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パパスケの妊婦ママチュウ観察記

2年間の不妊治療を経て妻が妊娠。
出産予定日2020年春。夫による記録です。

早朝、妻ママチュウの一声で起こされる。

 

「パパスケ、そろそろかもしれないから準備して!」

 

昨夜から陣痛は本格的に痛みを増し、間隔も短くなってきたらしい。

 

いよいよなのか? 慌てて準備する。

 

 

 

果たして今日は、陣痛と戦い続ける日となった。

 

色々試した結果、腰を親指でぐっぐっと押すと効くらしい。

 

「もっと強く!もっと外側を!」

 

ママチュウの指示のもと、必死で押す。

 

「もっと上! 行き過ぎ!もうちょっとだけ下!」

 

え、そんなミリ単位でわかるの?

 

とにかく命じられるがままに押し続ける。

 

 

 

が、陣痛が10分間隔になってきたと思いきや、

 

少しするとまた間隔が遠いのてしまったりと、なかなか進まない。

 

うーむ、陣痛って奥が深い……。

 

結局、僕も丸一日マッサージや身の回りの世話にばたばた。

 

でも、立ち会いができないのだから、せめてこの期間は。

 

辛いのはママチュウなのだ。少しでも力にならなければ、

 

 

 

きりのない痛みにママチュウは疲れきっている。

 

そこで僕はアルカイックスマイル。

 

「頑張ってなママチュウ。俺も何でもするよ」

 

「……ありがとうね……助かるよ……」
 
「当然だろこのくらい。何か要望はないか?何でも言ってな」
 

「……じゃあ……ババ抜きしよう。今のうちに」

 

 

 

え、Why??

 

陣痛って恐ろしい。

 

 

 

昨日は立ち会い禁止が決まり、さんざん泣いていた妻ママチュウ。

 

が、一晩経った今朝。

 

「ま、決まったものは仕方ないよ」

 

妙にけろりとした表情のママチュウだ。

 

はて?

 

 

 

さらに、トイレに入ったあと「破水かもしれない」と。

 

それでも落ち着いた様子で病院に電話し、指示をあおぐ。

 

ちょうど午後に検診があったため、そこで診てもらうことに。

 

あくまで平然と、慌てふためくこともなく。

 

「ねーチビチュウ。楽しいお産にしようね」と、穏やかな笑顔。

 

個室を希望していたが、いっそ大部屋にしようか、

 

なんと、いっそ無痛分娩もやめて自然分娩にしようかなどとまで言う。

 

なんともたくましい表情のママチュウだ。

 

うーむ、母は強し。

 

 

 

で、診てもらうとそれは破水ではなくおしるしの一種だったらしい。

 

「もうすぐ陣痛が来ることもありえますよ」と先生の予言。

 

結局、ひとまず家に帰ってきた、その夜だった。

 

ママチュウの顔は、途端にシリアスなものとなる。

 

不規則に、大体30秒間くらいの前駆陣痛がきたのだ。

 

 

 

「ふしゅー!ふしゅー!」

 

ひょっとこの口で、必死に呼吸法をするママチュウ。

 

前駆陣痛とはいえ、これでもとても痛いらしい……。

 

ようやく収まると、ママチュウは僕に向き直り、

 

「ふう、こりゃ無理だ。ああ、無痛分娩で良かった」

 

ものすごくさわやかな表情で前言を華麗に撤回した。

 

 

 

緊急事態宣言発令に伴い、成育医療センターも方針転換。

 

分娩の立ち会いや面会を禁止する、という。

 

色んなブログで他の産院の対応も見て覚悟してたけど、

 

ついに、決まってしまった……。

 

 

 

この報を知った妻ママチュウは、号泣した。
 
これまでずっと僕が付き添ってきたのに、出産は一人なんて辛いのだろう。
 
だけどママチュウは泣きながら言った。
 
「パパスケあんなに楽しみにしてたのに……。
 
ごめんね。私がちゃんと予定日通り産んでれば」
 
 
 
もともと子どもを欲しがっていたのは僕だった。
 
ママチュウは二人でのんびり生きるのもいいなとか言っていたけど、
 
僕の夢を叶えるために、頑張ってくれていたのだ。
 
本当に感謝している。
 
申し訳ないなんて思う必要、1ミクロンもないんだよ。
 
僕の方こそ、一番大切な瞬間に力になれないことが申し訳なさすぎる。
 
何せママチュウは寂しがり屋で、甘えったれで、とても抜けていて、
 
そして本当に心の綺麗な優しい妻だ。
 
離れたところからになるけど、心を合わせたいと思う。
 
 
 
ともかく、この大変なご時世。
 
多くの人の苦しみの上に、僕らも頑張らなければと覚悟を決める。
 
ママチュウも、ずびずび鼻をかんで一言。
 
「こうなったら、家で産んでパパスケに取り上げてもらおうかな……」
 
えっ。