「今日は寒いなあ」

「そんな薄着で来るからですよ」

「いや、上着は用意してたんだけど、家を出る時には忘れてて、、、、最近、物忘れが激しくてさ」

「そうでしょうね」

「・・・周りから見てても、分かるもんか?」

「だって、カツラも着け忘れてきてますよ」

髪の毛の一本も生えていない老人が遣って来て、断りも無く、理容椅子に座り込んだ。


 禿翁「適当に短くしてくれ」


床屋の主人は、一瞬、ふざけているのかとも思ったのだが、そういう感じでも無かった。

これは、痴呆を患っていらっしゃるのだろう、そう、直ぐに切り替えて、柔軟に受け容れる事にした。


 床屋の主人「畏まりました」


すると、禿翁は安心したかのように、眠りについてしまう。

床屋の主人は嘆息を吐きつつも、好い頃合いに起して差し上げよう、との配慮に至った。



40分後、、、、床屋の主人は、禿翁の肩を優しく揺すって、小さく呼び掛ける。


 床屋の主人「御客様、終りました」


禿翁は目を覚ますと、猶も眠たそうに、瞼を擦り、欠伸をしながら、正面に在る鏡を見遣った。


 禿翁「・・・何だ、これは、、、、全然、手が付けられてないじゃないのか? おい、こんなんで、金を取るつもりか?」


床屋の主人は、こうなる事も予想できていたのか、落ち着き払って、対応する。


 床屋の主人「すみません。確かに、御髪には手を付けられませんでしたので、、、、料金の方は結構で御座います」


禿翁は眉を顰めて、言い返した。


 禿翁「当たり前だ、こんな禿髪に、床屋が手を付けられるか。私は、この、ふさふさの眉毛と、ぼうぼうの耳毛を処理してくれ、と頼んだんだ!」

スーパーにて
 
 
 店員「お釣りになります。お確かめ下さい」


促された通り、確かめる僕。
(ん? 50円、少ないぞ、、、、どうしよう)
 
 店員「有り難う御座いました」
(言った方が良いよな。でも、高が50円、、、、セコイと思われるのも・・・。ああ、そうしている内に、次のレジが始まっちゃってるし、、、、駄目だ、ここには割り込めない・・・)
とぼとぼ、出口へと向かう途中、レシートを見てみると、示されてある計算内容に間違いが無く、思わず、足を止める僕。
(この歯ブラシ、248円になってるけど、陳列の所の表示では、198円だった筈、、、、それが間違っていた? だとしたら、文句も言えるよな。うん。でも、レジ係の人に言うのは筋違いで、申し訳ないような気も・・・。かといって、誰に? 大体、一旦は清算したものを、クレーム入れて、それを納得させて、改めて清算、、、、50円ぽっちの為に、、、、めんどくせ。止めとこ)
それでも、ムシャクシャしながら、店外に出ると、石ころを蹴飛ばした、、、、いところを、グッと我慢して、家路についた。一日中、イライラして、無駄な時間を過ごしているような、鬱積した気分で、ずっと遣り切れない感じだった。
(ちゃんと主張できない自分の情けなさを思い知る羽目に、、、、凹むなあ・・・。)


次の日、、、、
(他のスーパーで、298円で売ってた、、、、また、その別のスーパーでは、312円だった・・・。得してるんだろうけど、、、、何か、そういう事よりも、、、、強気に出なくてよかったあ・・・。)