6月17日は、名作漫画「エースをねらえ!」の作者、山本鈴美香(1949年)が生まれた日だが、創作家の明川哲也の誕生日でもある。「明川哲也」は「ドリアン助川」の別名も持っている、ミュージシャン、詩人、DJなど、多ジャンルで活躍するマルチアーティストである。
明川哲也は、1962年、東京で生まれた。本名は、助川哲也。大学では東洋哲学を専攻し、学生時代、劇団を主催していた。大学卒業後、雑誌のライターなどをへて、渡米。ニューヨークでバンド活動を続けた。
帰国して、33歳のころ、真夜中のラジオ番組、「ドリアン助川の正義のラジオ! ジャンベルジャン!」のパーソナリティを担当。その番組内で、中高生の電話による人生相談を受け付けた。寄せられた相談は、勉強の悩み、将来の希望といった内容から、恋愛問題、性的暴力、性犯罪、校内暴力など深刻な相談までさまざまだったが、彼は公式見解的でない、親身さと熱意でもって対応して人気を集めた。「がんばれ」ということばはけっして口にしなかった。「友だちがいない」という悩みに対しては、自分が友だちになるから、手紙か電話をと、自分の住所と電話番号を教えたという。この番組は38歳のころまで続いた。
以後、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディア媒体で、「明川哲也」または「ドリアン助川」の名前で独自の個性的な表現活動を続けている。
自分が彼をはじめて見たのは、NHKの教育テレビの若者向けのテレビ番組でだった。
近年になって、新聞上のコラム記事に「明川哲也」の文章が載っているのを読み、とても感銘を受けた。印象に残ったのは、たとえば、「やる気がでない」と題された、こんな文章である。
「やる気がでない時にどうしたらやる気がでるようになるのか。それがわかっていたら、ボクは違う人生を歩んでいたと思う。(中略)でも現実は、この一年も川原の石に腰かけて、アメンボの気持ちなどを考えていた。(中略)今のボクは、『命とはなんだ?』『存在とはなんだ?』『時間とはなんだ?』の三点セットを考えることに異様なやる気を抱いていて、蓄財にはあまり興味がない。これは困ったことだ。こういうことにやるまんな人は、社会からはずれて川原の石と化すような場面が多いし、答えが出てこないのでお酒も飲む。(中略)しかしそれでいいのだ。人はみな、その人らしく生きるために生まれた。やる気はそのためにあるのであって、他の誰かを演ずるためにあるのではないからだ」(朝日新聞、2011年5月9日夕刊)
いいこと言うなあ、と思った。
自分は、「アメンボの気持ちなどを考えていた」という部分など、とくに感心した。自分は、明川哲也の言うことすべてに賛成するわけではないけれど、この人は、よくテレビで見かける大学教授や経済評論家のような受け売りを言わず、自分で経験した、実感のある真実を言ってくれる、信用できる人だと感じた。それに、もう50歳になるというのに、中学生みたいな発言をしつづける、その純粋さもすてきだった。
自分は、子どものころから、アメンボを見て知っていたが、「アメンボの気持ち」はさすがに考えたことがなかった。一度じっくり考えてみなくては。そうやって考えると、世の中にはまだまだたくさん考えてみるべき余地が多いとわかり、自分の無学が恥ずかしくなる。人生は一生勉強である。
(2013年6月17日)
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