先日、照明(あかり)を作る者として、
最も起きてほしくない事故が起きてしまいました。
亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りするとともに、
ご遺族には心よりお悔やみ申し上げます。
これまで私も、制作時は元より、お教室での安全に関しての注意喚起には、
殊のほか気を遣ってきたつもりですが、今後もこのことを心にしっかり
と刻み、改めて基本スタンスを大事にすべきと実感いたしました。
そんな悲しい状況ではあるのですが、たまたま月曜日が定休日だったため、
一連の報道をくまなく見る機会を得ました。
その際に、職業的に気になったこと、また感じたことがいくつかあったので、
今後のためにも記しておこうと思います。
いつも楽しい話題しか書いていませんでしたが、
引き続き手作りのあかりを楽しんでいただくためにも、
ご参考になればと思い、書いてみることにします。
#本当に、白熱電球=危険 なのか?!
昨日の日中の報道では、特にワイドショーではどの局も白熱ランプと
LEDランプを点灯し、キャスターが実際に素手で触れています。
白熱ランプには、
「あ〜白熱電球は熱くて触れませんね〜」「これは危ないですね〜」と
レポートしています。
反対にLEDランプには「LED電球は触れますね〜」「そんなに熱くない
ですね〜」と。
どちらにもw数の表記はありません(w数とは、消費電力量です)。
どのくらいの時間、点灯していたのかも不明です。
夕方から夜の報道になると、時間に余裕ができたためか、かんな屑が
用意され、その中に両ランプを直接触れるような形で入れ、何分で発火
するかを計るようになりました。
LEDランプからは発火はせず、白熱ランプからは数分で火が上がると
いう映像が、映し出されました。
こちらもw数の表記はありません。
さて、これらを見た一般の方達は、いったいどう感じるのでしょうか。
私は、このやり方には少々違和感を覚えました。
確かに白熱電球は、LED電球より効率の悪さから熱が多く発せられます。
そのことは自体は誤りではないですが、w数を未表記のまま、
白熱電球=危険、といわんばかりの見方はやや乱暴で一方的です。
同時に、LED電球とて、熱が全くでないわけではないのです。
先日も展示会でLEDランプを使用しましたが、搬出時には素手では
触れないほど、ランプが熱くなっていました(ランプは約6wです)。
これらはTVなど、限られた時間で分かり易く説明するには都合がよい
やり方なのでしょう。
とは言え、白熱電球=危険 LED電球=安全 という単純な見方では、
新たな誤った認識を与えかねないと感じています。
#真の原因は、目的の取違いにあるのではないか?
一昨日の一連の報道は、「白熱電球と木材」が1セットになり、原因
とされました。確かに、燃えやすいものと熱源ですから、出火原因には
違いありません。
が、元の照明器具は「投光器」だったようです。
投光器とは、字の如く、光を集めて、対象を明るく照らすための器具です。
よって、高wの電球が用いられます。低いw数のものでは光を飛ばせない
からです。
これは想像ですが、恐らく学生達は、オブジェを明るく(あるいは何か
効果を狙って?)するために外側から投光するために器具を持ち込んだ
のではないかと思います。
実際、事故が起きた日までは中側では使われていなかったようです。
伝達ミスがあったのでしょうか。なぜか事故当日には投光器が中に
仕込まれてしまいました。
高wの電球は、いわゆる “あかり” には向きません。
白熱だろうがLEDだろうが、中に仕込むべきものではないのです。
出展したのは工業大学とのことですが、
工学に明るい学生なら、そのことは容易に理解できたはずでは?と
思われるのですが…。
また、報道では「おがくず」「木屑」とも言われていますが、
正確には「かんな屑」のようですね。
かんな屑は消防法で指定可燃物の扱いで、一定量を越すと届け出が必要
な対象物です。
今回はそこまでの量ではなかったのでしょうけれど、そもそも燃えやすい
ものだったのです。
これはもう、ランプの種類の云々ではないかとも思います。
#手作りの照明は安全なのか?!
手作りのあかり作りで何が一番大切か?と聞かれれば、
迷わず「安全に作ること」と答えます。
これ以外に答えはありません。
手作りであっても照明器具である以上、
デザインより何より優先されるべきことは「安全」です。
これが担保されて初めて、自由なデザインができます。
殊に講師を養成する講座内では、煩いまでにこのことを私が訴えるので、
きっと生徒さんたちは耳タコ状態になっているかと思います。
(一般のお教室では、その安全を確認しながら進めているので、
教室内で、生徒さんがピリピリしながら制作をすることはありません)
今回の不幸な事故を踏まえ、基本のスタンスの大切さを改めて感じました。
と同時に、手作りの照明(あかり)を多くの方に安全に、
今後も楽しんでいただきたいという想いを強くしております。
#最後に…
今回、出展をしたのが学生だったことに、個人的にはとても悲しい
思いがします。
誤解を恐れず言うならば、
彼らだって、誰かを喜ばせようと思っていたに違いないと感じる
からです。
「東京デザインウィーク」の運営や安全管理については、
詳細が分からないので明言は避けますが、
デザインそのものは、人を幸せにするためにあることには変わりない
と思います。
あかりも同じ。誰かを幸せにできるようなものであるように、
私も心して臨んでいきたいと思います。
改めまして、亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りいたします。