「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(Hidden Christian Sites in the Nagasaki Region)」が世界文化遺産に登録される見込みとなった。
世界遺産(World Heritage Site)は「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき世界遺産リストに登録された物件のことで、国際連合教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)の諮問機関が登録を勧告し政府間委員会である世界遺産委員会の審議を経て決定される。ちなみに、文化遺産については国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) が、自然遺産については国際自然保護連合 (IUCN) が諮問機関となっている。
今話題の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」はICOMOSから登録へ向けた勧告が出されたばかりといったところでまだ正式決定となったわけではない。だが、ほとんどの場合、世界遺産委員会でこの勧告が覆ることはないらしい。今年6月下旬から開催される世界遺産委員会での正式決定が待たれる。
では、ICOMOSなりIUCNがどのようにして世界遺産登録の可否を勧告するのだろうか。
まず、世界遺産条約締約国各国の政府機関がユネスコ世界遺産センターに暫定リストを提出する。だが、この暫定リストは、言ってみれば各国が向こう十年程度のうちに推薦する意向のあるもののリストに過ぎず、この中から各国が実際に推薦した物件に対して現地調査を踏まえて登録の可否を審査する。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、2016年の登録を目指し「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として日本政府が推薦していたが、ICOMOSから禁教期に焦点を当てるべきとの推薦内容の不備を指摘され、政府は推薦を取り下げた上で構成資産の再検討を行った。
併せて長崎県が諮問機関であるICOMOSとのアドバイザー契約を締結して再チャレンジしたことは実に興味深い。ICOMOSの専門家の知見により推薦書の完成度を高めた努力には、単に学術的のみならず当事者の熱意さえ感じることができる。
世界遺産となるためには、「顕著な普遍的価値」(Outstanding Universal Value, 略号は OUV)を有している必要がある。世界中の誰しもが価値を認めた上で当事国の世界遺産保護へ向けた取り組みも厳しく問われているようである。なぜなら、普遍的価値は維持されなければならないからである。実際に、保護計画の不備を理由に世界遺産リストから抹消された物件もあるそうだ。
わが国では世界遺産に観光資源としての価値を期待する向きもあるが、そうした動きは二次的なものであるべきことを忘れてはならない。あくまでも世界遺産を対象とした観光とは、世界遺産の普遍的価値の恩恵に立脚したものであるからだ。
すでに暫定リストに記載され推薦を待っている物件の中にも、「顕著な普遍的価値」の説明よりも地元では地域振興や観光の起爆剤としての位置づけ程度しかなされていないものが見受けられる。「顕著な普遍的価値」は動機不純なこじつけの中で見出せるものではないことは素人目にも理解できるとはパパの知ったかぶりか。
(参考)Wikipedia、読売新聞5/5版、
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンターHP