チップのお見送りをしてお骨拾いまでの時間、同じ場所で鬱々としたまま過ごす気分になれず、斎場の外に出て過ごすことにした。
時刻はちょうどお昼を過ぎたあたり。
今朝、自宅を出発した頃には、雨上がりとはいえどんよりとした雲が空を覆っていたのだが、チップの旅立ちに合わせるかのように綺麗に晴れ上がった。
とりあえず家族で過ごせる場所を探そう。
車で5分ほどのところにこじゃれたカフェなどもあったのだが、それほどの食欲もなく車中でサンドイッチなどを軽くつまむことにした。
コンビニで買い物をして海に向かい、とある海水浴場の駐車場に車を停めてみた。
目の前に広がる日本海の波は穏やかだ。晴天の視界の先には佐渡島がくっきりと見える。
今頃、チップの魂はあの青い空を一生懸命駆け上っているのだろうななどと思いながらしばしの時を過ごした。
斎場へ戻りお骨拾いをした。
チップが私たち家族に残したただひとつのカタチあるものをわずかの欠片も残すまいと丁寧に時間をかけて拾い上げた。