シュヴェツィンゲン音楽祭 | ヨーロッパの音楽祭

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クラシック音楽(特にドイツ・オーストリア系)が大好きです。
ヨーロッパの各地で開催されている音楽祭について自分が見てきたところを中心に思うところを書きます。観光のヒントもつけます。

- アスパラガスの音楽祭 -

シュヴェツィンゲン(ドイツ語:Schwetzingen)はドイツの南西部バーデン=ヴュルテンベルク州北部に位置する人口2万人あまりの比較的小さな街である。歴史的にはプファルツ選帝侯カール・テオドール(1724~1799)の離宮があった街でこの時期に現在も街の観光の中心地となっているシュヴェツィンゲン宮殿と宮廷劇場が造られた。この宮殿はベルサイユ宮殿をモデルにしたといわれる広大な庭園を有しており、訪れたものを圧倒する。観光という点では1954年に創設されたドイツ観光街道の一つでマンハイムからプラハに至る古城街道の街にもなっている。

<シュヴェツィンゲン城と庭園> シュヴェツィンゲン市のWebサイトより

シュヴェツィンゲンを有名にしているもののもうひとつにシュパーゲル(ドイツ語:Spargel)がある。これはドイツ産のホワイトアスパラガスのことで、”食べられる象牙”、”白い黄金”などと形容される特別な野菜だ。日本でホワイトアスパラガスというとガラスの瓶につめられたひょろっとしたものを思い浮かべるが、ドイツのシュパーゲルは似て非なるもので、長さは30cm、太さは2cm以上の堂々としたものである。収穫時期は4月の上旬から6月24日(聖ヨハネの日)までと決められており、ドイツ人はシュパーゲルを春の訪れを告げる野菜として特別な思いで食べている。シュパーゲルの調理法は極めて簡単で表面の硬い皮をそいで茹でるだけだが、みずみずしい食感と繊細な甘みがこの上ない。
  

<マーケットで売られているシュパーゲル>

<茹でられたシュパーゲル>


シュヴェツィンゲンはドイツ有数のシュパーゲルの産地であり”シュパーゲルの都”と称されることもある。シュパーゲルの収穫時期に合わせて”シュパーゲル祭り(Spargelfest)が開催され、”シュパーゲルの女王”とともに街を盛り上げる。

<シュパーゲルの女王>



そして、このシュパーゲルの季節に合わせて開催されるのがシュヴェツィンゲン音楽祭(ドイツ語: Schwetzinger Festspiele)である。シュヴェツィンゲン音楽祭は1952年に放送局であった南ドイツ放送(ドイツ語:Süddeutscher Rundfunk)により創設された。この音楽祭はその後も毎年4月下旬から1か月の期間にシュヴェツィンゲン宮殿の中にある宮廷劇場(ロココ劇場と呼ばれている。)をメイン会場として開催されている。

期間中にはオペラの上演を含む50前後のコンサートやリサイタルが行われる。この音楽祭は新作オペラの上演に力を入れており、2024年にはドストエフスキーの初期作品「ドッペルゲンガー」をベースに、イタリアの新進気鋭の作曲家ルチア・ロンチェッティ(Lucia Ronchetti)が創作した「Der Doppelgänger」が世界初演される予定だ。

筆者がこの音楽祭を訪れたときはアントニオ・サリエリが1799年に作曲したオペラ「ファルスタッフ、または3つのいたずら(Falstaff ossia Le tre burle)」上演の初日であった。全部で450席しかない小さなロココ劇場で観るバロックオペラは素晴らしく、観客もスタンディングオベーションで応えていた。いまでも忘れられないのが、上演が終わって幕が下りたとたんに、幕の向こうから出演者たちの歓声が聞こええきたことで彼らも初演の成功を喜んでいたことが伝わってきた。幸い、この時の上演は映像で残されており、DVDでも鑑賞することができる。

<ロココ劇場>


<公式サイト>
https://www.swr.de/swrkultur/musik-klassik/schwetzinger-festspiele/index.html (ドイツ語) 

<アクセス>
・フランクフルトからシュヴェツィンゲンまで鉄道で約1時間。