かなり前から、彼の背中には、奇妙なしこりの存在が見受けられた。

痛みが有る訳でも無く、彼自身、特に心配しておらず、日々を過ごしていた。

大きな病気を患う事も無かったので、専門家の誰が診断するでも無いまま、これが如何いうものかを知らず、現在までを生活してきたのだが、最近、しこりの隆起が大きくなり、服の上から見ても判る程、急激な成長(こう言って、好いのなら)を遂げていた。

他人からも指摘されるようになり、さすがに懸念した彼は、久々、背中の状態を鏡に映して、確認してみた。


「・・・何だ、これ・・・?」


彼が驚愕するのも、無理は無かった、、、、背中には、丸で赤ん坊のような大きさで、いや、形状自体も、その姿でしかなく、皮膚にくっ付いているのだが、目も、鼻も、口も、薄らと成していて、手も、足も、性器も、微かに象られた感じの、全体としては、不気味な物体が浮き上がっていたのだ。

「すいません、、、、未だ完全体じゃないので・・・」その、不気味な物体が言った。

「・・・喋った・・・?」彼は混乱して、その場にしゃがみ込んでしまう。

「如何やら、私は、寄生する生き物のようです」不気味な物体は言った。

「・・・何時から・・・?」彼は、相手を鏡に映そうとする、少し苦しい体勢を保ちながら、訊き返した。

「正確には判りませんが、、、、私が意識を持ち始めてから、凡そ八年くらいですけど・・・」不気味な物体は不気味に蠢きながら、答えた。

「今迄、何で、、、、何で、、、、」彼の混乱は続いている。

「言葉は、今迄、使えなかったんです。此処からでは、情報も少なく、又、暫くは、聴覚も発達し切っていなかったので・・・」不気味な物体は優しく察して、彼の疑問に答えた。「最近ですね、言葉を理解できるようになったのは・・・」

「如何すれば・・・?」気の狂いそうな状況ながら、彼は彼なりに、前向きな対処を探し始めていた。

「私は、あなたの身体に、深く侵食している状態です。無理に引き剥がそうとすれば、あなたの内臓器官の殆どが破壊されて、お互い、生命の危険が有る事を認識しておいて下さい」不気味な物体は、冷静に言い放った。

「じゃあ、ずっと、このまま・・・? 最悪だよ・・・」有らん限りの溜息を吐いて、彼は嘆いた。

「もう少し、時が経てば、私は自立できるはずですが・・・?」不気味な物体は、淡々と言い切った。

「マジ? 良かったあ・・・。じゃあ、どれくらいで?」最悪な事態は避けられたと思い、彼は安堵しながらも、未だ残る不安要素を向けて、出来れば、それも取り除きたい、そう期待しつつ、尚も効いた。

「二十年ぐらい、ですかね」

相手の返答に、彼は失望した。・・・長過ぎる・・・!

「それ、短縮できたりしないのかな、、、せめて、十年ぐらいには・・・?」

不気味な物体は、如何にも意外そうに答える。「今から十年じゃ、、、、難しいです。とても食べ切れませんよ」