妻ママチュウ、いざ出産へ。
たまたまだけど直前に麻酔を追加していて、痛みは全くない。
逆にいきむタイミングもよく分からず、ママチュウはやや焦った。
だけど、大丈夫。
助産師さんも合図してくれるし、それに、ずっと呼吸法の練習をしてきたのだ。
時にはパパスケを巻き込み、毎晩毎晩。この時のために。
「そうそう、うまいうまい!」いつの間にか先生たちが増えていた。
途中で会陰切開もされたけど、気にせず無我夢中だった。
もう少しで、チビチュウに会える。
これまで爆裂お昼寝とお菓子ドカ食いで蓄えた力を、今こそ使い果たすのだ!
助産師さんの合図で最後のひと踏ん張りをする。
すると、ずるんという感覚があって……
一方その頃、自宅にて無駄にうろうろするパパスケ。
赤ちゃんも妻も頑張っているというのに、僕は何もできないのか……。
無駄に部屋の片付けとかをしてみるが、捗らない。
とにかく、今は願うしかない。
そして無事に産まれてきたら、人生を賭けて、大切にしていこう。
それが自分にできることに違いない。
と、スマホが鳴る。ママチュウからのビデオ通話だ!
出ると画面には、ぐったりとしたママチュウが分娩台にいた。
そして隣には世にも可愛いチビチュウの姿……が、ない。
!?
無事だけど、酸素濃度が安定しないためいったん新生児室だという。
それは、つまり……
「だから、産まれたんだよ」
ママチュウの顔は、疲れてたけど、充実感に満ちていた。
チビチュウが、誕生した。
「ねえねえ、私いきむのうまいって褒められたんだよ」
得意げなママチュウに、放心状態だった僕も思わず笑ってしまった。
……さて、その翌日。
僕は成育医療センターへやって来た。
なんと、新生児入院手続きがてら、少しだけ赤ちゃんに会えるという。
無事元気になってすやすや眠るチビチュウは、可愛くて可愛くて。
でれでれと抱っこしていると、ママチュウが興味深いことを言った。
「チビチュウに見つめられるとね、ああこの感覚、私知ってるって気がするんだ」
それは、おなかにいた時からずっと感じていた愛着だろうか。
あるいは血とか遺伝子とか、何かそういう運命みたいな仕組みか。
穏やかな笑顔でママチュウは、我が子のまなざしを受け止めている。
妊娠してからこれまで、ずっとその姿を追ってきた観察記。
今確かに、ママチュウは母親になったんだな、と僕は実感した。
「おなかすいた~。パパスケ、ちょっと売店でお菓子買ってきてくれない」
ママチュウが、ふいにいつものママチュウに戻った。
「仕方ない。今日は特別にドーナツだ」
「やったー。じゃあ5個くらい買ってきて」
「そんなに?」
あはは、と楽しげなママチュウ。困惑顔のパパスケ。
その間には、不思議そうにママパパを見つめるチビチュウ。
※これでこのブログは終わりです。
お付き合いいただいた皆さん、ありがとうございました!