- 現役力 (PHP新書)/工藤 公康
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★★★★☆
現役力/工藤公康
PHP新書 191P
現役最多の222勝を挙げている工藤公康の著書。
現在45歳現役最年長の工藤がいかにしてここまで辿りついたのか。
”アメリカのマイナーリーグの環境を目の当たりにして、とてつもない衝撃を受けました。
向こうの選手は、文字とおり食うか食われるかの環境で野球に取り組んでいる。
それに対して日本では、まだプロではなんの実績も残していない高卒新人でさえ、まるでお客様として迎えるかのように過分な契約をしてもらい、どうぞ野球に集中して下さいとばかりに、いたれりつくせりの環境でプレーが出来る。
寮に戻れば申し分のない食事が出てきますし、寝るとこだって文句ない。
アメリカのマイナーの選手は、そんな贅沢な環境ではプレーしていないんです。
だからなんとしても頂点の位置するメジャーリーガーに這い上がり、お金を稼いで豊かな暮らしをしたいと、必死に自分を磨き、監督にアピールするんですね。日本の新人選手達とはまるでモチベーションが違うんです。
その違いは野生動物と家畜の違いと同じようなものです。自力で食料を獲らなければ生きていけない野生動物と黙っていてもエサを与えられる家畜。目の鋭さが恐ろしく違う。
「あぁ、こんな厳しい世界じゃ、とても俺には無理だろうな」そう思いながらも、「でもこんな世界だからこそ、選手がみんな夢を持って必死にやっている。それにくらべると、日本のプロ野球でへこたれている自分はまだまだ本当のプロじゃない。ギリギリの気持ちで取り組まないかぎり、プロにはなれないんだ」と悟ったのです。
それから、「自分には何が足りないか」「自分は何をしていないのか」を考えるようになりました。日本のプロ野球界ははっきり言って甘やかされた世界。だから自分で自分を厳しい精神状態に追い込もう…。
アメリカ留学をきっかけに、ぼくは野生の目を取り戻すことが出来ました。目に力を失ったら、プロスポーツ選手は終わり。いや、人間としてプロ失格なんです。”
(P14~15)
”「プロの自覚」をもっと問われるのは、ケガをした時です。例えば、肉離れをしたら、普通は完治するまで一ヶ月はかかります。でも当時のライオンズの選手は、肉離れくらいではだれも休もうとはしなかった。
名二塁手と言われた辻発彦さんが、肉離れをしたとき、トレーナーにこういっているのを聞いたことがあるんです。「なんとかしてくれ」。監督もコーチも「肉離れなのか。相当ひどいようだな。明日は無理だろ。」と心配していると、辻さんはトレーナーに「なんとかしてくれ。明日のゲームは代打でいいから、その次のゲームからスタメンでられるようにしてくれ」と叫ぶ。
するとトレーナーはうなずいて、「その代わり肉離れした時より痛いぞ」と、辻さんの口にタオルを詰め込んで、故障した箇所をゴシゴシとオイルでしごくんです。あたりにはそれはもうイヤな叫び声がこだましていました。そこまでやってアイシングをして、テーピングでぐるぐる巻きにして自宅に帰るんです。
翌日はナイトゲームなのに午前11時位にはもう球場にやってきて、また同じ処置をされる。涙をためながら、ヒーヒーいいながらやられているんです。そしてまたテーピングでぐるぐる巻きにして試合に強行出場する。
それは痛いってもんじゃないんです。それでも、ライオンズの選手はみんなそうでした。「今日は絶対に負けられない試合なんだ。俺が出なきゃいけないんだ」と叫ぶんですよ。
「なんとかしてくれ」と懇願されるトレーナーも、ある意味かわいそうですですよね。でも断ることなく、「わかった、なんとかしてやる」とトレーナーも言うんですから、驚きです。決してコーチや監督が「なんとかしろ」と言っているわけではない。選手みずからが言うんです。
だから捻挫したくらいでは、休む選手なんてまずいなかった。先輩達が腫れている足をテーピングしてでも試合に出ようとするのですから、それを観ている若い選手達も「ここが痛い、あそこが痛い」と休みを申し出ることは、よほどのことがないかぎりありませんでした。無理にやらされているわけではなく、自分の決断でそうしていたんです。
そこには、ここで休んだら自分のポジションが奪われてしまうという恐れや不安もなかったわけではないでしょうが、それ以上ににプロとして当然の決断でした。”
(P29~31)
巨人の星の様な根性論と思うかもしれないが、社会人として仕事のプロになるために必要な姿勢、思想が根本にあると思う。
特に前半部分にもあったようにギラギラした野生動物の目を常に持っていたい。
常に一流でありたい。







