ホソイ・ヨースケ監督
土曜の夜は、ニューヨーク近郊のクイーンズと言う所にある小さなギャラリーで開かれた、短編映画とその監督によるレクチャーに行ってきました。
”Man of the house" というその美しい映画は、今年のカンヌ映画祭の短編作品部門で入選し、ホソイ監督は授賞式やいろいろなイベントの為、数ヶ月前フランスのカンヌに行って来たのです。
二年前に、あるニューヨーク在住の日本人会でお会いし、ちらほらメールを交換したあとはしばらくお会いしてなかったのですが、会場でご挨拶した所、覚えてくださっていたようで、嬉しかったです。
以前はアーティストっぽい肩までおりるロングヘアだったのに、今度お会いしたときは板さんのような短い髪型になっていましたが、笑顔はお変わりなく。
ホソイ監督の映画は、なんというか品があるんですな。前回拝見した時もそうでしたが、基本的に家族を主要なモチーフにした作品。
お国は違ってもどこにでも起こりえそうな会話や風景を、透明水彩画を思わせるような繊細な色調で語っていく。
これ見よがしなはでなアクションとか、スペクタクルなドラマはないけど、ありふれた一つ一つの日常生活でのエピソードを、
とぎすまされたアングルできりとられたカメラワークや、
リアリティーあふれる俳優達の演技を通してみて行くうちに、オーディエンスはいつの間にかそのドラマの中に引き込まれて行ってしまう。
そこにみえるのは監督の人々への優しいまなざし。
レクチャーでは、スクリプトを書く事に関して、リアリティーを重視する為に、自分の経験から感じた物語を、ベースに語って行きたい。
ということをおっしゃられていました。そのへんのスタンスがフィルムにも如実に現れているように思います。
ご自分のインスピレーションとなったおばあさまのビデオやエピソードは心和ませるものがありました。残念ながら最近他界されたのですが。
小津安二郎監督の作品とかを思い出してしまいました。
カンヌ映画祭での模様をスライドショーにしてみせてもらったのですが、
そのときのBGMに"Beasts in the southern wild"のサウンドトラックを使われていたのでそれについてお聞きすると監督も”あの映画は大好きでもう三回みました”との事でした。
現在、長編映画の構想を練っている所だとか。期待がわきますね。
余談ですが、たまたま隣の席になった気さくな日本人レディー、オペラ歌手と言う事で、今ニューヨークの音楽院に在籍中。(メゾソプラノ)
”オペラ歌手と言えば同じ音楽院にいた日本人ソプラノシンガーに私の作った曲を二回程歌ってもらった事があるのですよ。” といってそのお名前を挙げると彼女は
”えー、わたしと同郷で、彼女、スーパースターですよー!!お会いした事は無いけど。”
”今、ヨーロッパなんですってね.”
”そうそう。”
世間は狭いですね。そのソプラノ歌手の方、私がお願いして曲を歌っていただいた後、
音楽院を卒業、ニューヨークのメトでデビュー。デビュー作はなんと魔笛の”夜の女王”
現在はヨーロッパで声楽家として活躍されています。