1/29・ロマン・ロランの神さま | papirow(ぱぴろう)のブログ

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Something to remember today. 今日の日が流れて消え去ってしまう前に。

1月29日は、フランスの作家、ロマン・ロランの誕生日。
自分は若いころからロマン・ロランが好きで、『ベートーヴェンの生涯』『ミケランジェロの生涯』『ラーマクリシュナの生涯』などを読んだけれど、代表作の長編『ジャン・クリストフ』は大学生のときに読んだ。
『ジャン・クリストフ』は、まちがいなく世界文学の最高峰のひとつで、ジャン・クリストフという作曲家の一生を描いた小説である。
読んでみて、ものすごい小説だと思った。
人生のさまざまな局面があり、たくさんの様々な人々がクリストフの人生にからんで登場し、いろいろな事件があって……。
人生そのもの、で、とにかく長い、大作だった。
でも、とてもおもしろかった。
読むのにそれなりに時間はかかったけれど、読み進むのに苦労した覚えはまったくない。
終始楽しみ、胸をどきどきさせながら、何日かで読み通したと思う。
自分もまだ若く、長い読書に耐えうる体力があったのだなあ、と思う。

ロマン・ロランは、1866年1月29日、フランスのクラムシーに生まれた。
父親は公証人で、ロマン・ロランが14歳のとき、一家はパリに引っ越した。
高等師範学校をでたロランは、歴史や美術史、芸術史を学校で教えながら、雑誌に文章を発表。
33歳のとき『ベートーヴェンの生涯』を発表。
好評だったこの評伝を足掛かりに、ベートーヴェンをモデルとした音楽家を主人公に据え、彼の生まれてから死ぬまでの一生を描ききる大長編小説を書くことを決意。それが、38歳から46歳のころにかけて『ジャン・クリストフ』である。
『ジャン・クリストフ』を書き終えた後は、教師をやめ、執筆に専念した。
49歳のとき、ノーベル文学賞受賞。
56歳から67歳にかけて、長編『魅せられたる魂』を執筆。
生涯を通じ一貫して、戦争反対、ファシズム反対、ヒューマニズムを訴え、国際社会に向けて発言しつづけた。
日本の満州侵略はもちろん非難したし、ナチスが台頭していたドイツからのゲーテ賞授与を拒否した。
シュバイツァー、アインシュタイン、ヘルマン・ヘッセらのほか、マハトマ・ガンジーやタゴールなどとも交友があり、ラーマクリシュナや、ヴィヴェカーナンダなどインドの聖人についての評論も書いた。
1944年12月、フランスのヴェズレーで78歳の生涯を終えている。

いま、肝心の『ジャン・クリストフ』の本が手元にないので、何十年か前に読んだ記憶だけでものをいうのだけれど、あの小説のなかの、たしかクリストフの青年時代を描いたくだりに、彼が神さまの声を聞く場面があったと思う。
クリストフが、どうして自分はこんなに苦しまなくてはならないのか、どうしてこんなに悩まなくてはならないのか、と、つらい思いをしていると、そこへ神さまの声が聞こえてくるのである。神さまはたしかこういう意味のことを、クリストフに語りかけていたと思う。
「クリストフ、悩みなさい。苦しみなさい。悩み、苦しむむこと。それこそが、わたしがおまえに望むことなのだ」
表現はちがうかもしれないけれど、そういう内容だったと思う。
このくだりに、自分は衝撃を受けた。
「そ、そうかぁ、神さまは、われわれ人間に、そういうことを望んでいるのかぁ」と。

『ジャン・クリストフ』の、自分はどの部分もおもしろく読んだけれど、なかでもとくに美しい部分があって、それがたしか、クリストフの女友だちの、そのお母さんが若いころの物語、という、主人公にはぜんぜん関係のない話で、それにびっくりした。
でも、この美しさは、いったいなんなのだろう、と思うくらいすばらしい部分で、あまりに美しい話なので、そこだけ切り離し、独立した一冊の本になったりもすると聞いた。

ぼんやりした記憶を頼りに書くと、漠然とした感じで、しまりがなくなってしまいました。
でも、『ジャン・クリストフ』を読んで、ほんとうによかったと思う。
たとえば、あれを読まずに、一生を終えた場合を想像しようとしても、もはや想像できない、それくらい生きることと密接に関係した読書の喜びがそこにあったと思う。
まあ、読まなければ、そのありがたみもわからないのだから、いくら説明しても、わかりっこないのだけれど。
まだ読んでいない方は、おすすめです。
(2013年1月29日)



著書
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句』

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