マンハッタン、町の移り変わり | ぞうの みみこのブログ

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二つ前の記事で登場したホセがつくづく言っていた事。ウェストサイドの66丁目にあった書店、Barnes&Nobleをクローズするなんて、なんたることだ、と。



Barnes&Nobleは大手の本屋。マンハッタンに幾つもあって、そのほとんどの店舗の一角にカフェがあり、売り場の本や雑誌を持って入り、自由に読むことが出来た。買わなくてもかまわない。

わたしはかつてこの方法でハリーポターの何冊かを、買わずに読んだものだ。

66丁目に去年まであった店舗はそのチェーンの中でも代表的なもので、売り場面積、カフェ面積ともに広く、営業時間も朝9時から、夜12時までと長かった。地下にはCDやDVD売り場もあった。

地元の皆さんにも愛された店舗だったと思う。

ジュリアード音楽院のすぐ近所で、メトと呼ばれるメトロポリタン歌劇場のすぐ近くであり、ニューヨークフィルのお膝元の、リンカーンセンターも近い、映画館もいくつかあったから、それらの場所での催し物に行く時、格好の待ち合わせ場所でもあった。


バイオリンケースを肩にかけたミュージシャンの姿をみるのもしょっちゅうだった。

わたしも、自宅では集中しにくいので、カフェで何時間もパソコンの作曲ソフトで作業したり、勉強したりしたものだ。大きな店舗で、いつも賑わっているように見えた。



その後、かわりに何が出来たかと言うと、センチュリー21というディスカウントのファッションモール。ウォールストリートにある店舗が有名だが、とうとうアッパーウェストにも出来たのだ。



最初は私も完全にホセに同意していた。そうだそうだ、本屋が亡くなった事を嘆いている人も多いはず、と。

数日前、センチュリー21がオープンして以来、初めて脚を運んで、意見が揺れ動いてしまった。キャー、これ可愛い、あれも安い、とか思って、ついうろうろウィンドウショッピンッグしてしまった。

マーケティング的にも成功しているように見える。もともとこの辺は手頃な価格で商品の種類も多いようなこの手のファッションビルはすくなかった。

それらを求めるなら、もう少し脚を伸ばさなくてはならなかったけど、もうミッドタウンや古い店舗のあるウォール街までわざわざ脚を運ばなくても良いのだから、喜んだ人も大いに違いない。

わたしも便利になったと思った。

女友達に、日本に帰省するときのお土産を買うのにもよさそう。メトやニューヨークフィルのお客さんだって、そのついでに服の買い物が出来て、便利だろう。

観光客も多いと見えて、I  LOVE N.Y.のマグカップなんかも置いてある。

でもやっぱり、あの広々とした本屋が恋しい。

どっちか、選べるのならやっぱり本屋が良い。音楽院があり、オペラ座があり、地元フィルハーモニーのコンサートホールがあり、バレエ団あり、アーティスティックな良質な映画をえらんで上映する映画館があり、

のようなこの地域には、本屋の方がぜったいしっくりくる。一瞬、ファッションモールの魅力にくらっとは来たけど、あれってどこにでもある系の店じゃないかしら。せっかくの文化の香り高いこの地域を、個性の無い商店街みたいな町にしたい人がいるのかしら。


復活はありえないのだろうか。
だとしたら、私の中の古く良き時代、の思い出になりそうだ。

Barnes&Noble の撤退の原因は家賃の高騰だそうだ。家賃を引き上げ、町の景観を変え、コミュニティーのランドマーク的場所が次々と消えて行く事に、不動産屋は何を思っているのだろう。

ただ一時的に儲けられれば、コミュニティーの文化やら雰囲気やらはおかまいなしってことか。