思春期の年頃の男子が一人、ある悩み抱えていた。

「俺、おかしいのかも・・・。だって、一日中、女の子の裸とか、イヤラシイ事で、頭が一杯なんだよ」

悩みの相談に乗った友人が深刻そうな面持ちで、答える。

「確かに、それは変だよ。幼児期の体験から来るような、心の病気かも知れない、、、、一度、診て貰った方が良いよ」

男子は友人の忠告に従い、とある精神科医の元を訪ねた。

「先生、やっぱり、おかしいんでしょうか?」

精神科医は神妙な顔付きで、診断を下した。

「うん、問題が有るね。今度は、その友人の方を連れて来なさい」



ちち-おや【父親】 
   プライドが高く、体裁を気にする。



昔、母親なんかと言い争いをしていると、その内、奥の方から、「何事か」という風情で、微かに険しい表情の父親が登場し、睨め付けるが如く、状況を見回すのだ。でも、何も言わない。

僕と母親は、基本、その存在を無視する。口論を続ける事も有れば、一時中断して、父親が引っ込むのを待ったり、、、、諍いの盛り上がり具合にも拠るのだ。

但し、実際、こんな事で、相手も退きはしない。のこのこ出て来ておいて、何らの影響も及ぼせないのでは、体裁が悪い、、、、というところだろう。

そんな時の一言が・・・これだ!


「何度も、同じ話を繰り返してんじゃない」


それでも、決着しないんだから、これ以上、論戦を繰り広げても無駄な事だ。話は聞いていたし、両者の言い分、各々、全て、分かっているが、自分が介入してみたところで、何の解決策も見出せない。だから、喧嘩は止めろ、、、、という道理に繋げたいらしい。

僕が、父親から学んだ事は、(行き詰まった)物事を何の様に諦めるか、、、、だ。そして、母親から学んだ事は、(邪魔臭い)相手を何の様に切り捨てるか、、、、だ。


「同じ話を何度も聞いときながら、今更、呑気に現れて、如何にも“自分だけが分かっている”ような、振った戒めなんか言って来ないでよ! 鬱陶しい!」


あ、母親の(父親への)切り返し(の文句)ね・・・。



かなり前から、彼の背中には、奇妙なしこりの存在が見受けられた。

痛みが有る訳でも無く、彼自身、特に心配しておらず、日々を過ごしていた。

大きな病気を患う事も無かったので、専門家の誰が診断するでも無いまま、これが如何いうものかを知らず、現在までを生活してきたのだが、最近、しこりの隆起が大きくなり、服の上から見ても判る程、急激な成長(こう言って、好いのなら)を遂げていた。

他人からも指摘されるようになり、さすがに懸念した彼は、久々、背中の状態を鏡に映して、確認してみた。


「・・・何だ、これ・・・?」


彼が驚愕するのも、無理は無かった、、、、背中には、丸で赤ん坊のような大きさで、いや、形状自体も、その姿でしかなく、皮膚にくっ付いているのだが、目も、鼻も、口も、薄らと成していて、手も、足も、性器も、微かに象られた感じの、全体としては、不気味な物体が浮き上がっていたのだ。

「すいません、、、、未だ完全体じゃないので・・・」その、不気味な物体が言った。

「・・・喋った・・・?」彼は混乱して、その場にしゃがみ込んでしまう。

「如何やら、私は、寄生する生き物のようです」不気味な物体は言った。

「・・・何時から・・・?」彼は、相手を鏡に映そうとする、少し苦しい体勢を保ちながら、訊き返した。

「正確には判りませんが、、、、私が意識を持ち始めてから、凡そ八年くらいですけど・・・」不気味な物体は不気味に蠢きながら、答えた。

「今迄、何で、、、、何で、、、、」彼の混乱は続いている。

「言葉は、今迄、使えなかったんです。此処からでは、情報も少なく、又、暫くは、聴覚も発達し切っていなかったので・・・」不気味な物体は優しく察して、彼の疑問に答えた。「最近ですね、言葉を理解できるようになったのは・・・」

「如何すれば・・・?」気の狂いそうな状況ながら、彼は彼なりに、前向きな対処を探し始めていた。

「私は、あなたの身体に、深く侵食している状態です。無理に引き剥がそうとすれば、あなたの内臓器官の殆どが破壊されて、お互い、生命の危険が有る事を認識しておいて下さい」不気味な物体は、冷静に言い放った。

「じゃあ、ずっと、このまま・・・? 最悪だよ・・・」有らん限りの溜息を吐いて、彼は嘆いた。

「もう少し、時が経てば、私は自立できるはずですが・・・?」不気味な物体は、淡々と言い切った。

「マジ? 良かったあ・・・。じゃあ、どれくらいで?」最悪な事態は避けられたと思い、彼は安堵しながらも、未だ残る不安要素を向けて、出来れば、それも取り除きたい、そう期待しつつ、尚も効いた。

「二十年ぐらい、ですかね」

相手の返答に、彼は失望した。・・・長過ぎる・・・!

「それ、短縮できたりしないのかな、、、せめて、十年ぐらいには・・・?」

不気味な物体は、如何にも意外そうに答える。「今から十年じゃ、、、、難しいです。とても食べ切れませんよ」