入院した翌朝7時、分娩誘発がスタート。
子宮口は5cm開いたため、ラミナリアやバルーンはなく、オキシトシンだけ。
10時、陣痛も5分間隔になり、ついに無痛分娩の麻酔を入れる。
「痛みなくなった!すごい!」
医療の神々に感謝するママチュウ。
謝謝。
午後、順調に進みそうなので、自宅待機する僕も一息つく。
ペペロンチーノをここぞとばかりにメガ盛りで食べようとするが、
ママチュウからLINEがきて、風向きは変わった。
「子宮口がこれ以上なかなか開かないんだって……」
僕は大盛に変更した。
子宮口は7cmまで開大したが、そこから変わらず。陣痛も微弱らしい。
15時、人口破膜で破水させ陣痛を促すが、やはり駄目。
17時、ついにママチュウ、水を禁じられる。
帝王切開になるかもしれない、といわれたのだ。
すでに3700gくらいかと推定されるビッグベビーだ。
チビチュウは大きくなりすぎて、ママの骨盤を通れずにいるようだ、という……。
ビデオ通話をすると、ママチュウはまたしくしく泣いていた。
「どうしよう。私が食べすぎたからだ。チビチュウごめん……」
あの日のプリンが、アイスが、ケーキが……止めずに甘やかしていた僕も悪い。
だけどチビチュウは、苦しいだろうに、ずっと心拍数は落ちていないという。
本当に強い子だ。
大きな頭で、今必死に骨盤を通ろうと頑張っているのだろうか。
「とにかくチビチュウが無事で産まれてほしい。もうお腹切ってもらいたい!」
ママチュウの泣き声に、止める言葉など僕は持たない。
誰にどう祈ればいいのか分からないけど、きっとママチュウの想いは届くはずだ。
そんな感じのちょっといいことを言ってやろうとしたその時、
突然、ママチュウが電話を切る。
え……?
どうして切られたのだろう。困惑しながら待ち続ける。
何かまずいことを言ってしまったか(どれだ)?
恋人時代でもこんなピュアに連絡を待ち焦がれたことがあっただろうか(否ない)。
やきもきし続けていると、ようやくLINEが返ってくる。
それは、思ってもみなかったメッセージだった。
「すごい!突然子宮口全開になったって!」
チビチュウが下に降りてくる感覚があり、診てもらったのだという。
これで、自然分娩に計画を戻し、いよいよいきむことに。
チビチュウ、頑張ってくれたのだ。
「次は私が頑張る番だ!」
スマホ越しに、ママチュウの荒い鼻息が吹いてきた気がした。