3/6・人類の至宝、ミケランジェロ | papirow(ぱぴろう)のブログ

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3月6日は、『灰とダイヤモンド』を撮ったポーランドの映画監督、アンジェイ・ワイダ(1926年)が生まれた日だが、イタリアの天才芸術家、ミケランジェロ・ブオナローティの誕生日でもある。
古今東西の芸術家たちのなかで、いちばんの高みに達したえらい芸術家はいったい誰だろうか、ということを考えてみる。
すると、やっぱり、ミケランジェロかな、という気がする。
美術の最高峰。人類の至宝。
そういう風に考えてみると、人が芸術作品を創作しようとすることは、とどのつまりは、ミケランジェロに迫り、それを超えようとする、およそ成功が覚束ない試みである。そうも言えるのかもしれない。

ミケランジェロは、1475年、イタリアに当時あったフィレンツェ共和国で生まれた。代々、小規模な銀行を営んできた家柄だった。
「乳を飲みながら、ノミとツチの使い方を覚え、人物彫刻のこつをつかんだ」
と語ったというほど、彼は小さいときから彫刻が好きだった。
ミケランジェロは、13歳のときに画家に弟子入りし、14歳のときには、すでに一人前の画家と認められていたという。
15歳のころ、当時フィレンツェで最大の権力者だったメディチ家が開いたアカデミーに参加。以後、ミケランジェロはメディチ家から庇護を受けたり、注文を受けたりして、メディチ家とは切っても切れない関係となる。
ただし、後援者であるメディチ家の当主が亡くなり、代がわりすると、ミケランジェロは仕事がなくなったりした。
また、当時、小国が分立していたイタリアでは、政変がたびたび起き、政権がよくひっくり返った。
メディチ家の君臨するフィレンツェも、その例外ではなく、政変が起きて、昨日の王だったメディチ家が今日は追放されるという事態も現実に起き、そんなときはミケランジェロもあわててフィレンツェを出、ヴェネツィアや、ボローニャへ引っ越していくのだった。
そんなイタリアで、あちこちと居を移しながら、土地土地の大貴族や教会の枢機卿など実力者から招かれ、注文を受けては、ミケランジェロは彫刻作品を彫り、壁画や天井画を描き、聖堂の建築に励んだ。
25歳のとき、サン・ピエトロ大聖堂の「ピエタ」を完成。
29歳のとき「ダヴィデ像」。
37歳のとき、「システィーナ礼拝堂天井画」。この壁画製作は、組んだ足場に登り、無理な姿勢で上を向き、垂れ落ちてくる絵の具に目を痛めつけられながらの難行苦行だったらしい。
ローマ教皇の霊廟の一部である「モーゼ像」も同じころに完成している。
66歳のころ、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の祭壇壁画「最後の審判」。
そして、設計、デザインを任されたヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂のドームの建築を進めている途中の1564年、ミケランジェロは没した。88歳だった。この高齢で、建築現場の現役というのもすごいと思う。
ミケランジェロの遺体は、遺言にしたがい、フィレンツェへ運ばれ、埋葬された。

自分の記憶によると、ミケランジェロは、作品やデッサンのほか、手記も多く残していて、そのなかで、たしかこういう意味のことを書き残していた。
「自分は大理石にノミをふるって、作品を作り出すのではない。あらかじめ大理石のなかに、作品が埋もれているのを、ノミで掘り出すだけである」
さすが天才芸術家。ミケランジェロにのみ許される、しびれる科白である。
夏目漱石の短編に「夢十夜」があって、そのなかのひとつの夢の話に、運慶がこれと同じようなことを言っていたという一節がでてくるが、あれはたぶん、漱石がミケランジェロからアイディアを拝借して使ったものだろう。

ミケランジェロは、自分の内からわき上がる情熱に突き動かされて、芸術作品の創造に無心に打ち込んだ芸術家だった。
服や履物にも、食べ物も頓着なく、ありあわせのものを食べ、作業着のまま寝て、制作をつづけた。
ぜいたくな生活や、人付き合いに興味を示さない、孤独を好む、根っからの職人的芸術家だったようだ。
そんなところも、自分はとてもひかれる。

自分は一度、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂に行って、「ピエタ」を見たことがある。
十字架からおろされた息子イエスの遺体をひざに抱いて嘆き悲しむ聖母マリアの図である。
薄暗い、ガラス張りの部屋のなかに安置されていた。
鳥肌が立った。
自分も、若いころから、
「この大理石のなかにこそ、自分の求める像が埋まっているのにちがいない」
そう思っては、行き当たった大理石を割ることをつづけてきたのだが、いまだに像が埋まっているのに出会っていない。
(2013年3月6日)



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