7月上旬にアメリカ合衆国の独立記念日があったりして、なんとなくこちらの歴史物のDVDを見てしまいました。
”ジョン・アダムス”
もとはといえば2008年にHBOのテレビ映画として放映されました。かなり人気があったと見え、ゴールデングローブ賞やエミー賞を受賞しています。世界史が好きで、ずっしりした重みのある演技が好きな人には楽しめると思います。
2001年に発売された同名の米国二代目大統領、ジョン・アダムス(John Adams 1735-1826)の伝記が基になっています。こちらも大好評で、作者のデイビッド・マクロー(David McCullough1933- )はこの著書でピューリッツァー賞を受賞しています。
ジョン・アダムスを中心に、まだ英国領であったころのアメリカとイギリスとのせめぎ合いや、個性豊かなファウンディングファーザーズ
(アメリカ合衆国独立に寄与した政治家や指導者達)の描写、友情や敵対心、外交の駆け引き、利害の絡み合いなどがいきいきと描かれ、面白かったです。
そういうのがテーマなもんですから、ジョン・アダムスと夫人のアビゲイルの夫婦愛以外には、ロマンチックな要素はほとんどなく、個性豊かな政治家の叔父さん達がこれでもかこれでもかと、いっぱい出てくる映画です。
イケメンの男性が出てくる訳でなし、セクシー女優がフィーチャーされてる訳でもないんで、そいうのが好きな人にはつまらないかもです。渋い叔父さんは出てきますが。
英語の発音が、今でいうRP(Received Pronunciation: イギリスで標準とされている発音。)に近いものがあり、いつごろから今風のアメリカ英語に変遷したのかしらん、と思いました。
主役のジョン・アダムスはポール・ジアマッティ、奥さんのアビゲイルはローラ・リニー(Love actuallyに出演しています.)が演じています。
夫人のアビゲールはかなり聡明な人で夫のジョン・アダムスにもよく助言をし、彼も真剣に彼女の意見を聞いていたとか。
ジョン・アダムスが弁護士をしていた頃、法廷での弁論の仕方にまでアドバイスをし、見事に的を得た助言に、アダムスが ”自分で弁護士をやってみれば” と言ったシーンが印象的でした。
でも当時の社会では女性には選挙権はないばかりか、仕事もかなり限られており、並外れた知的能力を持ちながら、専門の仕事に就く事も出来ず、主婦としてひたすらジョンの留守中に家庭を守り、時折、険しい表情で取り付かれたように家事をしているその表情から、
彼女の、フラストレーションが伝わってきます。短く、さりげないシーンですが、ローラ・リニーの演技に彼女のそのような思いが凝縮されているように感じました。
しかし当人同士はきわめて対等な夫婦であったようで、二人のかわした膨大な書簡では、ジョン・アダムスはいつも奥さんの事を”わが友よ”と呼びかけていたようです。
映画の中では、それは単なるありがちな表現でなく、本当に夫婦であり、同時に友人でもあったような間柄をたっぷりと表現していました。
時間ができれば原作も読みたいなと思いました。
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