おととい、チップの旅立ちに立ち会った。
チップがいつも散歩していた道をゆっくりと車でたどり、海辺の道から斎場に向かった。
自宅から車で約30分の距離。町はずれの集落の一角に斎場はある。
自宅を出る時、斎場の看板が見えた時。
その時が近いという何とも言えない心持ちになる。逃げ出したい感情を振り切ってひたすら車を前に進める。
車中、ママと長女は、チップを抱っこして思い出話をしながらジリジリとした感傷を和らげていたようだ。
斎場といっても、古くて小さな外観でペット専用のお寺。
担当の方からこれからの段取りなどの説明を受けて、チップのなきがらを棺に納める。
チップ愛用の人形やクッション、日頃食べていたちゅーるなどの食事とイチゴケーキ、大好きだった顔ローラーも旅立ちのお供だ。
娘のおさがりの顔ローラーで全身マッサージをしてあげると、そのまま寝てしまうほどに気持ちよさそうにしていたお気に入りのアイテムだ。
家族それぞれが思いを込めて自分たちが愛用した品物をチップの旅のお供にした。
あらかじめ選んでおいたガーベラやカーネーションなど色とりどりの花を添えてから、最後の別れの時間となった。
時間を忘れてチップへの感謝を伝えて別れを惜しんだ。
ほかの真新しい施設なら急かされることもあるのだろうが、午前中最後ということあったのだろう、施設側からは「お時間です」という言葉を一度も聞かされることはなかった。
おかげで、納得のいくまで別れの時を過ごすことができたように思う。
チップの棺のふたが閉じられて、あの子が部屋を出ていく時は無性に涙が出て止まらなかった。
「チップ、バイバイ」
パパが出勤する時にチップにかけていた言葉だ。
「パパは帰って来るよ」「今日一日、元気でいい子で過ごしていてね」
そんな思いを込めたチップへの最愛の言葉だった。
部屋の扉が閉まる時も、思わず「チップ、バイバイ」の言葉がでてしまった。