
これは、サザエさんの作者である長谷川町子さんの妹、長谷川洋子さんがご家族やご自分の日常を綴ったエッセイです。
前回紹介した「僕の姉ちゃん」のドラマの世界のような、懐かしい昭和の香りが漂う一冊
ホンワカ上品な洋子さんと、美味しいお茶でも飲んで楽しくお喋りしてるような感覚で、あっという間に読めました
今、NHKBSで朝ドラの「マー姉ちゃん」が再放送されているのを毎朝見ているのですが、いつもにぎやかで大騒動の連続に少しゲンナリして
「実際こんなこと現実にはあり得ないよな~」
と、半ば疑いの眼でシラッとしていました。
なので、実際の長谷川家はどうだったのか知りたくなって読み始めたのですが…
あに図らんや…
ドラマより実際の方が数倍すごくて驚きました
(以下内容に触れてます↓)
ドラマは誇張どころか少し遠慮して描いているくらいです。
とにかく長谷川まり子さん町子さん姉妹はエネルギッシュでパワフル!
毎日毎日ほうき片手に大喧嘩の大乱闘を繰り広げ、町子さんは学校ではたいそうな暴れん坊で、クラスで町子さんに叩かれなかった子はいないというほどのワンパクぶり。
また、お母さんも姉妹に負けず劣らずの大迫力!
悪童の姉妹二人を抱えて鶏小屋に放り込み、いつも洋子さんを震え上がらせていたそうです。
お父様が亡くなられたあとも一家は怯(ひる)むことなく前向きで、とにかく明るい!
東京に上京し、引っ越した家が事故物件であったことが分かっても家族の中で誰一人気にする人はいなかったという話も本当に驚きました。
「暗くて陰気だった地域がにぎやかな長谷川家のお陰で一変した」
と近所の人が証言するほど、とんでもなくポジティブなエネルギーを四方に撒き散らしていたそうです。
読んでいて私まで元気になりました。
後半は、そんなパワフルな姉たち二人から一人立ちする洋子さんの晩年の物語。
その凛とした侍のような「生き様」に深い感銘を受けて読みました。
でも、一人立ちをしたいという洋子さんの生き方を決して許さなかったお姉さまたちとの間には深い溝ができ絶縁状態に…
洋子さんは、町子さんの死亡すら知らせてもらえなかったそうです
それより何より私が驚いたのが、30億円とも言われる町子さんの遺産を洋子さん一家は1円も受け取らなかったということ(ついでにお母様の遺産10億円も)。
これにはさすがに国税局も不審がり、自宅へ調査に訪れたそうです。
でも、お金よりも姉たちからの自由を手に入れたかったという洋子さんの強い意志に感心し、納得して引き上げていったたといいます。
洋子さんは、絶版となった古い書籍に再び光を当てたいという思いで「彩古書房」という出版社を立ち上げ、数々の良書を世に送り出します。
「彩古書房…彩古書房? 何か温かい懐かしい響きがする…」
と、思ったら若い時散々お世話になった数々の心理学本を出している出版社でした(今はなぜか別の出版社になっていますが…)。
中でも、以前ブログにも書きましたが、大好きな木田恵子先生の本を沢山出されていて驚きました。
まさか、洋子さんの出版社だったとは…
洋子さんがこの出版社を立ち上げなければ私はこの本に出会うことはなかったのかも…と思うと本当に感謝の思いでいっぱいになりました。
洋子さんは他にも千葉敦子さんの「ニューヨーク24時」という本も出版されていますが、その著者にまつわる不思議な話も面白かったです