意味さをしか見出せない街の仕事に別れを告げ、娘を連れて、仲間をつのり、ワシントンDCで都市型コミュニティー「ウォールデン・ハウス」を立ち上げた。やがてそこの運営にゆきづまると、今度は、ミシガン州アナーバーでのコミュニティー会議に集まった人々と手と手をとりあって、ヴァージニア州ルイザの地にツイン・オークス・コミュニティーを創設した。
 このツイン・オークスは現代でもつづいていて、農場を経営し、家畜を飼い、ハンモックを編んで出荷し、また豆腐を作って売りながら、百人ほどの住人たちが、この上なく自由で愉快な人生を謳歌している。自分も何度か滞在したことがあるが、毎日がサマーキャンプといった感じの生活で、楽しくてしかたがなかった。ツイン・オークスは、おそらく現在ある世界にあるコミュニティーのうちで、もっとも有名な団体のひとつだと思う。

 ツイン・オークスの初期の様子については、キャットの『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』を、近況を含めたツイン・オークスの全体像については『コミュニティー 世界の共同生活体』をご参照いただきたい。
 ツイン・オークスの存在や、彼女の著書が、世界のコミュニティーの関係者に与えた影響ははかりしれない。その多くが短命に終わる運命にあるコミュニティーのなかで、ツイン・オークスは希有な成功例といえる。コミュニティーの世界では、キャットは偉大な成果をなし遂げ、数えきれない多くの人々に影響を与えた偉人である。

 キャットは2008年7月3日、ツイン・オークスの自室で静かに息をひきとった。
 その数カ月前、自分は彼女と会って話をしたが、それはとても幸運で、光栄なことだと思っている。
「ガンでなければ、もう3年くらいは生きられるでしょうが、わたしはもう長く生きられない」
 そのとき彼女はそういっていた。キャットのことばにこういうものがある。
「成功するためには、夢を現実にすり合わせる必要がある、けっして夢をあきらめることなく」
(2013年12月6日)



●おすすめの電子書籍!

『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』(キャスリーン・キンケイド著、金原義明訳)
米国ヴァージニア州にあるコミュニティー「ツイン・オークス」の創成期を、創立者自身が語る苦闘と希望のドキュメント。彼女のたくましい生きざまが伝わってくる好著。

『コミュニティー 世界の共同生活体』(金原義明)
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を具体的に説明、紹介。

http://www.meikyosha.com/ad0001.htm