日本人映像作家の短編映画の重要シーンの音楽を担当する事になり、いろいろ悪戦苦闘の上、だいたい形になった。でもまだそれは作曲ソフト”シベリウス”上での事。
業界用語になるのだろうか、”テンプ”とよばれる、監督のお望みの参考の音楽はソロのチェロをフィーチャーしたもの。これはあらかじめEメールで送っていただいていた。
著作権上の問題もあるし、そのままそれを使う訳に行かない。あくまで参考資料だ。
バックに結構分厚いサウンドが入っている。ロックギターやドラムも途中から絡んで来ている。クラシックを意識しながら、クロスオーバーのサウンドになっている。
それを聴きながら、なるべく監督の好みに沿いつつ、映画のシーンのコンセプトにぴったりの、別物の音楽を制作しなければならない。
当たり前だけど、音楽として流れを保持しつつ、映像のシーンが切り替わったり、なにか動きがあった場合は、音楽のタイミングとかリズムや速度がスムーズに反映されていなければならない。しかも、さりげなく。
俳優やカメラワークの一つ一つの動きに逐一タイミングが反映されていれば、それはそれで、”ミッキーマウス”的とも揶揄され,(ミッキーマウスに代表されるような、子供向けアニメなどでよく使われている手法らしい。)
オールドファッションな感じになったり、洗練されないフィルムスコアになってしまう。
タイミングは難しい。
器楽の編成は、いろいろ考えた末、”プチ・チェロコンチェルト”的なものにしてみた。
メインの独奏チェロというアイデアは据え置き、バックは弦楽オーケストラと木管(フルート、クラリネット、オーボエ)
ハープとピアノ、打楽器という編成。
今、監督に作曲ソフト上からファイルをコンバートしてmp3ファイルと言う音源ファイルにしてメールで送った段階。
サンプリングした状態の音とか、生の演奏とはくらべものにならないサウンドだけど、だいたいの感じはつかめていただけるかと思ったのだ。
聴いていただいた後で、監督が”こんな感じでいいっすよー”ということであれば、次のステップとして、メインのチェロのソロパートをどこかスタジオで録音する事になり、
バックのサウンドはMIDIにして、最終的にソロの生演奏と合わせる事になる。
ソフトはロジックを使う予定。
MIDIオンリーか、または生演奏で一発取りか、どちらかだと面倒が無いのだけど。
理想的にはバックの弦楽オーケストラもその他一切合切の楽器も生で取れると良いんだけど、予算と合わない、多分。小編成オーケストラ、プラス指揮者も必要になってくる。
もっとも下手な生演奏にくらべたらみMIDI録音やサンプリングの音のほうがまし、という意見もあるけれど。
チェリストに関しては、友人のホセに声をかけたのは良いけど、
腕の故障でいま演奏が出来ないのだよ,と丁重なメールをいただいたばかり。振り出しにもどって探しはじめた所。
自主制作の映画だから、演奏の謝礼も限られている。謝礼が少なくても気持ちよくやってくれて、それでいて説得力のある、しっかりした演奏の出来る力量のある、
(ちゃんとさらってくれて、録音などの時間にもきちっと来てくれる)常識のあるチェリストをさがさなくてはならない。
そうなると、これからコネクションを広げて,お金にこだわらず、いろんな仕事をしようとしている音楽院の在学生という選択肢になってくるだろう。
ジュリアードか,マンハッタン音楽院あたりかな。マネスもあるし。音楽院でなくとも、総合大学の音楽専攻の生徒にもけっこううまい人がいるはず。
録音スタジオとか、テクニシャンとかも探さなくては。録音の後にもエディティングとかミキシングの作業も必要になる。わたしの範疇でないからそれらも誰かに頼んでお任せしなければならない。
それらの人々と連絡取り合い、スタジオ予約したり、そんなことでもいろいろ時間がかかりそうだ。
こんなふうに、ほんの数分のシーンでも、音楽の分野だけでもいろいろな手間ひまがかかる映画。
映画監督って大変だ。