ボブ・ディランの詩がこんなことに | ぞうの みみこのブログ

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ブログの更新をごぶたさしております。2月はコンペティションの楽譜準備などをしておりましたら、あっという間に過ぎて行きました。

その間にメト(メトロポリタン歌劇場)などで、行きたいオペラがいっぱいあったにもかかわらず、主に先月行きたかったのはワグナーなんで通常の8時始まりでなく、

6時半とかにオープンするのですね。(なんせワグナーは長いですから)音楽室勤務がだいたい7時までだから、行けなくて、涙をのみました。(前回のブログでも同じ事を書いたような。)

それで、久々のお出かけはもっとこじんまりした、人によっては”マニアック”ともとれるようなコンサート。

3/2、土曜日にマンハッタンの下町の”テンリ・カルチュアル・インスティテュート”というところのちいさなホールで開催された、地元ニューヨークの現代音楽作曲家達のコンサート。ピアノ独奏曲と、ピアノ伴奏によるソプラノのための現代歌曲。

その中の一曲は私の先生である、デイビッド・デル・トレディチ先生の作品。
シューベルトの有名な歌曲”An die Musik"をモチーフにしたピアノ独奏の美しい小品。先生も来られていて、”来ましたよー、先生の曲もっとききたかったですー。”とご挨拶する事が出来ました。

インターミッションをはさんで二部はこちらも地元で活躍、私の母校、ニューヨーク大学の作曲フォーラムなどでも”現代アメリカの最も重要な作曲家の一人、”などと称されてていた、ジョン・コリリアーノ(John Corigliano 1938~)先生の連作歌曲。

なんと、詩はすべてあの”ボブ・ディラン”の歌詞をそのまま使われているのですね。
詩集として編纂されていたかれの詩(もともと彼の曲がつけられていた)を本で読んでその美しさに感銘を受け、それにつけられた彼の音楽とかを聴かず、詩のみから受けたインスピレーションで自分自身の音楽をつけた、とおっしゃっていました。

(先生ご自身もコンサートにこれらてて、自ら楽曲の説明をされていました。)

この、ボブ・ディランの詩による連作歌曲のことは知っていたけど、聴いた事はなかったので、ライブで聴けて嬉しかったです。

コリリアーノ先生が連作歌曲のために選んで作曲したのは次のとおり。フォークファンにはおなじみのタイトルばかりではないでしょうか。

Mr. Tambourine Man:
Seven Poems of Bob Dylan(2000)

1. Prelude: Mr. Tambourine Man
2. Clothes Line
3. Blowin' in the Wind
4. Masters of War
5. All Along the Watchtower
6. Chimes of Freedom
7. Postlude: Forever Young

Melissa Fogarty (Soprano), Marc Peloquin (Piano)

ジャンルがフォークと現代音楽で全然違うので当たり前かもですが、同じ詩が作曲家に寄ってこうも変わるとは!

たとえばオリジナル:Mr. Tambourine Man



同じ詩で、コリリアーノ先生の音楽


ボブ・ディランの、Masters of War


同じ詩で、コリリアーノ先生のバージョン


コリリアーノ先生は映画音楽の世界でも活躍されていて、たしかアカデミー賞のベストスコア賞も受賞されています。これがその映画、”レッドバイオリン”で使われた音楽。バイオリン独奏はアメリカ人バイオリニスト、ジョシュア・ベル



映画のワンシーン


私が個人的におもしろいと思ったのは、”アルタード・ステーツ”のスコアでしょうか。


主にオーケストラを使用したアコースティック楽器による電子音のような効果や音色にかれのオーケストレーションの技を感じました。匠、といいましょうか。

ちなみにわたしの作曲の先生の一人、ジェリカ・オブラク先生は、コリリアーノ先生の手がけた”レボリューション”という映画のあるスコアは、武満徹氏の”乱”のスコアに影響されている、と言われていました。

彼女が言及したのが、たしかこのへんの戦闘シーンで、わざとありがちな”戦闘的”音楽を使わず、スローで、瞑想的とも言える音楽をつける事によって、かえって戦いの酷さをさらけ出したようなコンセプト。

”乱” より、武満氏


オブラク先生曰く,コリリアーノ先生が武満氏に影響を受けたであろうスコア


さすが武満氏,読みが深いですな。それとも黒澤監督の指示だったのかしらん。