東京デザインウィークでの火災について思うこと。 | 手作りライト・ランプ・照明教室 PAPERMOON(ペーパームーン)/和紙灯り制作/東京 自由が丘

手作りライト・ランプ・照明教室 PAPERMOON(ペーパームーン)/和紙灯り制作/東京 自由が丘

PAPERMOON(ペーパームーン)は、東京は自由が丘・奥沢にあるあかりのアトリエです。セミオーダーによる和紙灯りの制作や、手作りランプ教室を開催しております。他、出張教室やセミナー等も開催。主宰は冬野朋子。世界中に"あかりだまり"を作るべく日々奮闘中♪

先日、照明(あかり)を作る者として、
最も起きてほしくない事故が起きてしまいました。

 


亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りするとともに、

ご遺族には心よりお悔やみ申し上げます。

 


これまで私も、制作時は元より、お教室での安全に関しての注意喚起には、

殊のほか気を遣ってきたつもりですが、今後もこのことを心にしっかり

と刻み、改めて基本スタンスを大事にすべきと実感いたしました。


そんな悲しい状況ではあるのですが、たまたま月曜日が定休日だったため、

一連の報道をくまなく見る機会を得ました。
その際に、職業的に気になったこと、また感じたことがいくつかあったので、

今後のためにも記しておこうと思います。


いつも楽しい話題しか書いていませんでしたが、

引き続き手作りのあかりを楽しんでいただくためにも、

ご参考になればと思い、書いてみることにします。

 

 

 

#本当に、白熱電球=危険 なのか?!

昨日の日中の報道では、特にワイドショーではどの局も白熱ランプと

LEDランプを点灯し、キャスターが実際に素手で触れています。

 

白熱ランプには、

「あ〜白熱電球は熱くて触れませんね〜」「これは危ないですね〜」と

レポートしています。

 

反対にLEDランプには「LED電球は触れますね〜」「そんなに熱くない

ですね〜」と。


どちらにもw数の表記はありません(w数とは、消費電力量です)。

どのくらいの時間、点灯していたのかも不明です。

 

夕方から夜の報道になると、時間に余裕ができたためか、かんな屑が

用意され、その中に両ランプを直接触れるような形で入れ、何分で発火

するかを計るようになりました。

 

LEDランプからは発火はせず、白熱ランプからは数分で火が上がると

いう映像が、映し出されました。

 

こちらもw数の表記はありません。

 

 

さて、これらを見た一般の方達は、いったいどう感じるのでしょうか。

 

私は、このやり方には少々違和感を覚えました。

確かに白熱電球は、LED電球より効率の悪さから熱が多く発せられます。

そのことは自体は誤りではないですが、w数を未表記のまま、

白熱電球=危険、といわんばかりの見方はやや乱暴で一方的です。


同時に、LED電球とて、熱が全くでないわけではないのです。

 

先日も展示会でLEDランプを使用しましたが、搬出時には素手では

触れないほど、ランプが熱くなっていました(ランプは約6wです)。

 

これらはTVなど、限られた時間で分かり易く説明するには都合がよい

やり方なのでしょう。

とは言え、白熱電球=危険 LED電球=安全 という単純な見方では、

新たな誤った認識を与えかねないと感じています。

 

 

#真の原因は、目的の取違いにあるのではないか?

一昨日の一連の報道は、「白熱電球と木材」が1セットになり、原因

とされました。確かに、燃えやすいものと熱源ですから、出火原因には

違いありません。

 

が、元の照明器具は「投光器」だったようです。

 

投光器とは、字の如く、光を集めて、対象を明るく照らすための器具です。

よって、高wの電球が用いられます。低いw数のものでは光を飛ばせない

からです。

 

これは想像ですが、恐らく学生達は、オブジェを明るく(あるいは何か

効果を狙って?)するために外側から投光するために器具を持ち込んだ

のではないかと思います。

実際、事故が起きた日までは中側では使われていなかったようです。
伝達ミスがあったのでしょうか。なぜか事故当日には投光器が中に

仕込まれてしまいました。


高wの電球は、いわゆる “あかり” には向きません。

白熱だろうがLEDだろうが、中に仕込むべきものではないのです。

 

出展したのは工業大学とのことですが、

工学に明るい学生なら、そのことは容易に理解できたはずでは?と

思われるのですが…。

 

また、報道では「おがくず」「木屑」とも言われていますが、

正確には「かんな屑」のようですね。
 

かんな屑は消防法で指定可燃物の扱いで、一定量を越すと届け出が必要

な対象物です。
今回はそこまでの量ではなかったのでしょうけれど、そもそも燃えやすい

ものだったのです。

 

これはもう、ランプの種類の云々ではないかとも思います。

 

 

#手作りの照明は安全なのか?!

手作りのあかり作りで何が一番大切か?と聞かれれば、

迷わず「安全に作ること」と答えます。

 

これ以外に答えはありません。

 

手作りであっても照明器具である以上、

デザインより何より優先されるべきことは「安全」です。

これが担保されて初めて、自由なデザインができます。

 

殊に講師を養成する講座内では、煩いまでにこのことを私が訴えるので、

きっと生徒さんたちは耳タコ状態になっているかと思います。

(一般のお教室では、その安全を確認しながら進めているので、

教室内で、生徒さんがピリピリしながら制作をすることはありません)

 

今回の不幸な事故を踏まえ、基本のスタンスの大切さを改めて感じました。


と同時に、手作りの照明(あかり)を多くの方に安全に、

今後も楽しんでいただきたいという想いを強くしております。


#最後に…

 

今回、出展をしたのが学生だったことに、個人的にはとても悲しい

思いがします。

 

誤解を恐れず言うならば、

彼らだって、誰かを喜ばせようと思っていたに違いないと感じる

からです。


「東京デザインウィーク」の運営や安全管理については、

詳細が分からないので明言は避けますが、

デザインそのものは、人を幸せにするためにあることには変わりない

と思います。

あかりも同じ。誰かを幸せにできるようなものであるように、
私も心して臨んでいきたいと思います。

 

 

改めまして、亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りいたします。