1/12・わが青春の村上春樹 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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Something to remember today. 今日の日が流れて消え去ってしまう前に。

1月12日は、作家、村上春樹の誕生日である(敬称略)。
自分は、村上春樹の愛読者で、デビュー当時からずっと彼の作品を読みつづけている。
大学1年生のとき、彼は文芸雑誌「群像」の新人賞をとり、受賞したそのデビュー作の掲載号が大学の図書館に入ったその日、自分は図書館のテラスで一気に読んだ。新しい時代の、新しい作家の誕生の瞬間を目撃した、そういう気分だった。

村上春樹は、1949年1月12日、京都生まれ。高校時代から英語の小説をペーパーバックで読んでいたという英文学通で、早稲田大学に進学。大学在学中に学生結婚し、ジャズ喫茶(バー)を開店し経営。卒業後もその経営をつづける。
30歳のとき、神宮球場で野球をみていたとき、とつぜん小説を書こうと思い立ち、毎夜、店の仕事を終えた後に書きつづけ、文学雑誌「群像」に応募。はじめて書いたその小説『風の歌を聴け』で同誌の新人賞を受賞し、作家デビュー。以後、コンスタントに作品を発表しつづけ、谷崎潤一郎賞、カフカ賞、エルサレム賞、カタルーニャ国際賞など国内外の数々の文学賞を受賞。「売れる純文学作家」として世界的な人気をもつ、日本を代表する現代作家である。

自分は、村上春樹の「ぼんやりした愛読者」なのだけれど、それでも、ときどき、村上春樹の文章を読んでいて、「おや」と気づくときがある。
彼はフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を訳しているが、自分のもっているその翻訳本には、冒頭のほうにこういう叙述がある。
「叔母たちや叔父たちが集まり、どこの進学校に子供を進学させようかといった感じで鶴首協議し、最後におそろしくかしこまった渋い顔つきで『好きにすればよろしかろう』という結論に達した」(スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギヤツビー』中央公論社)
「鶴首」は、たぶん「鳩首」のまちがいだろうなあ、と思っていたのだけれど、後になって出た改定版を書店で見たら、そこの部分はぜんぜん別の表現に書き換えられてあった。おそらく、読者か、編集者に指摘されて、訳者が訂正したのだろう。

いまでこそ、批評家も文壇の作家たちも、村上春樹をほめるけれど、昔は、売れることに対する嫉妬めいた批判が多かった。そうした批判に対して、ひと言も反論せず、ただただ読者だけを見つめて作品を書きつづけ、絶大な人気を築き上げることによって、批判する者たちを黙らせた、それが村上春樹だと思う。
1980年代のなかごろ、いちど書店のサイン会で見かけた村上春樹は、がっしりしたからだつきをし、力強そうな丸い、太い指をもっていた。
あの指の力で、批判者たちの口を封じたのである。

早くノーベル賞をとるといいなあ、と思うけれど、村上春樹みたいな無国籍的な雰囲気のある作家は、かえって受賞しにくいのかもしれない。アジアの作家には、やはり地方色が色濃くでたものが求められるような気もする。好きな現役の作家について書こうとすると、まとまりのない散漫な文章になってしまう。ほんとうは、村上春樹みたいに、粋にポップに書きたいのだけれど。
(2013年1月13日)


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